景気・雇用と実質賃金の順循環性について

雇用が良い時に実質賃金も良く、逆は逆という順循環性が観察される一つのケース(労働生産性が両方に影響しているケースとその理由としての雇用保蔵の例)と、順循環性が観察されるからといってその観察結果だけでは実質賃金を上げれば雇用が増えるとは言えないよ、というお話。
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yasudayasu @yasudayasu_t

海外景気の減速や新技術ブームの終焉など負の総需要ショックが起きたとする。すると(確か吉川さんの喩え話を借りると)工場ではこれまでラインで働いていた人が草むしりしかやることが無くなり、工場全体で見て労働生産性が低下する。すると従業員の実質賃金も低下する。

2016-03-02 07:03:45
yasudayasu @yasudayasu_t

一方でそれだけ労働生産性が低下している状態(新たに雇っても草むしり要員になるしかない)では採用が抑制される。雇用は悪化する。世の中、様々な総需要ショックが正にも負にも次々と起きてるので、結果として実質賃金の低下と雇用の悪化、あるいはその逆という実質賃金と雇用の循環性が観察される。

2016-03-02 07:07:51
yasudayasu @yasudayasu_t

実質賃金が上がっている時期には雇用が良い。ではある雇用の悪い局面において、実質賃金を引上げる政策をとれば雇用は回復するのかと言えば、少なくともこの順循環性はそんなことを保証しない。雇用を良くするには労働生産性分調整した実質賃金を下げる必要がある。

2016-03-02 07:15:33
yasudayasu @yasudayasu_t

そういう政策がとられた場合などを考えれば、いかに実質賃金上昇と堅調な雇用が同時に見られるような順循環性が観察されてきたとして、それは高止まった実質賃金を引下げることが雇用を改善させるということの反証にはならない。

2016-03-02 07:18:59

yasudayasu @yasudayasu_t

インフレ期待に比べて実現するインフレの反応は遅れる。同様に、期待実質賃金率に比べて実現する実質賃金率は遅れる。雇用に関係するのは期待実質賃金率の方であって実現した実質賃金率ではない(それが適応的に期待を変化させるのを除き)。そして経済学では賃金と言って賃金率を指すことはよくある。

2016-03-02 20:27:38
yasudayasu @yasudayasu_t

さらに日頃の会話では、期待実質賃金のことを単に実質賃金と呼ぶことも多い。実質賃金を引下げて雇用を増やす、というよくある文脈における実質賃金は期待の方である(雇用との関係から自明なので煩雑さを避けるのに有効)。

2016-03-02 21:16:41