紅鎮守府日記(2016年1月5日~2016年5月28日)

紅鎮守府日記のまとめです。
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戦争さん @RAKUNYA

「それを躱した上で、“自ら投げられた”……いや、そう見えるように自ら飛んだ、と言った方が正確か? 」 「そうだね」 「……尻尾を出すかと思ったんだが」 「予想外だった? 」 「……いいや、まだ予想の範囲内だ」 「修正は必要そうだけどね」 「そうだな」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 04:49:30
戦争さん @RAKUNYA

「ああ、大丈夫だ。分かっている。お前を信じているからな」 しょげた様子の夕立を慰めるように頭を撫でる提督。少しだけ気を取り直した様子の夕立を横目に、今度は響へと話題を振る。 「響、どうだ? 」 「うん、確かにあの手合わせに間違いはなかった。でも――」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 04:49:21
戦争さん @RAKUNYA

そして、夕立は続ける。 「正直“怖かった”よ。あの子、“新人っぽいフリ”までしてた」 ぶるり、と身を震わせる。心なしか、ピョコンと跳ねている髪の毛も少しだけいつもより元気がないように見える。 「夕立は、夕立の全力で“殺しにいった”っぽい……本当だよ? 」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 04:49:11
戦争さん @RAKUNYA

「正直、信じられんことだ。答え合わせがしたい。……夕立」 「夕立はちゃんと提督さんの言った通りにしたっぽい」 普段と変わらない表情の二人に対し、夕立は少し拗ねたような声で返事をする。 「清霜ちゃんは“遊んであげた”けど、次の子は“本気”だったっぽい」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 04:49:00
戦争さん @RAKUNYA

「……響、見えたか? 」 さらに少し歩いた時、ふと世間話でもするように提督が口にする言葉。しかしそれは主語を伴っていない、無形なもの。 「いいや。でも、“聞こえた”」 それに対し、響もどういうわけか平然と返す。いつも通り、いつもの会話。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 04:48:07
戦争さん @RAKUNYA

~数分後~ 「由良、そろそろ退散させてもらう。邪魔したな」 「あ、いいえ。提督さんも、がんばってくださいね」 「ああ、ありがとう」 提督は敬礼する由良に対し返礼をし、響と夕立を連れて訓練場をあとにする。 ゆったりと、視察の様子で周囲を見ながら進んでいく三人。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 04:47:57
戦争さん @RAKUNYA

「あぅぁ~っ」 そして間の抜けた声を出しながら清霜と同じ軌道で宙を舞うリベッチオが見られたのは、開始の合図の数瞬後であったという。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:35:07
戦争さん @RAKUNYA

オロオロとした様子で周囲を見るリベッチオと、それに相対する夕立。 「それでは――」 レフェリー役の由良は両者を一瞥し、その手を振り下ろす。 「始めッ!!」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:34:58
戦争さん @RAKUNYA

そのまま、まだ清霜が宙を舞ってから一分も経っていないうちにリベッチオ対夕立という構図ができあがる。 しかし、先ほどのように夕立はもちろん、リベッチオも構えることはない。とはいえ、それは余裕と恐怖という対極の感情から発生するものである。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:34:45
戦争さん @RAKUNYA

「はい、それじゃあ次はリベッチオさんね。時間もないから、次が最後くらいかしら」 「……え~?」 あれこれってそういう流れなの、と言いたげに首を傾げながらも由良に背中を押され先ほどまで清霜が立っていた場所へと移動させられる。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:34:36
戦争さん @RAKUNYA

「り、りべちー……」 「なに?きよしー」 「私の……仇を、りべちーだけは……戦艦、に……ぐふっ」 「きよしー?きよしー!!!?!目を開けてよー!」 リング上で行われる茶番。それに対して、レフェリーをつとめている由良は一言。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:34:27
戦争さん @RAKUNYA

「り、りべちー……」 「こんな時くらい“オ”を付けてよきよしー!」 「私、戦艦には……なれなかったよ……」 「うん!ていうか相手は駆逐艦だよ!戦艦はもっと強いよ!」 「ぐぺぁ」 容赦のないリベッチオの突っ込みに、いよいよ清霜のヒットポイントはゼロになる。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:34:13
戦争さん @RAKUNYA

そのまま重力に引かれ、畳へと背中から叩きつけられた清霜は、肺から強制的に絞り出された酸素と、痛みの逃げ場を探して乙女にあるまじきおぞましい悲鳴と嗚咽を漏らす。 「き、きよしー!?」 ビクンビクンと震える清霜へリベッチオが駆け寄る。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:34:05
戦争さん @RAKUNYA

そして。 「ぽいっちょー!」 清霜が、宙を舞う。 「ぶっはびゃぁぁぁぁっ!?うぇっほ、えほっ、くべぇぁぁぁ……」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:33:57
戦争さん @RAKUNYA

なにより、清霜には絶対に諦められない、夢がある。 「(越えなくちゃ、ならないんだ)」 そのためには、ただの努力だけじゃ足りない。だから―― 「――始め!」 「清霜は、戦艦になるんだぁぁぁ!!!!」 拳を握り、前へ。 最高の踏み込み。詰まる距離。夕立は――動かない。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:33:48
戦争さん @RAKUNYA

力の差は歴然。勝ち目などあるはずもない。 「それでは参ります」 「う、うぅ」 しかし、それはあくまで“艦娘”としての連度。そして、純粋に数値化されただけの仮のもの。 「(怖い、怖すぎる……でも)」 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:33:38
戦争さん @RAKUNYA

畳で組まれた簡易なリングに向かいあう清霜と夕立。片や歴戦奮迅の駆逐艦。一方は最近来たばかりの夢一杯な素人。 「あ、あわわわわ……」 「ぽーにゅぽーにゅ♪」 すでに足が震えている清霜と、構える素振りもなく妙な歌まで口ずさむ余裕の夕立。 #紅鎮守府日記

2016-05-28 03:33:22
戦争さん @RAKUNYA

「時間、押しているから巻きで、ね? 」 「味方なんていながっだ!! 」 天井を仰ぎ、イヤイヤする清霜は他の訓練艦娘に引きずられ、訓練場のリングへと“設置”される。 「~♪」 鼻歌交じりに夕立も対面し、あっという間に準備は全て整ってしまう。 あとは、戦うだけである。#紅鎮守府日記

2016-04-26 02:34:30
戦争さん @RAKUNYA

「もう提督さんからぷっちんするプリン三個も貰っているから、いらないよ? 」 「しれーかんんんんんんーーーー!!!! 」 提督の足下へと崩れ落ちる清霜。 そんな彼女に対して、教官役の由良が近づき、しゃがみ込むと肩に手を置く。 「……清霜さん」 「……由良教官」 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:33:56
戦争さん @RAKUNYA

「あっ……あぁ、あの」 「……ぽい? 」 「……夜定食のおやつプリン差し上げますので、勘弁してもらえませんか? 」 「(清霜、ビビって袖の下を……! )」 そんな清霜の提案に対して夕立はニッコリと笑う。 「えへー」 「え、えへへー」 つられて清霜も笑う。 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:33:26
戦争さん @RAKUNYA

「(“艦隊決戦”なのに殴る蹴るは当たり前)」 「(接近した相手が固ければ口に魚雷をねじ込み、隙がなければ死ぬまで接射)」 「(魚雷から炸薬を取り出して相手の目を潰して、首を“砲撃で斬り落とす”なんてこともしてたあの……)」 「(死んだわ、あいつ)」 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:32:56
戦争さん @RAKUNYA

つまりは駆逐艦、いや、この艦隊において響を頂点としたトップランクの実力者ということに他ならない。 そして誰もが閲覧できるデータの中には、これまでの戦歴やそれに関する映像資料も保管されている。意図的に編集はされているものの、そこに記録されている夕立の戦いといえば。 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:32:37
戦争さん @RAKUNYA

夕立のそんな和気藹々とした言動とは裏腹に、清霜の額からはダラダラと嫌な汗が流れ始める。 「いや、だって、夕立さんって……」 彼女が恐怖の表情を浮かべるのも無理はない。この鎮守府において“夕立”そして“時雨”の艦名は、そのまま『提督の懐刀』と同義である。 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:32:20
戦争さん @RAKUNYA

「いえーい! 夕立、がんばるっぽい! 」 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:31:58
戦争さん @RAKUNYA

清霜が震える指先でゆっくりと指さす。その先は、たった今入ってきた響のその背後。 「ああ、そうだ」 そして、清霜に絡まれた提督はメガネの下の目を細め、ニヤリとした笑みを浮かべる。 「私の代わりは、たった今連れてきた……駆逐艦、夕立だ」 #紅鎮守府日記

2016-04-26 02:31:41
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