140ssログ1月

やまたに@極めのネタばれをします @mw_snc

寒いから、と石切丸は手を伸ばす。体温を分け会うように手を繋ぐ。抱き締める。口付ける。はあ、と二人の間の吐息が白く熱をもつ頃、ようやく同じになった温度に石切丸は目尻を下げた。やっと君も暖かくなったね。そう、全部自分のこの冷たい指先のためだと青江は知っている。(石かり)

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おぬしは暖かいのう。ごろごろと狐がじゃれる。大きいが今更邪魔と思うこともないと石切丸は好きにさせた。ぬくぬくじゃー、と袂に潜るのも許した。膝の上に頭を招いてやる。ううむ、廊下から冷気が来るから終いのようだ。離れる体。なんだ、妬く青江が見られそうなのに。彼は密やかに笑った(石かり)

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可愛いと言うのは地獄の言葉だ。可愛い子、可愛い青江、可愛い私の。水飴みたいな言葉に鋼がどろりと溶けだすようだと青江は思う。過ぎた宝、魔除けの霊刀、人殺しの道具。僕は、それらであったはずなのに。戸惑う君も可愛いね。なんで。嫌がるくせに逃げないから。そう、もう手遅れだ。(石かり)

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痛くない、と強がった。そんな薬研に宗三は呆れる。手入れが必要なくせに。平気だ。だから心配するなと無理を言う。無言の抗議で包帯をぐっと締めると小さく呻く。ほら、痛い。痛くない。僕の前まで頼りになるよう格好つけるから寂しい。言えば、あんたの前だからこそと言われるのだろうけど。（薬宗）

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お仕置きだよと石切丸は嘯いた。実戦刀だからね、そうやって彼は無茶をする。無数の擦り傷は果敢に挑んだ表れと唇を持ち上げるから。そのあちこちの小さな傷に唇を一つ一つ這わせる。こめかみの傷から腹、爪先まで丁寧に。焦れったい、と身を捩る彼が、少しでも在り方を変えてくれるように。（石かり）

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普段から折れそうな手足が余計にか細く見えた。その体に包帯を巻きながら薬研は密かに思う。言えば、機嫌を損ねるだろう。せっかく上機嫌なのに。大将首を倒したんです。歌うように彼は語る。旋律に合わせるように包帯を動かす。くる、くるり。薬研、僕強いでしょう。答えは笑って誤魔化した。（薬宗）

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舌打ち、貧乏揺すり、刀を握り締めたままの手。荒れてるなぁ、と青江は呑気に近寄った。御神刀の豹変に、他は誰も近寄らない。怖がるわけもない三日月も小狐も、面倒だと逃げてしまった。まぁ、どうせ僕が面倒見るしね。青江も臆することはない。だって、彼の裏側を知ることはひどく甘美だ。（石かり）

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絡みつく腕も足も、完全に恋人扱いでも子供扱いでもなく、湯たんぽだ。宗三にぎゅうっと抱きしめられながら薬研は諦観する。お互いの指先が冷たいのは事実だし、薬研としても暖かいことは暖かい。ただ、耳元の吐息がこう、予期せぬ状態になるなぁ、と。抜け出せない布団の中でこそり思った。（薬宗）

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どうでもいいと思ってたんだけどなぁ。髭切はぽつりと呟く。誰もいない部屋。窓からは楽しげに語らう三人。僕の弟が僕の知らない顔で僕の知らない刀と笑ってる。おまけに僕の知らない名前で。ああ、嫌だな。忘れてしまおう。醜い感情に蓋をすると、あの子の名前まで消えていってしまうけれど。（髭膝）

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三条はな、どうも好意が露骨らしい。人目を憚ることを知らん。三日月が飛車を打つ。源氏はねぇ、独占欲が強いかな。一人しか見えなくなっちゃう。髭切が角で迎えうつ。お互い難儀だなぁ。一番難儀なのは合わせ持つ刀がいることじゃないかなぁ。どこぞの御神刀がな。そうそうあの緑の。（不在の石かり）

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愛し、可愛い。そんな言葉ならいくらでも頭に浮かんでくるのになぁ。髭切は不思議に思いながら、弟の寝顔を眺める。薄く開いた唇、閉じた睫毛の長さ。好き、綺麗。同じ顔なんだけどなぁ。鏡に映る自分の顔にどう思うこともないのに。焦がれる、乾く、鬼になる。僕は、いつか僕を切らなきゃ。（髭膝）

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御神刀殿、と弟は呼ぶ。綺麗な拒絶の音を浮かべて。あれも雷雲を纏う我が一族だろうに、否定する。そもそも、向こうに混ざる気もないのに。俺の兄者は兄者だけだ。知ってるよ、そんなこと。そんな、当たり前のこと。君以外の兄弟なんて、僕だっていらないもの。何度だって、切り捨てるよ。（髭膝）

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ああ、これはいけないね。石切丸は目を開けてまずそう思った。昨日は疲れて眠る青江を抱きしめているだけのはずだったのだけれど。足の間にいつの間にか侵入したのは青江のそれだ。背中に回るのは青江の腕だ。擦寄る頬も。ああ、いけない。君の無意識の愛情は毒にも近い。（石かり）

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新たな一振りのせいで、本丸が喧しい。宗三は湯呑みを空にしながらそう思う。兄者兄者と煩いそれは、兼さんやら大包平、時には主主と騒ぐ刀を巻き込んでまるで自慢大会だ。まったく、よくやる。大体一番いい男は薬研に決まっているでしょうに。呆れながらも、宗三もこそりと参加した。（薬宗）

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兄者、と呼んで弟は手を引く。食事だ。湯あみだ。遠征だ。さすがに出陣くらいは別だけれど、それ以外はずっと。兄者、彼は手を差し出す。それを掴める手のひらがあることが奇跡だって、君は知ってるだろうか。もっと、君に触れたい。この手のひらで。(髭膝)

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兄者は禁止、と言ってみた。ただの戯れ。でも弟は何か言おうとする度に口を開いて閉じて、それから本題。どれだけ呼びたいの。なんて髭切に余裕があったのもそこまでだった。するりと手のひらに、胸に、擦りよって言葉の変わりに伝えてくるから。あのね、喋っちゃ駄目とは言ってないよ。（髭膝）

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緑のを知らないかい、最近来た兄刀に言われて、石切丸なら食堂だと返した。神社の、と言われ、祈祷中、と。大太刀の。源氏の。その度に名前を忘れる彼に石切丸はと返して。君はそのなんとか丸が好きなんだねぇ。髭切は笑う。他にも、当てはまる刀はいると思うんだけど。ぐ、偶然だよ。(石かり＋髭切)

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@mw_snc 以後「ねぇ、こう大きな獲物を持った」（いし…いや、太刀以上は皆可能性があるね）「緑の服を着てる」（いしき…いやいや、鶯丸もいるよね）「茶色の髪の人なんだけど」（石切丸！石切丸でいいよね！）「石切丸なら「あ、そこにいた。ねぇ、そこの槍の」（おてぎね！？）ってオチが。

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なにが好きかな、歌仙に問われて髭切は迷った。まだ決まってないのかな。そう顕現したばかりを理由にしてくれるけれど、そうじゃない。好きも嫌いも弟の耳に入れたくない。好きなものは捧げて、嫌いなものは排除しようとする子だから。本当は、今作ってる安倍川餅とか、とても好きだけどなぁ。（髭膝）

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兄者、と呼ばれる度に責められている気がする。君を見つめること、君に触れること、君に抱く想い。到底弟相手には相応しくないものだ、と。別に弟は怒らないだろうに、誰かが責めるのだ。そうして、その誰かはきっと僕自身で。兄者、どうした。ほら、君の綺麗な瞳に映る僕が睨んでる。（髭膝）

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炬燵は恐ろしい。すやすやと自分を抱き締めて眠る男に今更気付いて、青江は自分に呆れた。普段なら寝ていても気配に起きただろうに、ここまで気持ちよく寝られるなんて。そうしてる間に瞼が落ちて、再び睡魔がやってくる。炬燵も恐ろしいけれど、君はもっと恐ろしい。気を許してばかりだ。(石かり)

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薄緑はあにじゃばっかりですね、今剣が唇を尖らせる。だって兄者は素晴らしいひとなのだ。当たり前のように膝丸が答える。どこがすばらしいのだろう。弟の名前を忘れて、申し訳ない顔一つしないで、そのくせ他といると冷たい空気になるそのひとの、どこが。肩を竦めた今剣に膝丸は首を傾げた。（髭膝）

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鬼が出たのかい、髭切が笑う。その視線が首筋に向いていると気付いて、石切丸は困ったように笑った。きっとそこには歯型がついているんだろう。猫が出たんだよ。小さな小さな独占欲はそんな化け物じみた執着じゃない。鬼になればいいのにね。心を読んだように目の前の唇がそう動いた。（石かり）

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柔肌に噛みついた。びくりと震えた弟は、それでいて拒まない。肩、首、喉元、鎖骨、その下。涙を浮かべるくせに大人しい。噛まれるのが好きなの。尋ねると、不思議そうな顔をする。兄者がくれるものならなんだって構わない。君ってほんと、可愛すぎて馬鹿みたい。(髭膝)

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その指が触れるだけで幸せだと、きっと兄は知らない。遠く遠く、離れてしまった半身の体温がどれほど嬉しいのか。君は甘えん坊だねぇ。笑顔を、声を、向けられることがどれほどの喜びか。もうひとつ、名前を呼んでくれればいいのに。至上の幸福はまだ手に入らない。（髭膝）