- R_Tachigawa
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西暦2XXX年、何が面白いか解らなくなってしまった人類は、AIに「面白い」を決めて貰うようになっていた…… 「新刊ある?」「ありますとも。これなんかどうです?AI判定で星5つなんですよ」「じゃあそれで」「まいど!」
2016-03-13 10:42:15「ところで〇〇先生のは?」「あ~~あの人ですね。アレはもうだめですわ。今度の新刊の評価は星1つだったんですよ。ウチじゃ扱うのやめました」「星1つ?そんなバカな」「でもAIはそう言ってるんですよ」「あんなに面白いのに」「新刊はそうなんでしょかねぇ」
2016-03-13 10:44:21「そんなこと言っても新刊を読まなければわからないだろう。私はあの人の出した新作が欲しいんだ」「そんなこと言われましても旦那……へへへ、これも商売でして、売れないものは入荷しないのは当たり前でしょう。そっちのほうが利益が上がるんだから。ウチじゃない店で買ってくださいよ」
2016-03-13 10:46:00「あ~うちでも扱ってないですね」「これだけ店を回って、結局見つからないのか……」「そんな顔しないでください旦那。電子書籍版があります」「俺、電子書籍持ってないんだよなぁ……」「うわぁ、原始人だ」「失礼だな君は」
2016-03-13 10:51:15「でも、電子書籍も万能ではないんです。出版のために校正したり、なんだり、結局お金はかかりますから。あまり購入されないと次のチャンスが無くなります」「個人で出したら?」「そういう人も居ますけれど……今じゃみんなAIで審査しますから、星がつかない人なんてのは登録すらできないんです」
2016-03-13 10:53:24「星の数で売上が何倍も変わるなんて話もありますから、星をいかに稼ぐか、SO対策なんてのも注目されているそうですよ」「なんだいSO対策ってのは」「star optimization。まあSEO対策みたいなものですね」「SEOから分からんな……」
2016-03-13 10:57:31「ちょとまって、それはAIに評価してもらいやすい作品を作ろうという話なの?」「そうですね。オカルトだっていう人もいますけれど」「はあ、いつの間にか逆になっちまったなぁ……いつのまにかみんな自分で考えることをやめちまった。センスも喜びもみんな機械に決めてもらって安心している」
2016-03-13 10:59:07「それが世の中の流れですから。人間が考えることは多すぎます。だから考えなくても良い所を自動化していくんです」「でも、考えなくても良い所とされているそこが、大事なんじゃないか?」「それは人それぞれですよ」
2016-03-13 11:03:49「私もこんな商売やってますけれど、かなり悩みました。最初はAIが面白いと勧めてくるものがどうも面白く思えなかったんです。でもそれって世間の感覚と私の感覚がズレれただけなんですよね。それで、頑張って読んでいくうちに、世間の感覚が解るようになってきました」「ああ……君は……」
2016-03-13 11:09:09「消費者としてなら、別に自分の好きなものだけを追っていればいいんでしょうけれど、供給者としてはそれでは失格なんです」「……俺のような人間はどう生きていけば良いのだ……」「AIのセンスに追いつけるように頑張りましょう」「ああ……」
2016-03-13 11:21:13