元関脇 竹乃節によるACECOMBAT04論 その7
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04の方法論 〜シナリオからの吸引力〜
シナリオ側からのアプローチとしては、あくまで架空の大陸であるユージアを2や3から踏襲し、その上で生々しさを感じるようなリアルな設定を盛り込むことで、グラフィックのリアルさとフライトシューティングとしてのカジュアルさの橋渡しとしている。
2015-12-19 15:54:35一方で、今回初めて盛り込まれたサイドストーリーの側からも、ドッグファイトをしたくなるような仕掛けがなされている。サイドストーリーの主人公・黄色の13は、現代戦の価値観からみれば時代錯誤とも思えるような、WWII時のエースのような精神性を持つエースパイロットである。
2015-12-19 14:35:26引き連れた列機をすべて連れ帰ることを誇りとしながらも、その一方、いつの日か現れるかもしれない対等の敵機と技の限りを尽くすことを望んでいるような男である。そしてついに、彼とメビウス1との最後の戦いでは、その望みが実現する(したのかもしれない)ことになる。
2015-12-19 14:35:32そのような物語の展開によってプレイヤーが黄色の13に共感を覚えるなら、彼の望みのまま、最高の敵機として自身の技の限りを尽くしたいと思うように、シナリオが仕組まれている。「13との最後の戦いでは、たとえ使えたとしてもQAAMは封印する」という人を何人も知っている。
2015-12-19 14:35:41黄色中隊の派手さについて
ゲーム性のみならず、物語性側からのアプローチも相まって、プレイヤーですら「ドッグファイトで決着をつけたい」と思うよう、04は誘導している。 ただし、「黄色の13に感情移入できたか」の成否によっては、このアプローチは有効には作用しないであろう。
2015-12-19 14:35:48このことから、黄色中隊の乗機のSu-37がある程度派手であることは説明がつくであろう。劇中で行われているプリミティブなスタイルに近いドッグファイト、さらには精神性と、あのやや派手なカラーリングはベクトルを揃えて表現されている。
2015-12-19 14:36:02ネームド機の派手さと、ゲーム側での調整について
ただし、黄色中隊とは別に、04の敵機にはまるで2を踏襲したような派手な敵機が登場している。1ステージにかならず1機いるネームドである。 ネームドのすべてがド派手なわけではないが、少なくともそのまま出てきたら04の世界観を破壊しかねない派手なヤツらも確かにいる。
2015-12-19 14:36:08じゃあそのネームドとは何なのかと言うと、シューティングゲーム的な要素で持ち込まれた、純然たる娯楽のためのボーナスターゲットである。 ドッグファイトをより面白くするために、彼らは存在する。
2015-12-19 14:36:14その世界観を破壊しかねないネームドを上手く処理するために04が取った手法は、シナリオからの切り離しとゾーニングである。交戦してもしなくてもシナリオの展開にまったく影響を及ぼさないことで、彼らと戦わなくても済むように造られている。
2015-12-19 14:36:21またマップの配置においても、ほとんどのネームド機は「普通に遊んだらそこは飛ばないだろう」という場所に配置され、また近づかない限りマーカーも出現しないことで、プレイヤーに「ネームドと出会わない、存在を気にしない権利」を担保している。
2015-12-19 14:36:28ただしこのことにおいても(わたくしが知っている限り)3カ所の例外が存在している。戦闘エリアの近隣に出現するA-10A CIFFREOとF-16 TEMPEL、補給に戻るとマーカーが出現するF/A-18C VAISALAである。
2015-12-19 14:36:35ただし、CIFFREOはネームドでありながら比較的地味であること、VAISALAはドッグファイトオンリーな上にBGMがロックと、ステージ単位でトーンを統一することで、極力違和感を生まないよう調整がなされている。その点普通に交戦しうる上、機体色も派手なTEMPELはちょっと危うい。
2015-12-19 14:37:185のビジュアルコンセプトと物語性の乖離
一方で5の乗機に関しては、物語の流れと機体カラーの変遷はきちんと整合している。通常の軍隊であったウォードッグ時代に対し、歴史に残らない部分で敵の陰謀を砕こうとするラーズグリーズが、夜に紛れる黒を纏っているというのは正しい。そしてラーズグリーズの物語は朝日を迎えて終わりを告げる。
2015-12-19 14:37:36ただし、5のビジュアルコンセプトに関しては疑問点が2つ残る。ネームドが04と違い、頻繁に戦闘エリアに乗り込んでくる点と、根本的な話にはなってしまうが「そもそもリアルなグラフィックの戦闘機を用いるべき物語性だったのか?」という部分である。
2015-12-19 14:37:46かつて取り上げた考察のように、パイロットの質でみた時、「ZEROは黄金の時代、04は銀の時代、5は銅の時代」だと思っている(あくまで個人的にそう思っているだけ)。対シンファクシ戦でも、兵器の進歩にパイロットがついていけないさまをチョッパーが語っている。
2015-12-19 14:37:53そんな5の時代において、目につく頻度で割と派手な機体がポンポン出てくるというのは、個人的には世界観に反したものではないかと思っている。 ましてやハミルトンネルで出てくる「Su-37 YELLOW」は、ファンサービス以上の効果を全く発揮してないばかりか、世界観すら破壊しかねない。
2015-12-19 14:38:15ただし、5のネームドはミサイルの回避にマニューバではなく、フレアを使う時がある。この辺は「個人の才覚ではなく、兵器のシステムによって勝敗が左右される」5らしさを上手く表現したものではないかなとも思う。開発者が5の段階で初めて思いついたんだろとかいうメタは話は置いといて。
2015-12-19 14:38:35そして5の挙動が04よりも軽くなっているのは、パイロットの肉体的限界が上がっていることを現すのではなく、あの物語が抽象的な概念を擬人化した人々が織りなす、言うなれば「おとぎ話」であるが故の「デフォルメ」の一種ではないかと思う。
2015-12-19 14:38:42ただし、「おとぎ話」のような思想を持っているにもかかわらず、リアル指向なグラフィック、劇画調を目指した人物のグラフィックというのがどうにもミスマッチなように感じられる。それはひとえにエスコンが「リアルな戦闘機で飛ぶゲーム」であるという命題ゆえの不整合なのであろう。
2015-12-19 14:38:48この観点から考えると、カラーリングでデフォルメがなされたネームド機は、その色や出現タイミングにメッセージ性を持たせたほうが良いように感じる。しかし、5のネームド機にはそのようなメッセージ性は(あまり)なかった。
2015-12-19 14:38:56強いて言うなら、クルイーク要塞戦後にナガセが言った「今日現れた、一緒に飛べたらと思う敵パイロット」というのがネームドなのかもしれないが、なぜ名前に「サイファー」という名前をZEROのプレイヤーキャラクターに付けちゃった(ただしスペル違い)のかはちょっと疑問が残る。
2015-12-19 14:39:04