怪異殺し不知火vs真夏の驟雨・しおい

ありがとうTL
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洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

初風は「ほとんど首無しHearts(ハッツ)」(死体なので心もない)だし、コンビ組んでる「絶対に正解を当てる呪い」と「全ての運が味方する呪い」を持つ雪風の二つ名「死神」とピッタリなんだよなぁ。でも初風は雪風のお蔭で心を取り戻していくんですよね。

2016-02-26 14:26:46
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

しかしこの大群の中に本体がいるという確証もない中ナイフ1本で何ができよう。姉でありボスである陽炎のように紅蓮の炎を操ったり、上司である夕張のように機関銃を標準装備はしていない。風凪の太刀を持つ妹磯風のように全体攻撃の技も不知火にはない。 「「「追いついちゃうよ!」」」

2016-02-26 14:29:38
🌿紫蘇石竜子🐍 @shisosoda

しおいちゃんは元人身御供で土着神と混ざってて殺した程度では死ななさそう

2016-02-26 14:31:47
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

歓喜の声を上げるしおいの指先が高速で移動する不知火の背中を遂に捉えた。 「「「行かせないよ!」」」 「なッ!?」 しおいはもう片方の手を使って不知火の行く手に水の壁を築いた。両手を使うことができるとは。不知火は完全に意表を突かれる。加速する身体はもう2歩で壁に激突してしまう。

2016-02-26 14:35:05
🌿紫蘇石竜子🐍 @shisosoda

しおいちゃんが土着信仰の厚い特異な風習のある村の生まれという風潮

2016-02-26 14:36:06
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

かと言って今から方向転換しても背後から迫る水流に上半身を絡め取られ溺死してしまうだろう。まさに絶体絶命。 「「「つ~かまえたぁ!」」」 しおいの両手がバチンと打ち鳴らされる。水壁にぶつかった流水が弾けてバス停とアスファルトを巻き込みながら粉々に砕け散った。

2016-02-26 14:37:37
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

人体などひとたまりもない衝撃に周囲の蛙は宙を舞い、しおいの幻影は一瞬で掻き消えた。雨に混じって木片や石片が降り注ぐ。やがて着地した蛙たちの上空に再びしおいがぼんやりと現れた。彼女の、彼女たちの視線は水の爆発とも言うべき破壊によってできた穴に注がれる。 「「「消えちゃった?」」」

2016-02-26 14:41:59
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「残念ですが」 「「「ッ!?」」」 しおいたちは声のした方に一斉に振り向いた。多少泥に汚れているものの五体満足の不知火がナイフを構えて「その場所」に立って居る。 「「「どうやって?」」」 しおいは悔しさに歪んでいるわけでも、渾身の一撃を回避されて怒っているわけでもない。

2016-02-26 14:49:54
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

好奇心に満ちた子どものような態度で疑問を発した。 「……不知火に落ち度はありません。例え「偶然」蛙の死骸に足を取られて転んだとしても、今ここに「居る」という、結果が全てですから」 不知火はナイフを振り上げる。 「蛇に睨まれた蛙、という言葉をご存知ですか?」 「「「知らない」」」

2016-02-26 14:53:09
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

しおいは腕を上げようとするがその身体は金縛りにあったようにピクリとも動かない。 「ならばお教えしましょう。不知火の目は蛇の目。怪異の本質を見抜けはしませんが、一度でも本質を「認識すれば」その特性に麻痺をかけます。例え実体のない「不知火」であってもこの目は縛り、そして封ずる……」

2016-02-26 14:58:17
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

雨は止むことなく降っている。 「あなたはここで、ずっと待っていたのですね」 不知火の刃が垂直に振り下ろされる。バス停のはす向かいにひっそりと建つ祠の奥に隠されていた小さな頭蓋骨、その中に住まう一匹の蝦蟇蛙。断絶の刃は怪異の心臓を一撃し、その存在根拠を根こそぎ「断った」。

2016-02-26 15:04:02
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

地鳴りと共に道路のアスファルトが消失し、仄暗い沼が現れた。蛙たちは次々にそこへ飛び込み、しおいの幻影が消えていく。 「「「やっと見つけてくれたんだね」」」 安堵の声。不知火がナイフを引き抜くと死に体の蝦蟇蛙は最後の力でぴょんと跳ね、暗闇へと身を投げた。

2016-02-26 15:07:06
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

沼はその円周を狭めていき、やがて最後の蛙が飛び込んだのと同時に消滅した。 「……雨が止みましたね」 不知火はナイフをしまって呟く。雲間から太陽が顔を出し森の中の道を照らした。大きくえぐれたアスファルト、倒壊したバス停、折れた木々。しばらくここは通行止めだろう。

2016-02-26 15:10:41
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

不知火は半分に割れた頭蓋骨を持つと歩き出す。村まで一時間はかかるだろうが、雨水でびしょ濡れの身体を乾かすにはちょうどいい。蝉たちが雨上がりを祝福するように合唱を始めた。そよ風が堆肥の臭いがする生温い空気を運んでくる。 「これだから夏は嫌いです」 不知火は笑顔でため息をついた。

2016-02-26 15:14:19
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「それで、今回はどんな事件やったん?」 怪異殺したちの集う本部、書類業務が大の苦手である不知火は提出書類の管理を担当する黒潮の部屋を訪れていた。大阪のたこ焼き屋をイメージしたという室内はカオスで年代ものの壁板には昭和風のレトロなポスターが何枚も貼ってある。

2016-02-26 15:16:51
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

天井付近には「たこ焼き 200円」などと記された手書きのメニューが並び、よく見ると隅っこに怪異殺したちの名前が書かれていた。不知火の名は「年中無休! かき氷ピーチ味! 300円」の札にピンク色の蛍光ペンで記してある。 「報告します。事件NO.401、水上村の驟雨事件。」

2016-02-26 15:20:23
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「怪異の分類は水。怪異の特性は地縁、媒体は沼。怪異の正体は蝦蟇蛙と1人の少女。依頼主は水上村村長水上何某。調査に至った経緯及び事件概要は別途資料参照。水上村では近年、山の向こうの街と連絡するため、従来の大回りな道路に代わる新たな山道を敷く計画を開始。完成は去年20××年。」

2016-02-26 15:25:19
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「年中無休のバスも通し村人の生活は一変します。ところがその夏、山の真ん中にあるバス停「水上沼」にて最初の怪異が発生。バスを降りた猟師がここで消息を絶ちます。彼は泥酔していたため警察は彼が誤って足を踏み外したのだろうと結論付けます。しかし後日、彼の水死体が付近で見つかりました。」

2016-02-26 15:28:24
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「バス停の周囲には小さな祠があるだけで水場はありません。確かにバス停のある場所から足を踏み外せば斜面を転がりますがその場合は打撲などで死ぬことになるでしょう。にもかかわらず男は2倍近く膨れた水死体になって見つかったのです。警察はどうしようもなく事実を黙認、捜査は打ち切られます。」

2016-02-26 15:31:24
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「それから水上沼では次々と同様の水死体が発見されます。被害者は総計で8人にのぼり、全て成人男性、死因は窒息死。また小学生以下の少年4人がこの場所で失踪する神隠しが発生しました。夏休みの彼らは水上沼のバス停付近で虫とりをしていました。村はこの事件を受けて再び警察に捜査を依頼。」

2016-02-26 15:35:02
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「大規模な捜索がなされるも成果はなく関係者たちは対応策に頭を抱えます。ここまでが去年の夏。警察官が常駐する計画が実行されたのは最後の蝉が死んでからでした。しかしその頃には水上沼の神隠しは鳴りを潜め、再びそこはただのバス停に戻ったのです。ですが今年の夏、再び失踪事件が発生。」

2016-02-26 15:38:45
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「村の少年2人が大人たちの忠告を無視して肝試しを行い神隠しにあいました。そこで村長は警察経由で私たちに怪異殺しを依頼、派遣されたのが私、不知火です。調査は聞き込みから始まり、郷土資料を閲覧後、バス停の実地調査へと移りました。結論を先に言えば、神隠しにあった少年6人は無事でした」

2016-02-26 15:41:51
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「私が怪異を殺したのとちょうど同じ時刻に彼らは自分の家のドアを叩いたのです。6人とも元気な姿で同じことを口にしました。「しおいと遊んでいた」と。しおいとは何だったのか。ここからは私の考察を含めます。思うに、しおいとはまず少女の霊であると同時に、夏の生き物たちの土着神でした。」

2016-02-26 15:44:36
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「郷土資料を紐解くと水上村の名前の由来ともなった水上沼はあの場所に実在していたそうです。それが道路の開発に伴って掘り返され、コンクリートで埋められました。村人の誰も村上沼に本当に沼があったことを知らなかったのは、あの場所があまりにも山深すぎたせいでしょう。」

2016-02-26 15:47:08
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「かつて、恐らく鎌倉から室町の時代に水上沼の畔に祠が建てられました。当時この辺りで修行していた山伏が水上沼に住む巨大な蝦蟇蛙の大群を山の神として奉ったものです。600年もの間、静寂に包まれていた祠を発見したのは1人の少女でした。名はしおい、戦中の出来事です。」

2016-02-26 15:49:57