向日葵の約束

パッジさんとゾンネさんの結婚式ログ。
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ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB #向日葵の約束 朝から大忙しだった。 全部1人でやるからと町のお姉さんたちに聞きに行き、準備を整えた。 自分ひとりでの準備だったら此処までできなかっただろう。 皆の優しさに感謝してとりかかる。→

2015-12-07 00:47:15
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 落ち着いて。少しだけ無理せず朝食をとる。 食べ過ぎても、抜いてもいけないらしい。 川に行って沐浴。身を清める。 下着の上に一枚上着を羽織る。 『ドレスは最後よ、化粧ついちゃうでしょ』 『ちーがーう、こっちの色よ!流行はこっちなんだから!』 →

2015-12-07 00:48:13
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB お姉さんたちが貸してくれた化粧道具を見つめてうなる。 多種多様にも程がある。 (ううううこれ戦場のほうがまだ勝てそうですよう) 柄じゃないのはわかってる。 (ちゃんと綺麗になりたいんですよううううう) と決心して取り掛かる。 →

2015-12-07 00:49:00
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB たった一人しか見ないけれど、そのたった一人にこそ綺麗だと思って欲しいから。 髪の毛もなんとか纏められた…うん、大丈夫、ちょっとこぼれてるけど、うん。 (う、最大の難所が) そして白いドレスに袖を通す。 (やっぱりこの辺の縫い目とか、刺繍とかうううう) →

2015-12-07 00:52:28
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 自分で縫ったドレス。一通り身の回りの事は出来るといってもドレスとなると勝手が違った。 しかも、着にくい。 (やっぱり窮屈ですよう) 後ろで留めるドレスだと1人で着られないから前開きにしたけれど、それでも着にくい。 (ええと、息止めて) ういしょ、と閉める。→

2015-12-07 00:53:54
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 足元にこんなにも布が絡みつく服は初めてでふわふわする。 白い靴。流石に踵の高いものにはできなかった。 最後にベールをかけて。 (ええと、大丈夫、かな?) 鏡の前で確認する。

2015-12-07 00:56:22
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 隣の部屋の喧騒とは逆にのんびり着替え始める。 庭師仲間が祝いにと買い揃えてくれた白のタキシード。足りないシャツなど小物は小遣いを切り詰めて買った。 髪はまとめる方がいいか流したままがいいか。風を感じると自然と一体になったのを感じる。このままでいいだろう。→

2015-12-07 05:35:22
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 忘れてはいけない。道具箱の中から小さな箱を取り出す。箱を開けると二つの揃いの指輪。飾りも何もない、普段使いして飽きのこないデザインのものを選んだ。その小さな二つを胸ポケットに忍ばせる。 隣の部屋も静かになった。扉をノックする。 「おい、ゾンネ。出来たか?」

2015-12-07 05:35:46
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB タイミングよく聞こえたノックと声に慌てて答える。 「はい、大丈夫ですよお」 言ってから急になにか物足りないような、確認が足りないような気がして鏡の前でそわそわする。 変じゃないよね、大丈夫だよね。 見て欲しいけど、その。 慌てる心なぞお構いなしに扉が開く。

2015-12-07 06:47:48
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 「俺の方は用意でき…」 そう言いながら部屋に入り、その姿を見た瞬間に言葉を失った。彼女の色々な姿を見て知っている。どんな格好も彼女のもつ明るさ全てを表せるわけではないと思っていた。 →

2015-12-07 07:09:20
パッジ @pagetMOB

@sonne_run だがどうだろう。一生に一度しか着ることのないだろうウェディングドレス姿のゾンネは。言葉で表すことが出来ない。 「綺麗だ」 その一言が精一杯だ。

2015-12-07 07:09:34
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 部屋に入ってきた彼が言葉を失ったのでひやりとする。 やっぱり変かな、似合わなかったかな。 何も言えずにいると見つめたままの彼から「綺麗だ」と一言。 嬉しい。 「よ、かったああ」 脱力しつつ慎ましいドレスには不似合いな、でもいつもどおりの笑顔を満開に咲かせる。

2015-12-07 07:42:25
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 「いい笑顔だ」 いつものように頭に手が伸びそうになる。戯けた顔でそれを誤魔化す。 「いつもと同じように笑顔でいてくれ。俺が嫁にしたのはその笑顔のゾンネだ」 折角の美しい花嫁にそれはないかと思いつつも、笑顔が誰よりも美しい彼女だ。→

2015-12-07 07:54:22
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 一生に一度の笑顔は心の中に残しておきたい。 コホン、わざとらしく咳をした。 「花嫁さん、腕をどうぞ」 腕を彼女に示す。

2015-12-07 07:55:30
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 示された腕にいつも通りの所作で飛びつこうとして思いとどまる。 今日ぐらいはウェディングドレスに相応しい振る舞いをしないと。せっかく綺麗って言ってもらえたんだから。 それに安心したらようやく余裕が出てきて。 「うわああ。パッジさんかっこいいいい」→

2015-12-07 08:10:33
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB まだ慣れない呼び捨てを忘れて。 にぱあっと笑って腕をからませる。 白いタキシード。普段もとっても素敵、でも。 「くうううう、素敵ですうう」 えへへ。こんなにかっこいい人独り占めですよう。

2015-12-07 08:11:27
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 「おう、ありがとな」 面と向かって言われると、照れる。顔を逸らしたくなる。が、今日はそうは言ってられない。彼女をエスコートする大事な役目がある。 「歩きにくくないか?」 俺自身は多少窮屈な思いがあるだけでそう変わらないが、彼女は大変だろう。→

2015-12-07 08:58:29
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 「ゆっくり行こうか」 森も風も。そして彼女も俺も。ここにいてどこにも逃げない。 「おっと。忘れてるヤツがいるな」 窓枠に手を伸ばす。コイツがいたからこそ今の俺たちがあるとも言える。置いていくわけにはいかないだろう。 「鉄板は俺の肩においで」

2015-12-07 08:59:14
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 「キュー(行く!一緒行く!)」 鉄板はシタタっと彼の肩に乗って満足気。 「鉄板も嬉しそうですねえ」 きゅうきゅうと喉を鳴らす鉄板。 「ええと、歩くのは…ゆっくりで」 踵は高くない靴だけど足捌きがおぼつかない。 テーブルの上に置いてあるブーケを取って。→

2015-12-07 09:11:57
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 森の花と、花屋のおじさんがくれた花。 1人で準備したけど、決して1人ではなかった。 沢山の想いの込められたブーケ。 「はい、行きましょう」

2015-12-07 09:14:13
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 「大丈夫か? 俺に体重を預けるつもりで歩け」 家の中から一歩ずつ。二人で歩き始める。 玄関の扉を開けると風に髪が揺れた。木々の葉が優しい囁きに似たおとをたてる。森の祝福だ。口には出さなかったがそう感じる。→

2015-12-07 09:21:16
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 木々の間から差し込む光も刺すような鋭さがなく、柔らかな光となってゾンネを照らしている。 「美しいな」 この大地も森も風も。そして隣に立つこれから歩む彼女も。全てが美しく、それら全てが幸せだと感じる。

2015-12-07 09:22:47
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 「は、はい」 ブーケとドレスの裾を片手に掴んで地面に付かないようにして、反対の腕は彼に体重を預ける。 一歩外に出ると風が心地よく通り抜けていく。 ヴェール越しの森は記憶にある緑より少し薄くて柔らかい。→

2015-12-07 09:34:16
ゾンネ @sonne_run

@pagetMOB 樹の音が包み込むようで、日差しが祝福してくれるようにまぶしくて。 いつもの森なのに。いつもの日常なのに。 「ええ。綺麗ですねえ」 幸せが胸に込み上げる。 「お天気で良かったですよう」

2015-12-07 09:35:48
パッジ @pagetMOB

@sonne_run 「なぁ、俺とゾンネと。戦場で出会った時のこと、覚えてるか?」 あの終わりが近づいて死の臭いと足音だらけだったあの日々。 「ゾンネはいつも条約の兵士の目を掻い潜ってこちらの陣営に来てたよなぁ」 笑いながら、肉を持って。→

2015-12-07 09:42:59