ニコニコ動画から時報が消えた日

サイと @sait3110c

男（時報を引き止められなかった。最後まで行くなと言えなかった。…引き止めるのは俺のできることじゃないから）　電話「PPPPP!」　男「誰だよ…姉さん…。…はい、俺です」姉「あ…。その、昼間は怪我…」男「大丈夫だよ」姉「声に元気が無いよ。何かあったんだね」男「なんで分かるんだよ」

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姉「声で分かるよ。だって、」男（好きだから…か。姉さんは俺に恋をした。俺はそれを受け入れられなかった。俺は姉さんの気持ちに耐えられなくて、こうして一人暮らしをしている。出てから、やっと俺たちは普通の姉と弟として接している…）姉「あのさ…」

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悪いのは誰でもない。誰もが分かっていたことだ。罪悪感を感じることで、気持ちに応えられなかったことを償おうと考える、無駄な行為だということを。姉「それじゃ」男「姉さん。ありがとう」姉「…うん。ばいばい」ブツ　男（仕事を始めようか…）

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男（これからもいつものようにこんな夜は作業用BGMを聞きながら繰り返されていくんだろう。後ろを振り向くとそこに彼女の姿は――――もう、ないのだから）ピポピポ♪　男「！ああ、2時の、か」

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時報「――午前、2時…くらいをっ…お知らせ…します…」「時報おかしいｗｗｗ」「時報うぜええええええええ」この声…『これで分かるよ、だって』好きだから。男「時報――」時報「――男さん」彼女は泣きながら続ける。コメントは異常に気付いて祭り状態になっている。

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時報「男さんとの約束守れない」男「ああ」時報「言っちゃダメなこと言います。時を報せるだけなんてダメです。…男さんと一緒にいないと…生きる価値がないんです!!」嗚咽まみれで彼女は叫ぶ。ディスプレイの奥に隠れたぬくもりを俺は、俺は…

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俺は引き止めていいんだ。男「時報!!」行くなって言っていいんだ。男「行くな！どこにも行くな！ずっと俺と一緒にいてくれ！」時報「――はい！」そしてディスプレイは光りだす。昨晩のように時報が出てくる。今度は俺の胸に飛び込んできた。

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その日、ニコニコ動画から時報が消えた――