2015年12月19日

軍隊の練度の話、またロシア軍によるナポレオン軍の模倣

ロシア軍がナポレオン軍をうまく模倣していたというのは驚き
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Bunzo @Kominebunzo

軍隊の行動や成果を「錬度」といった曖昧な言葉で説明すると間違い易い。ナポレオン軍は諸国の軍隊より錬度が高かったと主張する研究は少ない。むしろ他国の傭兵に比べ素人に近いとの評価が有力だ。世界最大の徴集兵集団がそうした傾向を持つのは当然で、その逆は考え難いだろう。

2015-12-17 12:11:30
Bunzo @Kominebunzo

錬度という曖昧な言葉に数値が絡むものとして、密集横隊で一斉射撃をする際に、傭兵隊なら何メートルまで引き付けてから撃てるが徴集兵なら何メートルまでしか我慢出来ないといった当時の評価がある。徴兵制の軍隊はこのように「弱い」のだ。しかも敵前での陣形変換などは射撃よりも難題だ。

2015-12-17 12:18:38
Bunzo @Kominebunzo

仏革命軍には多数の徴集兵が混入しているから錬度が低いのかといえば、違う。革命前から生き残った部隊には徴集兵は補充されなかった。これら部隊は敵前で陣形変換できる「錬度の高い」部隊として大切にされ、散兵として前衛に出ることなど無かった。

2015-12-17 13:23:44
Bunzo @Kominebunzo

仏革命で最も打撃を受けたのは騎兵。だから仏軍騎兵はその勇猛果敢さを称えられても技量を褒められることは無い。騎兵の良し悪しなど本当は解らなかっただろうクラウゼビッツも同じように言うほど、当たり前の話だった。そして騎兵に限らず大なり小なり仏軍はそんなものだった。

2015-12-17 13:28:51
Bunzo @Kominebunzo

欧州でいちばん無教養で野蛮な国はロシアだとして多分、文句は来ない。ところがフランスと対極にあるロシアの軍隊こそがナポレオン軍コピーとして最も出来が良かった。ナポレオンは冬将軍に負けたのではなくロシア軍というもうひとつのナポレオン軍に負けた。自分には勝ち難いという人生の教訓だなあ。

2015-12-18 08:10:23
Bunzo @Kominebunzo

ロシア軍にナポレオン軍模倣の動きが出て来るのは1805年あたりから。散々やられた相手から学ぶという当たり前の営みの中で戦術改革が行われる。ナポレオンから距離的にちょっと遠かったのが良かったのかもしれない。かなり冷静に戦術的な本質を見抜いている。

2015-12-18 08:16:48
Bunzo @Kominebunzo

ロシア軍がナポレオンを模倣したポイントは二つある。一つは歩兵本隊の隊列を簡素化したこと。敵前マスゲームで陣形変換する本隊は密集横隊一斉射撃の火力から見れば重厚な方が良いけれども列数が増えれば動きも悪くなり、訓練で教え込むのも大変になる。仏軍は素人、露軍は農奴。どちらも覚えが悪い。

2015-12-18 08:19:53
Bunzo @Kominebunzo

ロシア軍が仏軍を真似た点、二つ目は散兵の利用。本隊隊列が薄い分だけ散兵を厚くした。そして本隊にも散兵の訓練を施すようになる。散兵戦術の特徴である下級指揮官への権限移譲も始まる。これで散兵の地位は向上したかと思えば、散兵の供給源はシベリア住民にあり、それで十分に用が足りた。

2015-12-18 08:24:08
Bunzo @Kominebunzo

ナポレオン軍の戦場での機動力は歩兵本隊の編制が軽いからで、機動の自由の確保は分厚い散兵の働きによる、といった正確な分析ができていたロシア軍は当時、欧州最強の軍隊だったといえる。ナポレオン軍は幾多の戦いで消耗変質したから負けたのでもなく、強いロシア軍と戦ったから勝てなかったのだ。

2015-12-18 08:29:17
Bunzo @Kominebunzo

精強な軍隊が長い戦いの間に消耗と補充を繰り返して往時の輝きを失って行く、といったストーリーはロマンチックで素晴らしい。けれどもそれを安直に当て嵌めると本質が見えなくなる。クラウゼヴィッツが腰を抜かした「いくら消耗しても短期間に復活する大軍」である仏軍は元々そんな軍隊ではなかった。

2015-12-18 10:45:29
Bunzo @Kominebunzo

サラリーマン作家が書き上げたナポレオン戦争史として出版当時に話題になったのが「1812年の雪」。どうしてこんな題材の本がこんなタイミングで出るのか解らなかった。でもこれが入門書の役割を果たした。こんなふうに物を書きたいと憧れた。 pic.twitter.com/v2iI17c1I8

2015-12-18 19:59:56
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Bunzo @Kominebunzo

「1812年の雪」は良書だった。人を惹きこむという点で良書だったけれどもこの本が描いているモスクワ戦役はドラマチックではあるけれどもファンタジーに近い。むしろ次の世紀に戦われた独ソ戦の様相こそナポレオン戦争の実相に迫る部分があるように感じられる。

2015-12-18 20:04:54
Bunzo @Kominebunzo

1812年のロシア軍は歩兵116個連隊、散兵50個連隊、徒歩砲兵106個連隊、騎馬砲兵22個連隊からなる総兵力40万。圧倒的大兵力ではない点に注意。そしてロシア軍は各所で分厚い散兵と身軽な戦列歩兵を軸にナポレオン軍と同じ戦術で戦いを挑んで来た。これは「T-34ショック」に近い。

2015-12-18 20:17:44
Bunzo @Kominebunzo

仏軍の攻撃はロシア軍の散兵による遅滞戦闘で矛先が鈍り、ロシア軍の反撃は散兵スクリーンに守られた本隊によって行われた。反撃が失敗してもロシア軍は撤退援護に散兵スクリーンを張るので追撃で包囲撃滅できない。こんな戦闘が繰返されることになる。これはどう見ても仏軍が苦しい。

2015-12-18 20:20:10
Bunzo @Kominebunzo

仏軍と同じ戦術をとるロシア軍はたとえ後退しても仏軍に捕捉されない。おまけに砲兵戦術まで互角だったので損害は両軍ともに大きなものとなる。けれど仏軍はまったく同じ戦術をとるロシア軍を追撃包囲する余力が無い。現実の世界では「戦争と平和」とはちょっと違った戦争が戦われていた。

2015-12-18 20:22:55
Bunzo @Kominebunzo

こんな調子でナポレオン戦争について紹介するならできるだけビジュアルに訴える資料をつけたいものだ。ところがコレクターとして大したことの無い私にはその持ち合わせが無い。ナポレオン戦争時の写真1枚すら持っていないのである。写真1枚すら持ってないとは、嗚呼、何と情けないことだろう。

2015-12-19 05:55:12
Bunzo @Kominebunzo

ナポレオン戦争時のロシア軍はカイヨワ戦争論的な戦争観の足もとを揺さぶるものがある。近代の申し子のように扱われる仏革命軍と同じような戦術をとる軍隊が殆ど社会的、政治的変革を伴わずに出現しているからだ。近代歩兵戦術は社会の変化とは無関係だと言われて怒る人々もめっきり少なくなった。

2015-12-19 10:18:43

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