黄昏のブッシャリオン▲第五章▲

ブッシャリオン第四章です。
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黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

▲黄昏のブッシャリオンの本日の更新は総集編です。▲

2016-02-19 14:06:26
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

カタカタカタカタ…… 『※この物語はフィクションです。実在の人物・聖人・宗教団体ならびにその教義などとは関係ありません。』

2016-02-19 21:00:18
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

▲『黄昏のブッシャリオン』▲総集編

2016-02-19 21:04:05
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

『今よりも遥かな未来。けれど浄土は更に遠く、滅びは遥かに近い黄昏の時代。 徳に溢れた楽園は潰え、地には人類を救済せんとする無人機械が蠢く末法の世。 それが、この物語の舞台だ。

2016-02-19 21:08:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

旧・ニホン国。旧・タティカワ実験都市。 嘗ての未来都市の青写真は、今や徳を棄て生きる者達が集まる吹き溜まり。ここから、第一の物語は始まる。 ガンジーとクーカイ。二人の採掘屋。嘗ての文明の遺物を漁り、墓を暴くことを生業とする者達。旧文明の遺産なくして、今の人類は生き延びられない。

2016-02-19 21:12:09
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

徳エネルギー文明は、世界を変えた。善行をエネルギーに変える技術は、僅か百年足らずで世界を徳の高い理想郷へと作り変えた。 しかし、全人類が徳を積み始めた結果、その理想郷はパンクした。徳カリプス。徳エネルギーの暴走によって、人口の7割が成仏してしまい、文明は崩壊した。

2016-02-19 21:16:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

それでも、人類は徳エネルギーを捨てることができなかった。 徳カリプスより十四年。今や、街に残された僅かな蜘蛛の糸すら無慈悲に絶たれた。街を生き延びさせるため、新たな徳エネルギーを求め、ガンジーとクーカイは荒野へ旅立つこととなる。 ……だが、徳無き荒野は決して平坦な道のりではない。

2016-02-19 21:20:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

得度兵器。全人類を出家(得度)させ、解脱へ導くことを絶対命令として刻み込まれた自律機械群。徳無き荒野に蠢く、アフター徳カリプス世界の地上の覇者。人類救済のため、その姿すらも偶像へと近づけた巨大兵器。 徳エネルギーによって稼働する彼等は、自らのエネルギー源としても人類を必要とする。

2016-02-19 21:24:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

荒野を乗り越え、ガンジーとクーカイが至ったのは徳に溢れた街であった。 文明が崩壊して尚、徳カリプス以前の暮らしを続ける人々。しかしそこは、街そのものが得度兵器のエネルギープラントだったのだ。 紆余曲折の末、街の信仰を集める得度兵器と交戦。辛うじて破壊するガンジーとクーカイ。

2016-02-19 21:28:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

だが、得度兵器の発信した救難信号を受信し、更に三体増援が現れる。しかし、救難信号を聞き届けたのは得度兵器だけではなかった。 嘗ての徳エネルギー社会の影たる、肉体に徳遺物を埋め込んだ改造人間。舎利ボーグ。ノイラを名乗る舎利ボーグの女は、またたく間に三体の得度兵器を破壊した。

2016-02-19 21:32:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

得度兵器から徳エネルギーのジェネレータを回収し、ノイラと街の娘……ガラシャを仲間に加えて帰路につくガンジー達。ひとまずの安寧を取り戻した彼等の心には、微かな希望が宿りはじめる。 だがその頃、遥か南極では1つの転機が訪れていた。

2016-02-19 21:36:05
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

徳エネルギー(ブッシャリオン)の始まりとなった、覚者の痕跡。無限の徳を放ち続ける徳遺物、仏舎利。 そして、得度兵器に手を貸す、嘗ての徳エネルギー研究の権威。半身を機械化し、己の徳の力のみで生き続ける怪物、田中ブッダ。 この2つが出会う時、大いなる仏舎利争奪戦の幕は上がる』

2016-02-19 21:40:10
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

フィルムが、止まる。 「これは、徳に背を向け、救いを擲ち、それでもみっともなく足掻き続ける者達の物語だ。僕は、そう言った」 青年は言葉を紡ぐ。 この先に続くのは、徳に身を捧げ、救いを求める者達の物語。 「だからこれは、『彼等』の物語ではない」 だがそれでも、人は救いを求め続ける。

2016-02-19 21:44:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

▲総集編おわり▲ 黄昏のブッシャリオン・第五章 ヴァーチャス・ウォー へ続く

2016-02-19 21:52:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

▲『黄昏のブッシャリオン』▲第五章・第三十九話「北の戦場」

2016-02-21 21:00:18
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

徳エネルギー革命以降、科学界と宗教界は急速に接近した。 宗教の思想哲学が、無遠慮に科学の現場へと持ち込まれるようになった。数学者が宗教家になり、高僧が徳エネルギー研究者になる。そういったことも珍しくはなくなった。一部はカルト化し暴走することもあったが、流れは止まらなかった。

2016-02-21 21:04:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

宗教に科学のメスが入ったのか、或いは科学が宗教に取り込まれたのか。それはもう誰にも分からなかった。だが、その流れに乗ったのは、密教も例外ではなかった。 密教とは、悟りの方法を伝えるための仏教である。チベット仏教とも近い。この国における密教の祖の一人は、空海という名の僧侶であった。

2016-02-21 21:08:03
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

彼は、その著作の中で『即身成仏』を密教の教えの1つとして掲げている。即身成仏とは、ソクシンブツとは異なり、生きながらにして仏となることである。 故に、少なくともその末裔達にとって。肉体の死を伴う得度兵器、徳エネルギー兵器による成仏は、受け入れ難いものであったことは確かだった。

2016-02-21 21:12:08
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

------------ 「後続はなし。単機行動の様子」 「『仏敵』の残骸はいかがいたす?」 「タグを設置して放置する。行動目的の解析が先だ」 「承った」 坊主頭の男は、携帯端末を叩く。戦闘目的の得度兵器の単独行動。普段とは違いすぎる行動パターンだ。何か目的があるに違いない。

2016-02-21 21:16:06
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

「経路予測。さっきの雪崩の発生地点と重なるな……」 「仲間の亡骸の回収であろうか」 「他には思い付かない。何かを探していたことは確かだ」 赤い雪原に散らばる戦闘型得度兵器、タイプ・タモンの残骸。仏法の守護者、四天王の一体を模した仏ならざる機械は、朽ちゆく屍を晒す。

2016-02-21 21:20:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

「雪の下の捜索は、今は困難」 「今日のところは戻るぞ。足跡を消すのを忘れるな」 「心得た」 二人の坊主頭の男達は、踵を返す。だが、背の低い方の男はふと立ち止まり、残骸の方を見遣る。 「如何された」 「……あの機械にも、死はあるのだろうか」 「さて……」

2016-02-21 21:24:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

答えのない疑問だ。 今またひとつ、仏を騙る存在(もの)を彼等は破壊した。さて、これは殺生なのだろうか。 機械は仏ではない。機械は命ではない。機械は徳を積むことはない。 だが、それでも答えは出ない。 「これもまた、無明ということか」 割り切ることのできない何かがある。

2016-02-21 21:28:02
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

或いは機械仏すら、救いを求めているのだろうか。 この雪の下には、彼等と同胞達が破壊した得度兵器の亡骸が多く埋まっている。その存在が、このようなことを考えさせるのかもしれない。 「無記という言葉もござる。考え過ぎは毒ですぞ」 「そうかもしれない」 二人は、雪の斜面を登り始める。

2016-02-21 21:32:04
黄昏のブッシャリオン @tsbsrion

得度兵器の勢力圏は、大きく海に面した半円形をしている。 ここはその北の端。高空からの目も届かぬ山岳地帯の中。そこに、彼等の街はあった。 奥羽岩窟寺院都市。徳カリプス以前に建造されたシェルターのひとつ。山脈に掘り抜かれた横穴に、小規模ながら一つの都市が丸ごと収まっている。

2016-02-21 21:36:05
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