ゴリラ爆発#2 追撃のゴリラ◆3

それほど強いわけでもないビームを乱射するゴリラの置物。古道具屋に騙されて買ったら、これが大迷惑! 騎士団は大混乱!  このゴリラを解析してくれる会社があるという。そこへ向けて、いざゆけ! ザリガニ騎士団! 全80ツイート予定 続きを読む
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減衰世界 @decay_world

_ゴリラ爆発#2 追撃のゴリラ

2016-03-08 17:30:21
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_馬車の隊列は猛スピードで荒野を駆ける。追っ手の速度には勝てないことは分かっているが、それでもできる限り飛ばした。  びゅんびゅんと景色が流れていく。灰色の岩だらけの荒野に、だんだんと緑の草木が増えていく。もうすぐだ。 51

2016-03-08 17:36:24
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「ごめん……こんなゴリラに巻き込んで」  バルメルは自分の責任を痛感する。しかし、金髭のエリートは笑い飛ばしてくれた。 「いいじゃないか。吾輩たちは戦士であり、騎士である。戦いこそ、我らの住処。戦場こそ、我らの安寧の場所。トラブル、諍い、どんとこいだ」 52

2016-03-08 17:41:28
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_金髭はクロスボウを点検する。金髭が残らなかったのには理由がある。アーティファクトのクロスボウは戦車を破壊する火力を持つが、連続発射に耐えられない。 「ゴリラに巻き込まれて何が起こった? 戦いはいつものこと。でも、バカンスは……いつものことじゃない。嬉しいよ」 53

2016-03-08 17:45:37
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_荒野の景色が塗り替わっていく。いつも見ていた灰色の大地が、次第に緑豊かな草原へと変わっていく。遠くに、森も見える。  金髭は続ける。 「いつも同じものを買う、同じ飯を食う、同じ場所にいる。それもいいが、たまには変化も求めたくなる」 54

2016-03-08 17:49:29
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_荒野のガタガタの路面が、街に近づいて整備されたセラミックプレートの街道へと変わっていく。森の奥に……いくつもの塔が見える! 「たまには馬鹿なもの買って、変なもん食って、バカンスに行くのである。そういう生き方こそ……荒野に住まうものの生き方である。楽しいだろう」 55

2016-03-08 17:54:23
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「そうだね……忘れていたよ。僕も、誇り高きザリガニ騎士団の一人、荒野に住まう騎士の一人でもある」  馬車の中で、クロスボウを構えるバルメル。蛇のレリーフの刻まれたそれは、愛用の武器。狙うは後方。滑るように追いかける騎馬兵がいくつも見える。 56

2016-03-08 17:58:41
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「僕は……蚤の心臓で……獅子の眼を狙う」  クロスボウの発射音。牽制だ。追っ手の騎馬がゆらゆらと揺れて、それを躱す。 「ははっ、楽しいや」 「それでこそ、ザリガニ騎士団! 何故ならば、我らザリガニ騎士団は……」  馬車の全員が、にやりと笑う。 「中原最強!」 57

2016-03-08 18:03:42
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_今頃戦車を引き付けるために残った部隊は苦戦しているだろう。補給もなく、援軍もなく、戦車という強大な敵を相手にしている。  でもきっとウジウジ悩む必要はないのだ。余計な気遣いも必要なく、彼らは戦いを楽しんでいる。後で酒やごちそうを振舞えば、喜んでくれるだろう。 58

2016-03-08 18:09:30
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_街が見えたと思ったら一瞬だった。街の大通りに馬車を止めて、ゴリラを抱えて馬を走らせる。ペンネ騎士団の目的はゴリラだ。馬車には目もくれないでゴリラを追う。  バルメルはゴリラを抱えて、金髭と、技師だけを連れていく。他の仲間には援護してもらう。 59

2016-03-08 18:14:13
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_目的の廃棄物処理社が見えてくる。追っ手は馬を乗り捨て、短距離テレポートを連続使用してこちらの距離を詰めてきた。手段を惜しまず本気で来ている。街の自警団は動き出しているのだろうか。間に合うか、どうか……しかし、事態は意外な方向へと転がり始めていた。 60

2016-03-08 18:19:11
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_ゴリラ爆発#2 追撃のゴリラ(了) #3 ゴリラバカンス へつづく

2016-03-08 18:19:41
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【用語解説】 【塔】 魔法使い用の生産設備。塔の構造は大地から湧き出す魔力を集中させ、濃い魔力密度を生み出すようにできている。一歩間違えばダンジョンだが、魔法使いの管理下にあるうちは、いくつもの大型魔法物品を稼働させる魔法工場として安全に機能する。たまに暴走する

2016-03-08 18:25:57