月下の執着#1 寒い夜、月のない夜◆3

どこの世界にも、特定の職業に強い憧れを抱く者はいる。そしてそれが叶わぬ夢と散ることも。 鎧兵が守る雪の降る街。一人の青年が、非合法にも集めた鎧兵のパーツ。手製の鎧を身に纏い、人生をかけた危険な「ごっこ遊び」に挑みます。 全50ツイート予定 最初↓ #1 ◆1 http://togetter.com/li/937471 前↓ #1 ◆2 http://togetter.com/li/937869 次↓ #2 ◆1 http://togetter.com/li/938703 実況・感想タグは #減衰世界 です
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  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 14:40:54
    _月下の執着#1 寒い夜、月のない夜
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 14:44:57
    _マイラの家で、酒を酌む二人。観光客は自分のことをパラファラガムスという名だと名乗った以外は、特に情報を話さなかった。 「俺はマイラ。見ての通り、モグリの鎧兵さ……不思議だろう、こんなリスクを負って、何の得にもならないことをすることを」 21
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 14:50:20
    _パラファラガムスは特に何も言わず、ちびちびと酒を飲んでいる。マイラは許してくれたと思い、事情を話し始めた。 「夢だったんだ。鎧兵が……実際は、夢破れた者さ。憧れだけあっても、実際はすべてうまくいくわけなかった」 22
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 14:55:33
    _こんなことを話せる友人などいなかった。ただ、この観光客はなぜか分かってくれる気がした。彼は真っすぐにマイラの目を見ていたからだ。 「夢が叶わないまま、情熱だけが残っていた……気づいたら、作っていたんだ。この鎧を」  壁にもたれさせた鎧を見るマイラ。 23
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:01:32
    _視線を戻すと、パラファラガムスと目が合った。 「分かってくれるのか……? 馬鹿な俺を……」  縋りつくようなマイラの問いに、パラファラガムスはこくこくと頷いて答える。マイラは、それだけで救われたような気持ちになる。 24
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:09:42
    _パラファラガムスは酒瓶を手に取って、マイラの方へ差し出した。天井の電気ランプがチカチカと明滅する。これは電力不安定なせいだろうか、それとも涙で歪んでいるせいだろうか。マイラははなをすする。そして酒を注いでもらう。 「いいやつだな、お前……」 25
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:15:19
    _マイラは酒を一気に飲み干す。今日はやけに酒が進む。 「俺は初めて他人から理解された気がするよ……なぁ、パラさん。あんたに夢はあるか? ……いや、愚問だったな」  夢はあるかと聞かれて、素直に言えなかった自分。どうせ馬鹿にされると、胸の奥に隠した自分。それを思い出す。 26
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:20:18
    「ひとは誰にでも夢がある……でも、それを分かってくれる人間が、どれほどいるだろうか。大切なものは誰にでもある。世の中は、ひとの大切なものを踏みにじって喜んでいるものばかりだ……」  マイラは酒瓶を手に取り、パラファラガムスの盃に酒を注ぐ。干し肉を裂いて分ける。 27
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:25:37
    _酔いが回っているのは、マイラ自身にもわかる。壁に掛けられた写真が、ブレて2重に見える。あの写真の両親は、もういない。 「俺の場合もさ、誰にも理解されなかったよ。法にすら触れるんだ。誰もが俺に説教して、もっとまともな夢を持て、と言う……」 28
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:30:33
    _パラファラガムスは黙って聞いていた。元から感情を見せない無口な男だ。だが、その目は真っすぐで、真剣だった。 「でも、俺は満足だよ。一人でも、理解して……いや、黙って聞いてくれる人がいる。それだけで、俺の夢は、存在してもいいんだって……そう思えるんだ」 29
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:36:25
    _マイラは机に突っ伏して眠り始めた。消え入りそうな言葉が最後まで続く。 「限られた人生の時間の中で夢中になって時間を費やせる何かがあるってのはいいじゃねぇか……」  パラファラガムスは、彼の背中に自分のコートを着させてやった。夜は更けていき、電灯の明かりは不安定だった。 30
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:36:48
    _月下の執着#1 寒い夜、月のない夜(了) #2 月の光の、眩しい夜 へつづく
  • 減衰世界 @decay_world 2016-02-14 15:42:50
    【用語解説】 【写真】 科学文明であるエシエドール帝国が発明した写真機は、構造が単純であったため文明崩壊後も技術が断絶することは無かった。カラーと白黒が存在するが、一般的に使用されるのは白黒写真で、日光に長期間晒されるとすぐセピア色に退色してしまう。

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