「アベノミクスの成果」を検証する:『就業者数の増加は「アベノミクスの成果」ではなく『高齢世代の人口動態の結果』である。』『実質賃金は民主党政権時より4%下がった。』

安倍政権が「アベノミクスの成果」と呼ぶ経済情勢の改善は本当に「アベノミクスの成果」なのでしょうか?そもそも本当に経済情勢は改善しているのでしょうか? 今回は、経済情勢のうち、一般労働者の生活に直結する雇用と賃金について分析し、「アベノミクスの成果」を検証してみます。 ※1 タイトルを「「アベノミクスの成果」を検証する:『就業者数の増加は「アベノミクスの成果」ではなく『高齢世代の人口動態の結果』である。』『実質賃金は民主党政権時より4%下がった。』」から変更しました。2017年10月9日 ※2 「@yoma_kenichi さんから「22歳人口-65歳人口の推移」 のグラフ」を追記しました。2017年10月9日 続きを読む
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広夢 @scidreamer

今から連続ツイートを始めます。テーマは「アベノミクス」についてです。

2017-10-06 18:22:40

「アベノミクスの成果」は真実か?

広夢 @scidreamer

安倍晋三首相が経済政策「アベノミクス」の「実績」を誇示している。確かに、例えば雇用情勢は改善しているように見える。しかし、安倍首相ら自民党も、あるいはその支持者も、アベノミクスのどの政策がどのような因果で雇用を改善したのかを説明していない。

2017-10-06 18:23:43
広夢 @scidreamer

安倍政権が「アベノミクスの成果」と呼ぶ経済情勢の改善は本当に「アベノミクスの成果」なのだろうか?そもそも本当に経済情勢は改善しているのか?今回は、経済情勢のうち、一般労働者の生活に直結する雇用と賃金について、特に就業者数と実質賃金の二つの指標に絞って分析を加えてみる。

2017-10-06 18:24:43

雇用:就業者数の増加は「アベノミクスの成果」ではなく『高齢世代の人口動態の結果』である。

広夢 @scidreamer

まずは雇用である。就業者数について考える。 就業者数のデータとして、総務省統計局の「労働力調査(基本集計)平成28年(2016年)平均(速報)結果の要約」 stat.go.jp/data/roudou/so… の「表1 年齢階級別就業者の推移」(p.1)を参照しよう。 pic.twitter.com/NdwFANPukR

2017-10-06 18:25:55
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広夢 @scidreamer

この表を見ると、安倍政権が発足しアベノミクスが始動した2013年から2016年にかけて、確かに就業者の総数の対前年増減は41万人、40万人、25万人、64万人と増えていることが分かる。しかし、これだけで判断してはいけない。15歳~64歳の部分を見てほしい。

2017-10-06 18:26:43
広夢 @scidreamer

15歳~64歳(「現役世代」と呼ぼう)の就業者数を見ると、2014年、2015年には対前年で-6万人、-24万人と減っている。ではなぜ就業者の総数が増え続けていたかというと、65歳以上(「高齢世代」と呼ぼう)の就業者数が両年で45万人、49万人と大幅に増えていたからである。

2017-10-06 18:27:43
広夢 @scidreamer

改めて表1を眺めながらこの間に起こった経済イベントを思い返してみると、現役世代の就業者数はその時々の経済動向の影響を受けやすい傾向が見えてくる。しかも経済ショックの影響は1年遅れて負のピークを示すようだ。

2017-10-06 18:28:43
広夢 @scidreamer

経済ショックの影響が1年遅れで表れている例 例1)2008年9月リーマンショック→2009年現役世代の就業者数-106万人 例2)2011年3月東日本大震災→2012年現役世代の就業者数-43万人 例3)2014年4月消費増税→2015年現役世代の就業者数-24万人

2017-10-06 18:29:43
広夢 @scidreamer

一方、65歳以上の高齢世代の就業者数の方は経済動向とは別の要因が働いているようだ。そのヒントとなるのは内閣府の資料の「3-3:生産年齢人口の減少」 www5.cao.go.jp/keizai-shimon/… の「生産年齢人口(15~64歳)の伸び率」(p.1)のグラフである。 pic.twitter.com/NA4ltDbRR1

2017-10-06 18:30:44
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広夢 @scidreamer

「生産年齢人口」とは15歳~64歳の人口のことである。「生産年齢人口が減る」ということは、基本的には15歳になる人の数が65歳になる人の数を下回ることだと考えても問題ないだろう。したがって、生産年齢人口の動向は高齢世代と子ども世代の人口動態によって決まると言ってもよい。

2017-10-06 19:19:56
広夢 @scidreamer

子ども世代はしばらく少子化傾向がなだらかに続いていて大きな変動はない。一方、高齢世代の方は年によって大きな変動が見られる。というのは、現在の高齢世代というのは戦中・戦後の社会が大きく変動する時期に生まれたからである。このことは人口ピラミッドを見るとよく分かる。

2017-10-06 19:20:17
広夢 @scidreamer

日本の人口ピラミッドとして、総務省統計局 千野雅人氏の「「人口ピラミッド」から日本の未来が見えてくる!? ~高齢化と「団塊世代」、少子化と「団塊ジュニア」~」 stat.go.jp/info/today/114… 「図2 日本の人口ピラミッド」を見てみよう。 pic.twitter.com/Tdjj8dX2gr

2017-10-06 19:20:39
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広夢 @scidreamer

「日本の人口ピラミッド」を見ると、1945年頃の「終戦前後の出生減の世代」や1947年から1949年の第1次ベビーブームに生まれた「団塊の世代」が高齢世代の人口動態に大きな影響を与えている。「団塊の世代」の最初の年(1947年)生まれは2012年にちょうど65歳を迎えている。

2017-10-06 19:21:04
広夢 @scidreamer

「終戦前後の出生減の世代」や「団塊の世代」は先に示した「生産年齢人口(15~64歳)の伸び率」に大きな影響を与えたようで、2009年までマイナスが拡大していたのが、2010年・2011年には一旦プラスの方に大きく転じ、2012年~2014年には逆に大きなマイナスとなっている。

2017-10-06 19:21:21
広夢 @scidreamer

そして、このような高齢世代の人口動態の傾向と最初に示した65歳以上の高齢世代の就業者数とはかなり連動している。2009年から2010年、2011年にかけて高齢世代の就業者数の対前年増減は12万人から5万人、1万人まで急減し、2012年以降は24万人から40万人代まで急増した。

2017-10-06 19:21:34
広夢 @scidreamer

このように高齢世代の人口動態の変動が近年の就業者数に大きく影響している。民主党政権時代と安倍政権時代の雇用情勢の明暗を分けたのは「アベノミクスの成果」ではなく『高齢世代の人口動態の結果』と考えられるのである。

2017-10-06 19:21:47
広夢 @scidreamer

一般的に考えて、高齢世代は経験の豊富さから就業を続けやすいが、知力・体力の衰えから労働量は減らすだろう。一方、これから就業する若者世代は経験が浅い分、生産性はまだ低い。したがって、少子高齢化が進む社会では、就業者数が増えていく一方で、人手不足状態は続くことになると考えられる。

2017-10-06 19:21:59
広夢 @scidreamer

このような少子高齢化社会の人手不足が、高齢世代の人口動態によっては大きく加減速する。民主党政権時は「終戦前後の出生減の世代」が高齢世代となる減速時期と偶然一致し、一方、安倍政権時は「団塊の世代」が高齢世代となる加速時期と偶然一致したことが両者の就業者数の明暗を分けたのだろう。

2017-10-06 19:22:20
広夢 @scidreamer

以上のように考えると、就業者数に代表される雇用情勢について「民主党の暗黒時代」だとか「アベノミクスの成果」だとかと吹聴することは誤りだと言えよう。少子高齢化社会で雇用情勢が改善するのは必然であり、だとすれば『高齢世代の人口動態』が雇用情勢の大きな変動要因となることも必然だ。

2017-10-06 19:22:34
広夢 @scidreamer

昨今の雇用情勢の改善は「アベノミクスの成果」ではなく『高齢世代の人口動態の結果』と考えられる。詳しく言えば、『少子高齢化社会における人手不足傾向』と、その傾向を加速した『団塊の世代の高齢世代化』が近年の雇用情勢の改善の大きな原因と考えられる。この傾向自体は今後も続くだろう。

2017-10-06 19:22:51

賃金:実質賃金は安倍政権下の『円安による輸入物価上昇』と『消費増税』で民主党政権時より4%下がった。

広夢 @scidreamer

雇用について長い話が続いたが、次は賃金についてである。それでは、実質賃金を見てみよう。データとして衆議院財務金融委員会 前原誠司氏の「5 賃金・可処分所得の推移」 maehara21.com/uploads/2016/1… のグラフを見よう。このグラフは大変分かりやすい。 pic.twitter.com/tuHhYnmFf4

2017-10-06 19:23:22
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広夢 @scidreamer

グラフを見ると、「実質賃金指数」は、 2013年3月 99.3 2014年3月 97.6 2016年8月 95.3 となり、実質賃金は安倍政権下で約4%下がっている。「景気が良くなっている実感がない」という人が多いと思うが、事実、私たちは貧しくなっているのである。

2017-10-06 19:23:37