戯言屋さんの突発抽象小説「穴だ穴だ2」

例によってまとめておきました(ぁ
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前回

まとめ 戯言屋さんの突発抽象小説「穴だ穴だ」 まとめてみました 穴へようこそ 1669 pv 23 1

続き?

戯言屋 @zaregotoya

突発抽象小説「穴だ穴だ2」 ……天に漂う浮遊大陸。それは地上の沼だったものが住人達の想像の翼で浮かんだとも、無名世界観沼と切り離すために神々が行った慈悲とも言われるが、真相は謎である。ここ刀剣乱舞沼では、今日も想像の翼をもて沼に沈む者達が、それぞれの日々を過ごしていた。 01

2016-02-20 15:22:43
戯言屋 @zaregotoya

「ババ様!」 最近現れた緑色に光る沼の記事が書かれた、刀剣乱舞速報という新聞を読んでいたオババの審神者は、齢を重ねた皺くちゃの顔をあげた。そこには最近18になって沼に来たばかりの新人審神者、トウコの姿。「おお、トウコや。どうしたね。ついに狐を捕まえたんかい」 02

2016-02-20 15:27:00
戯言屋 @zaregotoya

「いいえ。狐は確実に手に入る方法があるみたい」 目を伏せるトウコ。「……でも、なんだか複雑だわ。これでも私、あんなに苦労したのに」 若かりしトウコは、けれど早くも難民の子だった。「まあ、難民には、ようやく出会えると思う者もおるかも知れぬ」「でも……」 03

2016-02-20 15:31:22
戯言屋 @zaregotoya

ふむ。と考えるオババ。「そうじゃな。では、事前登録しなければええんじゃよ」「……えー」 困惑するトウコ。オババは微笑む。「刀剣乱舞には具体的な物語は無いからのう。だから、トウコが好きなプレイングで、物語を描けばいいんじゃよ」「でも、なんだか損な気がして……」 04

2016-02-20 15:35:34
戯言屋 @zaregotoya

「トウコや、よくお聞き。損得を超えたところでこそ、輝くものもある。それこそは、バカの生き方じゃ。せっかくの事前登録報酬をわざわざ蹴って、自ら狐を狩ろうと決意するようなプレイングは、まさにそれじゃよ。このバカは褒め言葉じゃ。そういう生き方をするのも、たまには良いものじゃて」 05

2016-02-20 15:39:42
戯言屋 @zaregotoya

「う、うーん……でも……」 悩むトウコ。オババは、にっこり。「ま、ワシとしては、複雑な気持ちの審神者と、事前登録で見知らぬ主の元に送られる狐がどんな気持ちなのか……というのであれこれ想像するのもアリじゃが」「もう! ババ様は他人事だと思って!」「ホホホ」 06

2016-02-20 15:43:51
戯言屋 @zaregotoya

「ま、トウコのゲームじゃ。トウコの好きなように」「あ、そうそう。ババ様、違うの。聞きたいことは別にあって」「なんじゃ」「これ、この本。この前やったTRPGのルールブック」 トウコが取り出したのは、『Aの魔法陣ver4 NEXT GENERATION(定価630円)』である。 07

2016-02-20 15:48:42
戯言屋 @zaregotoya

「その可愛い漫画も付いてかなり安い何でもできるTRPGのルルブがどうしたんじゃ」 動揺を表情から消しながら、オババ。「これに書いてある神々の宴というページに、審神者とか神剣とかのことが少しだけ書いてあったの。これって刀剣乱舞の原作者が書いたんでしょ?」「……そうじゃな」 08

2016-02-20 15:53:45
戯言屋 @zaregotoya

「なんか無名世界観っていうのの設定らしいんだけど、これって刀剣乱舞も同じ設定なんじゃないかって。ババ様はどう思う?」「刀剣乱舞と無名世界観は、繋がってはおらんよ」「でも、少なくとも原作者は、そのあたりの設定を流用してるんじゃないかなって思うんだけど」 09

2016-02-20 15:57:34
戯言屋 @zaregotoya

オババは複雑そうな顔。「まあ……そうかも知れんのう」「でしょ! だったら、無名世界観を調べれば、刀剣乱舞のことも何か分かるんじゃないかしら! 実際には繋がってなくても、原作者の考え方とかが分かれば面白いかも。神々の宴の、神様の定義とかも面白かったし!」 10

2016-02-20 16:00:53
戯言屋 @zaregotoya

さて、どうしたものか。オババは悩む。この若くして深淵を覗こうとする娘をあの穴に突き落とすのは、少々心苦しいところがある。「それにババ様、昔は無名世界観沼の住人だったんでしょ?」「!? ど、どこでそれを?」「え? だってババ様の創作審神者、館の女主人系だから」 11

2016-02-20 16:04:25
戯言屋 @zaregotoya

「そ、そうじゃが。それが?」「ネット検索してたら、たまたまババ様のホームページを見つけて、そこに式神の城で魔女の弟子になる夢小説があったから……ああ、ババ様の逆ハー属性はここからなのかなって」 オババは吐血した。「どうしたのババ様!? しっかり!」 若き日の遺産であった。 12

2016-02-20 16:07:58
戯言屋 @zaregotoya

「えっと……式神の城って、無名世界観よね?」「ま、まあ、そうじゃな。……昔は、ワシも無名世界観沼に住んでおったことが、ある」「やっぱり」「だが、賢いトウコや。ひとつ教えておくが、あそこは沼ではない。……穴じゃ、穴じゃ。お主があの深淵に飛び込んでも、生きては戻れまいて」 13

2016-02-20 16:11:39
戯言屋 @zaregotoya

「でも私、気になるわ」「気にせんでもええよ。実際、そんな他の沼というか穴を気にしなくても、刀剣乱舞はそれ単体で充分に楽しめるのじゃから。というより刀剣乱舞と関係ないような情報がほとんどじゃて」「……でも。あっちはあっちで、なんだか気になるもの!」「ううむ……」 14

2016-02-20 16:15:20
戯言屋 @zaregotoya

じっ、と見つめ合うトウコとオババ。不意に遠くの空で、六つ子の形をしたUFOが沼の住人を不思議な光線で吸い上げて去っていったが、それさえも気にしないほどの真剣さであった。(……変に適当な情報を拾って誤解させたりするよりは、まだマシかも知れぬ……) それがオババの結論だった。 15

2016-02-20 16:18:38
戯言屋 @zaregotoya

「……仕方ないのう。では、トウコや。これを」 オババは青い宝石の首飾りをトウコに渡した。「なに、これ」「ガラス玉の玩具じゃ」「……それで?」「見る者が見れば、分かる。それと呪文などをいくつか教えておこう」 あれこれと教えるオババ。トウコは嬉しそう。 16

2016-02-20 16:22:08
戯言屋 @zaregotoya

「これで無名世界観のことを調べられるのね!」「無名世界観の穴に行って、そこの住人がたまたま詳しくて親切であれば、じゃがな」「えー……」「無名世界観の穴は色々なところに空いておる。じゃが、それらが1つになった穴の全体像を把握している者など、そうおらんのじゃ」「ど、どうすれば」 17

2016-02-20 16:25:30
戯言屋 @zaregotoya

「まずはここより西に進み、マジオペ沼を探すのじゃ。まだ沼というほどの大きさではないかも知れんが、その底は無名世界観の穴の中心に繋がっておる。……沼のほとりで、花を育てようとしている者がいれば、ワシの知り合いのはず。その者に穴の歩き方を教わるのじゃ」「わかったわ!」 18

2016-02-20 16:28:53
戯言屋 @zaregotoya

「そこまでにして貰いましょうか」 不意に周囲を、灰色の軍服達に囲まれるトウコとオババ。全員が何やら負傷している。「お主達は……ガンパレ傷痍軍人!」「あの穴と、この浮遊大陸を僅かでも繋げることは、やめて頂きたい」「わ、私は別に、そんなつもりは……」 19

2016-02-20 16:32:28
戯言屋 @zaregotoya

遠い目をするガンパレ傷痍軍人達。「私達も、こんな悪役めいたことはしたくはない。けれど、あの無駄に細かくて伏線だらけの設定とか見てドン引きしたりしてしまわないか、心配なのですよ」「ううむ。一理ある……」「ババ様!?」 かなり真顔で同意するオババに、裏切られた気分のトウコ。 20

2016-02-20 16:35:35
戯言屋 @zaregotoya

「じゃが……ワシは」 オババは静かに言った。「ワシは、式神の城で、バカになることの尊さを学んだのじゃ。絢爛舞踏祭で、無限の可能性を見たのじゃ。無名世界観の設定の全てが悪しきであると、なぜ言い切れよう」 オババは、“なんでもイケる”と文字が刻まれた、想像の双剣を抜き放つ。 21

2016-02-20 16:38:45