#リプが来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説を140字で書く/ガルパンおばさんまとめ

表題のタグへ頂いたお題への回答です。たまに誓約をぶっちぎっておりますがご愛嬌ということで何卒ひとつ。
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ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 10.「おいしい……」「味わって飲みなさいよね。舌、ヤケドしないでよ」二つのマグカップに暖かな牛乳と労いを注ぎいれて、「ずっと思ってたこと言ってもいいかな?」「なに」「ここに蜂蜜入れたい」「……太るわよ?」「あ、朝のジョギング量増やせば問題ないから!」

2016-02-15 02:04:58
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 11.それをとろとろとからだじゅうに溶かし込んで、「……甘ぁっ、無理ね、口に合わない」「ひどい、勝手に飲んだのエリカさんなのに……」夜毎に語らいを積み上げて、「――ごめんなさい」そしてあんまりにも呆気なく、雨音と転機に掻っ攫われて、脆く崩れて終わった。

2016-02-15 02:05:41
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 12.――蜂蜜は保存方法さえ間違わなければ腐らない食材だ。三千年前のものが未だ食べられる状態でエジプトのピラミッドから発見されたというニュースを、いつかエリカは聞いたことがある。捨てられないのはそのせいだ。こうして、正しく保存してさえいれば、いつか。

2016-02-15 02:07:23
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 13.いつか、飲み交わせる日もあるだろうと。蜂蜜をたっぷりと入れたホットミルクを好んだルームメイト――西住みほと、もう一度。その考えを未練といえばよいのか感傷といえばよいのか解らない。迷いごとぐっと飲み込んだミルクは、いつもよりなぜか少し苦かった。 了

2016-02-15 02:09:55

【朝雨と乳母日傘/冷泉麻子と武部沙織】

ひゃくまる @osiroiobake

【朝雨と乳母日傘/冷泉麻子と武部沙織】  常軌を逸した低血圧の冷泉麻子にとって、朝と同じ位――いや、それ以上に――雨は大敵だ。雨雲が連れてくる気圧の変化は並々ならぬ頭痛を伴って、自分の頭をボールに見立ててお天道様がサッカーでもやっているのかと疑いたくなる痛みが走るという理由が一。

2016-01-30 02:32:35
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 元々身体の悪い祖母の肋間神経痛が強く出て、眉を顰めて身体を摩る光景が見受けられるという理由が二。そして最大の理由はシンプルに。良い思い出がない。皆無だ。両親が冷泉麻子の前から姿を消した日も、通夜も、葬式ですら雨だった。細雪のように降りしきる雨だった。

2016-01-30 02:33:04
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake だからこそ、高校に入学した今になっても冷泉麻子の雨に対する苦手意識は変わらない。燻るような湿ったアスファルトの匂いと、軒先を機銃掃射のように叩く雨音で目が覚める朝は最悪だ。毛布を頭から引っかぶって、亀のように丸まってはじっと酷い頭痛と雨が過ぎるのを待つ。

2016-01-30 02:33:28
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake それは孤独な雨宿りだ。「登校」なんて二文字は砲撃の直撃を受けて粉砕されている。ただ、一つだけ救いがあるとするなら、「麻子、頭だいじょうぶ?」「…………他に言い方があるだろ」「え、あ、うわ、ほんとだごめん」いつもいつも、差し出される傘があることだった。

2016-01-30 02:34:05
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 朝雨に傘要らず、という言葉があるが、それは雨の日の朝にこそ、欠かさず冷泉麻子へ向けられた。 傘の名前は優しさとも、お節介とも言う。それを指し伸ばす人の名は、きっと、もう言うまでもないだろう。

2016-01-30 02:35:01
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 「……起きないぞ」布団を退けることなくそのままの姿勢でボソリと言い放つと「先手打たないでよね!? ……って、違うよ。酷いんでしょ? 薬と水、持ってきたから寝てなって」きゃんと金切り声で吠え返された。打てば響くような小気味いい返しが、こんな日は殊更染みる。

2016-01-30 02:35:14
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 「……沙織」ぶっらぼうな声が毛布の塊から響く。「なぁに、麻子」「寒い。暖がいる。もうちょっと近くに来い」にょっと布団の中から手が一本出てきたのを認めて、乳母日傘――武部沙織は少し笑ってから「ちょっとだけだからね」とそれでもしっかりその手を握り返すのだった

2016-01-30 02:35:53

【黒森峰時代の西住みほ】

ひゃくまる @osiroiobake

【お題/黒森峰時代の西住みほ】 逸見エリカは副隊長である西住みほに調律師の印象を抱く。言うまでもなく、ピアノのだ。 幼い頃の芸事で、親に少し齧らされたピアノの教師が、エリカに言って聞かせたことがある。「リサイタルのチラシに、調律師の名前はめったに載らない」

2016-01-24 01:51:09
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 「けれど著名な演奏家には、常に、影のように、名演を支えるそれの姿があるのだ」と。そして、ああ、たしか、音大を出てプロを目指したものの挫折し、町の片隅に教室を開いたというあんまりな経歴の教師は知った口でこう続けていたはずだ。

2016-01-24 01:51:28
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 「調律は、ただ音を合わせるだけの作業ではない。ペダルの強さ、弦の撓(たわ)みや鍵盤のタッチで、汲み取るにはあまりに感覚然とした演者の好みの『音』を探る、酷く精密で神経を使う、綱渡りのようなものなのだ」と。

2016-01-24 01:51:50
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 言われた当初はピンとはこなかったが(曲を弾く演者の腕さえ良ければ調律の有無など些事でしょうと切って捨てた。思い返すに可愛げがなく厭な子どもだ)、いまの現状とその教えを比べて考えると、なるほど頷けることは多々合った。

2016-01-24 01:52:06
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake 言葉少なに下される作戦の指示を十全に汲み取り、各車へ的確な命令を通達する。咽頭マイクを通して響いてくるコントラルトは、黒森峰の通信手をして「凛としていて一等聞き取りやすい」と評判だ(もっとも、いつもこうだったら良いのにね、というオチも付くが)

2016-01-24 01:52:33
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake ならば副隊長――西住みほは調律師に違いない。そして姉であり、隊長の西住まほはそれに支えられる演奏家だ。 逸見エリカにとって、西住みほが調律し、西住まほが演奏する絶対王者・黒森峰の戦車道は、いつも戦場で高らかに奏でられるコンチェルトだった。

2016-01-24 01:53:02
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake ティーガーの8.8cm砲(アハトアハト)の砲撃音はティンパニの打ち鳴らし、履帯の腹に響く駆動音はチェロの旋律だ。低く唸るエンジン音が木管楽器のように重なれば、それは一分の隙もなく、鉄壁の防御の中に鋭利な冷たさすら介在するまごうことなく完璧な演奏に違いない

2016-01-24 01:53:28
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake そして、西住みほが黒森峰から姿を消してから幾しばらく。 遅れる連携に、紙一重分だけ合わないチームワークに、逸見エリカは淀みを見る。 髪の毛を掻き毟っては苛立たしげに拳で壁を殴り、いくら振り払おうとしても耳に付くのは不協和音。居ない。調律師は、もう居ない。

2016-01-24 01:53:53
ひゃくまる @osiroiobake

@osiroiobake おしまい。「演奏家 西住まほ」「調律師 西住みほ」「ピアノの先生 逸見エリカ」お伝えすることは以上です。

2016-01-24 01:54:28

ダージリン様とオレンジペコ

ひゃくまる @osiroiobake

「紅茶にゴールデンルールがあるのをご存知?」茶会、そう言った隊長の顔を、二度の瞬きでオレンジペコは見た。淹れて、下がろうとした所への斬り込みだ。 「温度、茶葉、色々あるけれど、私場合はね」「時間を共有できる大切な後輩なの」「遠慮せず、席につきなさい、ペコ」適わないなぁ。そう思う。

2016-01-24 00:28:35