@sonne_run あの時はここまで長い付き合いになるとは思っていなかった。 「あの頃からゾンネは俺にとって太陽だったんだなぁ」 死を望みながらも光のような彼女に魅せられていた。 そよ風が優しく二人の頬を撫でた。腕の重さが二人で生きているのだと実感させてくれる。
2015-12-07 09:45:15@pagetMOB 「覚えてますよう。こんにちはー緑の森精肉店でーーっす!」 兵士と判れば命はないから、平民を装って。 思えば命がけの肉配達だった。 切欠はお肉が好きだって聞こえたから、話したいなあって思った。 話したらとても優しい人だった。 →
2015-12-07 09:56:49@pagetMOB 掌が温かくて、頭を撫でてくれる感触がとても好きだった。 また会いたいなあ。そう思ってはお肉を調達して理由をつけて会いに行っていた。 「会うと嬉しくて。しばらくするとまた会いたくなって」 いつも寂しそうなのに優しくて。 話を聞いてくれた。→
2015-12-07 09:57:35@sonne_run 「鉄板を連れて来るようになったのはいつ頃からだったか。コイツの食い意地ときたら」 わかっているのかわかっていないのか。鉄板が頬を擦り寄せてくる。 「コイツと向日葵を植えて、見る約束をしたんだよなぁ」 太陽のような花。ゾンネを表す花だといつも思っている。→
2015-12-07 10:13:00@sonne_run その約束で死ねなくなっちまった。そして今ではその瞬間を恐れるのだから、人の心はわからない。 「俺は約束を果たすぞ。何度でもだ」 森を抜け、太陽の明るさに目が慣れると。また別の明るい光が広がる。向日葵の黄色とオレンジは優しく強く咲き誇っている。
2015-12-07 10:13:38@pagetMOB 「キュー(向日葵、胡桃!)」 「鉄板、気がついたら居たんですよう。私よりパッジに懐いてますから酷いものです」 笑いながら寄りかかる腕に力を込める。 でも、きっと鉄板も彼が好きだから。 うん、好きなのは好きになってしまうのは仕方ないなあと思っている。 →
2015-12-07 10:23:02@pagetMOB 「はい。約束してくれて、守ってくれてるの嬉しいです」 戦場で決して保障できない約束を強いた。 受け入れて、果たしてくれている。 その想いだけでも幸せになるには充分過ぎるほどだった。 目の前に広がる、一面の向日葵。 また、一つ約束を果そうとしてくれている。→
2015-12-07 10:23:50@pagetMOB 「えへへ。咲いてますねえ」 向日葵みたいだって貴方は言ってくれるけど。 向日葵は太陽の光がないと咲かないんですよ。 私のおひさま。
2015-12-07 10:24:57@sonne_run 太陽と風と大地と森と、そして向日葵と。全てを感じられるこの場所で。約束を叶えたこの場所で。そして彼女が森の民として婚姻の誓いを唄いあげたこの場所で。永遠を誓おうと思う。 腕を離し彼女と向き合う。 「俺は森の民ではないからな。俺が永遠を誓うのはゾンネ自身だ」→
2015-12-07 10:38:30@sonne_run そう言いながら彼女の左手をとる。 「俺、パゲットは。夫として生涯ゾンネを守り続けると誓う」 ゆっくりと手袋を外すとその薬指に指輪をはめる。彼女の手のひらを上に向けるとその中にお揃いの指輪を転がす。
2015-12-07 10:39:14@pagetMOB 「へ?あの、これ」 場違いな声を上げる。 手のひらに転がった指輪。 「ええええええ」 あたふたと手のひらと彼の顔を見る。 「誓うだけって言ってたじゃないですかああああ」
2015-12-07 10:48:04@sonne_run 「俺だって男の意地ってヤツがあるんだ。それになぁ、可愛い嫁さんに悪い虫がつかないように、虫除けが必要なんだ」 目を逸らして頬を掻く。 「誓いは言葉だけでもいいんだが、形に残したらいつだって目に見える形になる。いつだって今日のことを思い出せる」
2015-12-07 10:53:52@pagetMOB 「虫なんかつきませんよう」 はめられた薬指の指輪と手のひらの指輪を嬉しそうに目を細めて見つめる。 「嬉しい、です。指輪も嬉しいですけど、いつでも思い出したいです。だから、思い出になるの、嬉しいです」 顔を上げてにぱあっと笑う。→
2015-12-07 11:01:43@pagetMOB 「私は森の民ですけど。それでもやっぱり貴方に誓います」 見つめて少し照れくさそうに。でも視線は逸らさずに。 「啄木鳥と鶫の子にして太陽、ゾンネ。私は私の命の廻りを貴方と共に。貴方を守ることを誓います」 そっと指輪をはめる。大きくて力強い守ってくれるその指に。
2015-12-07 11:06:27@sonne_run 左手を彼女の目線の高さに上げた。今つけられたばかりの指輪がしっかりとはめられている。 「改めて、俺たちは夫婦となった。俺たち自身と鉄板、この世界が証人だ」 またわざとらしく咳をする。 「ゾンネ、愛している」 指先で彼女の顎を持ち上げるとそっと唇にくちづけた。
2015-12-07 11:16:33@pagetMOB くちづけられて、顔が離れると彼は嬉しそうに照れているかのように微笑んでいた。 今、改めて伴侶となった夫を見て、愛おしさで胸がいっぱいになる。 いつもならもう目がぐるぐるしていてもいいくらいなのだけど。 ぐるぐるしているのが勿体無いですよお。 →
2015-12-07 11:39:11@sonne_run 何度も真っ直ぐな想いを彼女は俺に与えてくれる。きっとそれはこれからも変わらない。だから俺も同じように彼女に応える。 「俺もだ。そして、これからも変わらない」 だから、約束しよう。二人だけの約束を。 「来年もその先も一緒にここで向日葵を見よう、約束な」
2015-12-07 11:49:17@pagetMOB 未来を信じて約束できるのはなんて幸せなんだろう。 血と土埃のあの戦場では今日を生きて行く事だけが精一杯で1日先も考える事が出来なかった。 でも今は誓える。約束を果たす未来を夢見る事ができる。 「はい、約束ですよお」 向日葵の様に笑って小指を立てて差し出した。
2015-12-07 12:11:49@sonne_run 「あぁ、約束だ」 彼女の小指に小指を絡ませる。 もうあの時あの場所に俺はいない。彼女もいない。あの時は生きることに希望なんてなかった。今を夢見ることさえなかった。そんな未来を、いつも照らすのは彼女の笑顔だ。 「未来に歩いて行けるのは、幸せだな」
2015-12-07 12:28:39@pagetMOB 屈託のないその顔がまぶしい。 突然かああと顔が赤くなる。 うわあああなんでなんでこのタイミングで。 小指を絡めたまま硬直する。 未来に歩いていけるのは幸せ。 うん、きっと幸せいっぱいな貴方が眩しくて見惚れちゃったんだ。仕方ない仕方ない。→
2015-12-07 15:15:48@pagetMOB 「積み重ねてきたからですよう」 いい事もそうじゃない事もひとつひとつを投げ出さないで。 「パゲット」 知ってはいたけれど、今まで照れてしまって一度も口にしたことがなかった彼の本当の名前。 →
2015-12-07 15:17:06@pagetMOB 「私と出会うまで生きててくれてありがとう」 森の風がさわさわと言祝ぎの旋律を奏でる。 「私と出会ってくれてありがとう」 そっと絡めていない手を伸ばして頬に触れる。 「《これから》をよろしくお願いします」 「愛してます。パゲット」
2015-12-07 15:19:10