- Elfriede7777
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「あー。これで決着かねえ」 のんびりとしたフェリックスの声が響く。 「そのようですね」 ワインを手に取りながらゴットフリードが答える。 体躯の優れた二人が重なって倒れている。起こすのは大変そうだ。 「「ジークベルト」」 長男次男が四男を呼ぶ。
2016-01-11 17:48:30「絶対くるって思ってたわよ☆」 荒事にはなるべく関わらないようにしている上2人に押し付けられて兄と妹の怪我の具合を診に行く。 「エルフリーデが脳震盪起こしてるくらい、かしらあああって重いわねぇ、オスヴァルト兄上、痩せてよお☆」 「オスヴァルトは?」
2016-01-11 17:49:30「気絶ぅ☆ま、こっちは大丈夫。そのうち目醒めるから。あ、エルフリーデあんまり動いちゃだめよ☆」 ジークベルトがオスヴァルトをげしげし蹴りつけて隙間をつくる。 その隙間からオスヴァルトに下敷きにされたエルフリーデがふらふらしながら這い出てきた。 「んもう、お転婆さん☆」 「ん」
2016-01-11 17:50:24「いいわよ、運んであげるから☆」 「ん」 「で、フェリックス兄上。如何なさいますか?」 「うんうん、まあ勝ったし好きにさせてあげればいいんじゃないかな。正式な引継ぎは顔の傷が治ってから、セリザワ領へ行くのはマサキ君に聞いて調整」 「畏まりました」 「いいね、エルフリーデ」 「ん」
2016-01-11 18:44:05使用人を呼んでオスヴァルトを医務室へ運ぶように指示をする。 運ばれていくのを見届けた上でゴットフリードが口を開いた。 「オスヴァルトは馬鹿だが、心情には共感できる」 柔らかくフェリックスが微笑む。 「聖印があってもなくてもエルフリーデはエルフリーデ。皆それはわかっているからね」
2016-01-11 18:45:07「安心して身を賭して民と愛し合っておいき」 「…はい」 「そしてね。ひとつ偉そうにお説教」 身を正して兄の目を見つめる。 その視線を受けて兄は妹を愛おしげに見つめながら語りだす。 「聖印の事。エルフリーデはもう決めたのかもしれないけどね。 ちゃんと、マサキくんに《相談》する事」
2016-01-11 18:47:17「《報告》だけじゃダメだよ。報告だけなら同僚でいいんだ」 首を傾げる妹に更に言葉を重ねる。 「全部エルフリーデ独りで決めない、事態を進めないようにしなさいって事。 一欠片も気持ちを共有出来ないんじゃ、一緒に居る意味がないだろう。 一緒にいても寂しくなっちゃうよ」
2016-01-11 18:50:04ああ、と思い出す。 何一つ分けてくれなくて、独りで行こうとした彼が目の前に居たのに、遠ざかるばかりで寂しかった。 「こう思った、だからこうしたい。 気持ちを汲んでくれないだろうかと《相談》するんだよ。 こう決めた。こうした。なら一人でいるのと変わらないからね」
2016-01-11 18:52:06「マサキ君も君の想いを無碍にはしないだろう。全部飲んでくれるかもしれない、違うかもしれない。 なんでそう思ったのかちゃんと聞くんだよ。 少し譲れるところがあれば景気よく譲りなさい。 譲らないことが君の強さの証明じゃない。 互いに妥協点を探れるのが本当の強さだと、私は思うよ」
2016-01-11 18:53:30「そうして創り上げていくのが夫婦なんじゃないかな」 君は頑固で誇り高くて。 意地は時に必要だけど。 変われる強さも持っているって知っているから。 二人でいる事の証明を。 「…はい、先生」 真面目に頷く妹に破顔する。 「うんうん、いい子。さあ、家に帰ってプリンでも食べようか」
2016-01-11 18:56:11「そおねぇ、私プリンならはちみつのがいいわぁ☆」 「ブランデーかけてくれ」 もう2人の兄が手を差し出す。 「ん」 躊躇わずに両手を伸ばしてその手を掴む。 いつもと変わらない。 手を伸ばせば必ず誰かが掴んでくれた。 それがどれだけの幸福なのか、今ならちゃんと正しく理解している。
2016-01-11 19:09:18此処は最期の砦。 何があっても必ず守り、味方してくれる。 絶対に安心できて信頼できる場所。 家族という砦。 今度は私が、自分の力で、新しい家族と作る番。 「行く」 宣言して、家へと歩みを進めた。
2016-01-11 19:10:23