エピローグ:「クリア・ウェザー・アフター・ア・タイフーン・ハズ・パスト」

嵐は過ぎ去り、残るは晴れ渡る空ばかり
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「激闘!嵐舞う西方海域」 エピローグ 「クリア・ウェザー・アフター・ア・タイフーン・ハズ・パスト」

2016-02-12 20:05:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「サ!ヨ!ナ!ラ!」太陽を思わせるほどの閃光を放ち、ソーサラーは爆発四散した。世界を破壊せんとした大嵐は、爆破の余波で霧散する。ジゴクより還りし妖術師にトドメを刺した二人の戦士を乗せ、ボロボロのフライトリバティーはゆっくりとリランカ島へと降下した。 1

2016-02-12 20:11:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

覚束ない足取りで、フライトリバティーは港湾部に着水した。イクサの行方を見守っていた者達がフライトリバティーへ駆け寄る。二人の戦士が甲板から飛び降りた。人々は戦士を出迎え、ある者はその肩を叩き功を労い、ある者は全力の抱擁を交わした。 2

2016-02-12 20:15:40
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

嵐により集められていた雲霞が少しずつ散っていき、天使の梯子めいた陽光が世界を照らした。こうして、悪夢の如きイクサは終わったのだ。 3

2016-02-12 20:17:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

少しずつ晴れていく空を眺めながら、瑠奈花はフライトリバティーでぼんやりとしていた。フライトリバティーはいまだリランカ島に鎮座している。全体に付けられた大小の傷が痛々しい。自力航行には問題があるほどに。今は、西方海域前線基地からの迎えを待っている格好だ。 5

2016-02-12 20:20:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

コツ、コツ、コツ。近づいてくる足音が聞えた。艦娘達はイクサの疲れからか泥のように眠っている。瑠奈花は背後を見た。「ああ、貴方でしたか」「おう」片腕を上げ、挨拶を返すはリカルドだ。その全身は蒼黒の鎧で覆われている。リカルドはそのまま瑠奈花の隣に座り込み、疲れたように息を吐いた。 6

2016-02-12 20:24:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「脱がないんですか、その鎧」「コイツは仕事道具だ」リカルドは空を眺めながら言った。「脱ぐのは帰投してからだな」「成程」暫しの沈黙。この二人もまた疲弊していた。特に瑠奈花は龍驤に肩を借りねば自力で歩けなかったほどに。「リカルド=サン」「何だ」「深海星鬼について、どう思いますか」 7

2016-02-12 20:28:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

瑠奈花は、ソーサラーから聞かされた真実を皆に語って聞かせていた。そうせねばならぬと思ったからだ。「星鬼…ねぇ」リカルドは暫し考え込み、口を開いた。「どうしたもんか、ってのが正直なもんだな」「ふむ」「まだ出るかどうかもわからん奴のことを悩んでも仕方ねぇしな」 8

2016-02-12 20:30:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それに」リカルドは空を見るのを止め、瑠奈花を見た。その瞳には力強い光が宿っていた。「だからって諦める理由にはならねぇだろ?」「ですね」瑠奈花は笑い、そして決然と言った。「深海星鬼。もし奴が出現したら、世界は確実に滅び去る」「なら、止めねぇとな。英雄殿?」「その通りです」 9

2016-02-12 20:33:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「その為には、まずこの戦いを何とかせねば」瑠奈花は晴れ行く空を見て呟いた。「彼女達は、どう思ってくれただろうか……」 10

2016-02-12 20:34:34
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リランカ島から離れた海上を滑るように進む二つの影。離島棲鬼と戦艦棲姫だ。二人の面持ちは沈痛だ。「お嬢」戦艦棲姫が声をかける。離島棲鬼は振り返らず帰した。「侮っていたわね」「……」「私達に掛けられた呪いは、解けていなかった」離島棲鬼は歯を食いしばり、拳を強く握り締めた。 12

2016-02-12 20:37:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「神を倒し、艦娘達が瘴気を祓えば全てが終わる…そう思ってたわ」「……お嬢」戦艦棲姫は気遣う様に離島棲鬼の手を取った。離島棲鬼は戦艦棲姫の顔を見、努めて微笑んだ。「ともあれ、この星諸共心中するつもりはないわ」離島棲鬼の瞳に強い光が灯る。「必ず防がないと」 13

2016-02-12 20:40:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

二人は海を進む。秘匿泊地が見えてくる。だが、戦艦棲姫は足を止めた。「どうしたの?」「お嬢、一つ懸念があるのですが」「何?」「この事は、西の深界軍は知っているのでしょうか?」「……」離島棲鬼は眉を顰めた。現在この西方海域を縄張りとするのは、深界の軍隊が基となった深海棲艦群だ。 14

2016-02-12 20:42:40
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

現在は戦艦水鬼と、何処からか現れた「提督」と名乗る男により、人類への徹底抗戦を是としている。離島棲鬼達は彼の者達と意見を違え、深界を追われたのだ。「確かにそうね…」離島棲鬼は思案する。 15

2016-02-12 20:45:29
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ソーサラーは深海星鬼が出現しても自分が無事だと思うような言動をしてた…つまり、地球が深海棲艦と化しても、生き延びる術があると言う事?」「如何いたしましょうか」「もっと深く潜る必要があるわね…」離島棲鬼は海を見た。「奴等が何処まで知っているのか、確かめないと」 16

2016-02-12 20:46:52
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

離島棲鬼はそのまま、海中へ潜り込んだ。戦艦棲鬼はその後に続こうとし、ふと空を見上げた。嵐が消えたことで、空は晴れ渡っていた。暗黒の未来の感じさせぬほどに。戦艦棲鬼はその景色を目に焼き付け、主に続き海中へと潜航した。あとに残るは、晴れ渡る空と、静かに揺れる海のみであった。 17

2016-02-12 20:49:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「激闘!嵐舞う西方海域」おわり

2016-02-12 20:50:02