- tasobussharima1
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肆捌空海は、寂滅の中に居た。誰かに呼ばれたような、誰かを呼んだような気がしたが、もう覚えてはいなかった。目の前には壱参空海が倒れている。背中の仏舎利はカタカタと振動を続けている。 彼の『奇跡』は続いている。色を抜き取ったような白い雪原。舞い上がる灰めいた雪。
2016-03-07 21:04:08とひあえず現実に戻ってきたはいいが奇跡の暴走は続いている……というかそもそも奇跡の暴走によって何が起こったのか? #徳パンク
2016-03-07 21:07:07モノトーンで染め上げられた寂滅の世界は拡大を続けている。仏舎利の徳エネルギーと、そしてそれを持つ肆捌空海を動力源として。 得度兵器の攻撃は、防ぐことが出来たようだ。いや、徳エネルギーで動くあの兵器は、この空間に近付くことすらできないだろう。
2016-03-07 21:08:03景色が朽ちはじめる。肆捌空海の袈裟もまた、ボロボロに崩れ始める。肆捌空海は、思考する。 (ここは、徳無き荒野どころの話ではない。あらゆるものが生と存在を終えた、止《し》の世界だ) 『奇跡』を絶つには、功徳の源を絶つしかない。 (だが仏舎利を、持ち出せば)
2016-03-07 21:12:05寂滅の世界……得度兵器に対する挑戦……徳エネルギーを消滅させる空間だろうか?しさしそうなると体内の徳が枯渇すると死ぬ空海達も危なさそうだけど #徳パンク
2016-03-07 21:12:36暴走状態にある『奇跡』の徳供給源は仏舎利だ。それを持ち出せば、 (奴は) 暴走した『奇跡』に功徳を瞬間的に喰らい尽くされ、壱参空海は死に至るだろう。だが、このままでも。時間は無い。壱参空海の奇跡は周辺空間から徳エネルギーを吸い上げ続けている。吸い上げ続けた徳で『奇跡』は拡大する。
2016-03-07 21:16:04「空間から徳エネルギーを吸い上げる」奇跡が人を救うから新たに徳が積まれるような徳エネルギーの回生サイクルとは別に、インターミッションのあの空間から無理矢理徳エネルギーを吸い出している? #徳パンク
2016-03-07 21:19:52「起きろ!」 それでも、肆捌空海は壱参空海を揺り起こそうとする。 唯一確実な手段は取れない。そんなことをしてはならない。してはならないのだ。生命を天秤にかけるが如き真似を。 「もう仲間を失うのは沢山だ!」 あの戦争が始まって以来、幾人もの仲間を失った。
2016-03-07 21:20:08残りは僅か七人。そのうちの五人を捨て置いてきた。彼らは既に、引き返せぬ道を歩み続けてきた。 「だから、目を覚ませ!」 反応は無い。彼は己の決断を悔いた。仏舎利を持ち出さなければ、こんなことにはならなかった。大僧正は正しかった。己の傲慢と欲が故に、命が失われようとしている。
2016-03-07 21:24:01最低でも48人はいたであろう空海達が、今では奥羽岩窟寺院都市にいる人数としては残り7人だっけ?世界を滅ぼしかねない奇跡の暴走を確実に停止させるよりも仲間の命を優先してしまう。これは果たして徳が低いのか高いのか、それを決めるのは一体誰なのか…… #徳パンク
2016-03-07 21:24:54「…………死なせはしない」 彼は仏舎利カプセルをその場に置き去りにし、代わりに壱参空海を担ぎ上げた。意識を取り戻せば、まだ望みはあるやもしれない。そのためには、僅かでも仏舎利を遠ざける他思い付かない。この身が何処まで持つかはわからない。それでも、命を切り捨てることだけは。
2016-03-07 21:28:01さすがに得度兵器の支配圏に仏舎利背負ってたった二人で突っ込むのは勢い任せすぎたなぁ……しかし今それを悔やんでも仕方がない #徳パンク
2016-03-07 21:28:06仏舎利カプセルは得度兵器の手に渡るだろう。だが、それよりも大事なものがある。 半ば引き摺るような態勢になりならがらも、壱参空海の肉体に肩を貸し、歩み始める。どんな時であろうと、命を切り捨てることは、あってはならないのだ。 だがその儚き決断の代価は、果たしてどれ程のものになるのか。
2016-03-07 21:32:08やむなき判断ではあるが、結果としてただ得度兵器に仏舎利を渡しただけになってしまった。不作に悩む農家のおじいさんめいた田中ブッダ氏の表情が少しだけ和らぐことになるわけだが…… #徳パンク
2016-03-07 21:35:45小さな島国の北で起こった小さな綻びは、水面へ落ちた小石の如く波紋を拡大させる。 「つまりは矛盾だろう」 データを見るなり、そう田中ブッダは看破した。 「すべてを滅する異能と、何者にも滅されぬ断片が衝突した結果だ。外からの介入無くば、永遠に互いを食らい続ける。いわば裸の『徳』異点」
2016-03-07 21:36:02新たに出現した領域……『異界』の周囲には北部防衛線から抽出された得度兵器が待機し、包囲網を構築している。物理的解脱を経ることのない寂滅の到来。それは、彼らの存在意義そのものを脅かす事項だ。 「信じ難きは、それが人の手によって為されたことか」
2016-03-07 21:40:07