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shiroboshi2
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ジュセー
@shiroboshi2
少女は目を開けた。視界は暫くの間ぼんやりとしていた。視界同様、ぼんやりとしたニューロンのまま、天井を見つめる。見覚えのない天井だ。「……？」訝しみながら、ゆっくりと身を起こし、瞼をこする。自分がフートンで寝ていたことに、彼女は初めて気がついた。1 #S57Ninja
2016-02-27 22:17:55
ジュセー
@shiroboshi2
室内を見渡す。質素な部屋だ。ここはどこだろうか、自分はなぜここにいるのか……どうにも思い出せない。「ウーム？」少女は眉根を寄せ、記憶を手繰り寄せる。ニューロンの片隅には常にセピア色の記憶があるが、今それは必要ではない。2 #S57Ninja
2016-02-27 22:21:09
ジュセー
@shiroboshi2
その時。ドンドンと戸を叩く音が鳴った。少女は少し驚いた後、恐る恐る戸の方へと向かい、のぞき穴から外を見た。よく見知った男の顔があった。少女は迷わず戸を開けた。「グワーッ！」勢いよく開け放たれた扉に、男は強かに顔を打ち付けられた。「む？すまんなミコノ=サン」3 #S57Ninja
2016-02-27 22:27:40
ジュセー
@shiroboshi2
「すまんな、じゃないよ、テンタクルス=サン」ミコノと呼ばれた男はフードを被り直しながら起き上がる。「だいたいな、扉を叩く回数を決めてただろ！？」「アー、そんなことをしていた気もする……そうか、安い安いホテルかここは」少女、テンタクルスは頷いた。4 #S57Ninja
2016-02-27 22:32:08
ジュセー
@shiroboshi2
「ハァーッ……ああ、君と会ってからというものの、僕の溜息はひっきりなしに」「ミコノ=サンよ、私は朝ご飯を食べたい」「……」露骨に不機嫌そうな顔を作るミコノの顔を、テンタクルスはキョトンとした顔で見る。「なんだ、お前は腹が空いていないのか？」「……ハァーッ」5 #S57Ninja
2016-02-27 22:37:14
ジュセー
@shiroboshi2
また溜息を吐くと、ミコノは手に持つカバンから何かを取り出した。「ハイ、これ」少々苛立ちの色を帯びた声を発しながら、それをテンタクルスに差し出す。少女は首を傾げた。「なんだそれは？」「PVCレインコート」「ピーヴィ……なに？」ミコノは答えず、彼女に背を向けた。6 #S57Ninja
2016-02-27 22:42:59
ジュセー
@shiroboshi2
「あっ、おい待て！」テンタクルスはその後を追う。彼らは今、特殊な状況下にある。ミコノ・イケダはニンジャ組織から逃亡中の身であり、テンタクルスことハナバタ・ナナは彼のヨージンボーだ。「それを着ていてくれ。少しはマシになるかもしれない」「マシに？なにが？」7 #S57Ninja
2016-02-27 22:47:13
ジュセー
@shiroboshi2
「……自分で考えるということを学習して欲しいな」小声でボソリと呟くミコノ。「む、何か言ったか」テンタクルスはレインコートを羽織りながら問う。「いや、なんでもない。まあ逃亡中だから少しは身を隠そうぜってこと……気休めにもなりゃしないだろうけど」「フン？」8 #S57Ninja
2016-02-27 22:51:24
ジュセー
@shiroboshi2
ハナバタ・ナナはフードを目深に被った。「フーム。落ち着くようなそうでないような。暑くならないかこれ？」「さぁね。僕はもう慣れてるからいいけど」やや早歩きをしながら、ミコノは歩みを進める。テンタクルスはその後を追っていった。9 #S57Ninja
2016-02-27 22:57:26
ジュセー
@shiroboshi2
重金属酸性雨が降りしきるネオサイタマ。二人は歩みを進める。ミコノが当初立てていた計画では、既に目的地に着いている頃だ。だが力尽きたテンタクルスを休める必要があったため、急遽ホテルを使うこととなった。「フーンフフーン」そんな彼女は鼻歌を歌いながら歩いている。11 #S57Ninja
2016-02-27 23:06:22
ジュセー
@shiroboshi2
ミコノ・イケダは最早彼女のそういった行動に対して溜息を吐くことはない。この少女はニンジャであるが、同時にネオサイタマ小市民の一人だ。ヨージンボーとして雇え、と強要してきたにも関わらず、未だ人を殺したことがない、ニンジャらしからぬニンジャ。12 #S57Ninja
2016-02-27 23:10:47