きねことまゆのKSS

クソリプショートストーリー
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まゆ @yooococho

@asmufin 」そーちゃんはちらっと俺を見て、何も言わなかった。でも、拒否られたわけじゃない。いいってことだと思って、俺はそーちゃんの後を追った。「うまかったー。なー、次は…」「はい」俺の言葉を遮って、そーちゃんが手を突き出す。手には千円札が二枚握られている。拳を胸に突きつけ

2016-05-22 19:51:22
シャケ @mielknc

@yooococho て、辛そうな顔で俺を見上げる。「なに、これ」「食事代」「そんなんいいって…」「環くんは、いつもそういうけどやっぱり払う。フェアじゃない」ぐしゃとお札がさらに握り込まれた。俺が無言でいると、そーちゃんはさらに顔を歪めて半ば泣きそうな声で続けた。「僕がバイトだか

2016-05-22 20:28:15
まゆ @yooococho

@asmufin ら、馬鹿にしてるんだろう」「え…」「確かに学生だし、バイトだから、環くんみたいに一日中働いてるわけじゃないし、お金だってそんなに余裕ないよ。でも、人にたかってものを食べるほど落ちぶれてない」俺は呆然とそーちゃんの冷ややかな言葉を聞いていた。ちがう、そうじゃない。

2016-05-22 21:49:20
シャケ @mielknc

@yooococho けど、本当の理由を言ったら、これ以上の冷たい言葉を聞くことになるかもしれない。弁当屋に通うことすらできなくなるかもしれない。「何か、言ってくれ」そう言ったそーちゃんの声は冷たいというより悲しそうだった。無言が肯定に思えたのかもしれない。そーちゃんが悲しいのは

2016-05-23 07:08:17
まゆ @yooococho

@asmufin 何よりも嫌だ。俺はそーちゃんの肩を掴んだ。「ちげーよ!俺、そうじゃなくて…一回こっきりじゃなくて、あんたともっと飯食って、話したくて、あんたのこともっと知りたくて…かっこいいとこ、見せたくて…その、つまりー…」口ごもる。たった二文字なのにこんなに喉に引っかかる。

2016-05-23 08:31:14
シャケ @mielknc

@yooococho そーちゃんが、じっと俺の事を見ている。もう悲しそうではないけれど、驚いた表情で、俺だけを見てる。言わなきゃ。たとえ、弁当屋に通う事ができなくなったとしても、そーちゃんにもう辛い顔させたくない。「…つまり、あんたのことが、好き…好きなんだよ。だから、もっと一緒

2016-05-23 08:37:56
まゆ @yooococho

@asmufin にいたい。友達じゃ、足りない。好き、なんです…壮五さん」そーちゃんをまっすぐに見据えて言いきると、そーちゃんは驚いた顔のまま、数秒間固まっていた。何時間にも思えた数秒間を経て、街灯に照らされたそーちゃんの顔はみるみるうちに赤くなる。それから小さな唇が、震えながら

2016-05-23 08:48:07
シャケ @mielknc

@yooococho 言葉を紡ごうと開かれる。「た、環くんが…僕を、…」「うん。好き。すげー、好き」自分の服の裾を掴んでいるそーちゃんの手に、自分の手を重ねる。顔を真っ赤にしているそーちゃんの顔を覗き込むようにして訊ねる。「…そーちゃんは、俺のこと、好き?」びくり、とそーちゃんの

2016-05-23 08:54:18
まゆ @yooococho

@asmufin 肩が跳ねて、唇を噛む。「…環くんに好きって言われて、僕、嬉しかったんだ。ドキドキした。今までも、環くんといる時間が楽しくて幸せだった。どうしてかわからなかったけど、たぶん」そーちゃんは顔を上げて潤んだ瞳を細めて俺を見上げた。「君のことが、好きだからだよね?」

2016-05-23 09:02:51
シャケ @mielknc

@yooococho そーちゃんが俺の手を握り返してくる。頬を真っ赤にしたまま、そーちゃんはふわと笑ってみせた。「…うん。好きです、四葉環くん。僕も、君が大好きです。…僕と恋人になってください」今まで、色んな笑顔のそーちゃんを見てきたけれど、一番きれいだ。「ほ、ほんとう?ほんとに

2016-05-23 09:12:19
まゆ @yooococho

@asmufin 俺のこと好き?」「嘘でこんなこと言わないよ」「…っそーちゃん!」俺は思わずそーちゃんを抱きしめた。街の、往来で。じろじろと冷ややかな視線が刺さるのに耐えられなくなって、そーちゃんが全力で俺を引き剥がす。「環くん!みんな見てるから」「えー、キスしたい、だめ?」

2016-05-23 09:36:03
シャケ @mielknc

@yooococho 「みんな見てるって!」「見てなかったらいいの?」抗議するそーちゃんの揚げ足をとって訊くと、そーちゃんがさらに顔を赤くして突っぱねる腕の力を弱めた。「それは、…えっ、と…」急に詰め寄りすぎたかな、気の毒なくらい顔を真っ赤にして言葉を考えている。「…じょーだん!

2016-05-23 10:18:31
まゆ @yooococho

@asmufin 帰ろ。送るからさ」そーちゃんは小さく頷いて、俺の右隣を歩いた。いつもと同じ手が触れそうで触れない距離を歩いているのに、今日からはそーちゃんは友達じゃない。恋人だ。そう思うと、右半身が内側からじわじわと熱くなる。微妙に照れくさい空気でぽつりぽつりと話すうちに目的地

2016-05-23 13:36:05
シャケ @mielknc

@yooococho に到着してしまった。俺としては、ほんとうはこのあとそーちゃんちに上がったりなどしたいのだけれど、キスしようとしただけで狼狽える相手に、さすがにそんなことは言えなかった。いつかでいい、これからはなんの用がなくても会えるんだから。「…んじゃ、そーちゃん。俺、帰る

2016-05-23 14:16:37
まゆ @yooococho

@asmufin から」学生にしては高級そうなマンションの前で、俺とそーちゃんは向かい合った。「うん」頷くくせに、そーちゃんはロビーの扉をくぐらない。名残惜しいのは、俺だけじゃないと思っていいのか?でも気の利いた言葉は見つからなくて、俺は「じゃあおやすみ」と残して踵を返した。「環

2016-05-23 21:05:24
シャケ @mielknc

@yooococho くんっ」そーちゃんが俺の背に声をかける。なに、と訊ねようとしてぐいと腕が引っ張られる感覚。びっくりしたまま、立ち尽くしているとそーちゃんが顔を近づけてきた。ふに、と唇にあたたかく同じものが触れた。「…え、なに。今、そーちゃん―…」「じゃ、じゃあねっ、環くんっ

2016-05-23 21:10:13
まゆ @yooococho

@asmufin おやすみ!」ぱっと俺から離れたそーちゃんはちょうど待機していたエレベーターに乗り込む。取り残された俺は呆然と立ち尽くし、手からバッグが滑り落ちる音ではっと我に返った。やわらかな感触が残る唇におそるおそる指で触れて、にわかに顔が熱くなる。そーちゃんに、キスされた。

2016-05-23 21:18:01
シャケ @mielknc

@yooococho そーちゃんも、キスしたかったんだ。勢いで告白してしまったから、流されてオーケーしちゃったのかと思っていたけど、今のそーちゃんは俺のこと好きで仕方ないのかなって思える。じゃなかったら、あんな可愛い顔で、キスなんて仕掛けてこない。キスを我慢できないくらい、俺の事

2016-05-23 21:27:10
まゆ @yooococho

@asmufin 好きなんだ。スマホを取り出して耳に当てた。6回めのコール音のあと、ようやく繋がる電話。受話器の向こうにいる相手は無言だ。俺は構わず口を開く。「そーちゃん、大好き」しばらくの間を空けて、「僕も」とかすかに震える声が返ってくる。幸せ。足取り軽く、帰路に着いた。

2016-05-23 21:40:37
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