アンエクスペクテッド・ゲスト #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェイクは名残惜しそうに最後までZBR煙草を吸い、可笑しそうに笑った。「ああ。俺が何本吸ったか、覚えといてくれ」「よかろう。絶対にオキナワまで逃げられるんだろうな?」カブセは支度を始めた。「当然さ」ジェイクはこの状況下においてすら、妙に落ち着いていた。「俺はツイてるからな」 21

2016-01-08 22:25:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ツイてる奴がスガモに来るかね?」カブセ医師は薬剤をカバンに放り込みながら言った。「ツイてるからこうして命拾いしただろ。それだけじゃない、俺は何度もヤギ前後を経験してきた」ジェイクはストレッチャーに横たわった。カブセは眉をひそめた。ジェイクは続けた。「そのたびに生き残った」 22

2016-01-08 22:30:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「脱走がバレたら、今度こそただじゃすまんぞ」「俺はここにいたら死んじまうよ、ここは敵ばっかりさ。なんでか、恨みを買うことが多いんでね。それに、今夜はヤバい匂いがする」「そうか」「あんたは俺の命の恩人だから、幸運を分けてやろうと思ったんだよ。あんたもケツに火がついてるんだろ?」23

2016-01-08 22:40:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故解った」カブセはストレッチャーに手をかけた。手が汗ばむ。自分は今、危険な賭けに乗ろうとしている。「俺もそうだからさ。同類を見つけるのが上手いんだ。ラッキーな事にね」この獣姦が趣味と思われる男の言動は、しかし形容しがたい自信に満ち、ゼンめいていた。カブセはそれに乗った。 24

2016-01-08 22:53:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私も以前から興味があった」カブセが神妙な顔で言った。「だがカネもなく行動も起こせず、無為に日々を過ごしてきた。今思えば、だから看守からもバカにされ、透明な人間だと思われてきたんだ。これは何かの、おそらくブッダによる、運命的な巡り合わせだ!」「そうだ!1億を手にしようぜ!」 25

2016-01-08 23:03:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガラガラガラ!ジェイクを乗せたストレッチャーは、医務室から勢い良く廊下へ。新たな開かれた運命に向かって。それを押すのは、覚悟を決め、目を血走らせるカブセ医師だ。「カブセ=サン!」「一体どこへ!?」看守らが問う!「アドミン棟へ運ぶ!機材と薬が足りん!患者は危険な状態にある!」 26

2016-01-08 23:09:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しかし…」「囚人をアドミン棟には…」看守らは、ストレッチャー上で目を閉じたガイジン重犯罪者を一瞥し、眉をひそめた。「ふざけるな!」カブセは激昂した。「囚人でも人命だ!君たちが彼を見殺しにしろというなら、私は直ちにセプクする!医師としての私に死ねと言っているも同然だからだ!」27

2016-01-08 23:16:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「も、申し訳ありませんでした!」」看守たちは深く心を打たれた。片方は涙目になった。カブセ医師はやはり、先ほどここに現れれた時と同じ、医師としての高潔な使命に邁進しているのだと。「痛み止めの配給は君らに任せる!私が戻ってくるまで、医務室まわりの事を頼んだぞ!」「「ハイ!」」 28

2016-01-08 23:25:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATATATATTA!KA-DOOOOM!総合棟の外で不穏な爆発音が聞こえた。「何だ?」「まさか墜落機の爆発がまだ……!やはりアドミン棟に向かうのはやめ」「大丈夫だ!私は医者だ!一刻を要するのだ!」カブセ医師は看守の言葉を遮り、ストレッチャーを押し、遠ざかった。 29

2016-01-08 23:32:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やったな、貴方、前後する庶子。だが、まだ第一段階だぞ」階下へ向かうエレベーターの中、横たわったまま、ジェイクが言った。「シッ!わかっとる!」カブセは険しい医師の顔つきのまま、彼をたしなめた。マインドセットの守りを固めるために。覚悟を決めたカブセのニューロンは冴え渡っていた。30

2016-01-08 23:43:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

残された看守たちは、カブセがいかに過小評価されてきたかをしばし語り合った。そして薬剤ストックや応急キットなどを一度確認するために、医務室のドアを開けた。その時。KRAAAAASH!ナムアミダブツ!大窓が中庭側から破壊され、大型ニンジャ生物が侵入!「「アイエエエエエエエ!」」 31

2016-01-08 23:51:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……コー、シュコー……。サイバーガスマスクを通した冷酷な目が、アドミン棟の屋上から一部始終を見下ろしていた。3人のデッカーニンジャに追われたカンゼンタイが、中庭を逃げ惑い、ガラスを割って、総合棟の医務室へ飛び込むのを。それを追い、粗暴なるデッカーニンジャたちが跳躍するのを。 32

2016-01-09 00:06:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まさか、デッカーニンジャとは…」墜落輸送船の唯一の生き残り、コーゾは、苦悩をにじませた。「…育て、ヨロシ・バイオサイバネティカ社の未来よ…!」彼は手元のリモコンを操作した。BOOM!総合棟に仕掛けた小型プラスチック・バクチクが起爆。電源ユニットが損傷し、停電と混乱が訪れた。33

2016-01-09 00:15:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大きく育て……」その声は狂気じみていた。Zzzzzzt。光学迷彩コートが作動し、重金属酸性雨の中、コーゾの輪郭はぼやけ、透明になって消えた。 34

2016-01-09 00:18:06