真・マグロ ~地球最後の日~ #2

時事ネタのマシンガンで蜂の巣にしていくスタイル
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劉度 @arther456

しばらく酒を飲みながら待っていると、姫が戻ってきた。「何やってんのお前!?」「ういーす、先にやってるよー」「ウチは居酒屋じゃねーし!帰れよ!」姫は隼鷹をこたつから引きずり出そうとする。「かえ……あ、あぶなっ、ああもう!」だが、散乱するガラクタが邪魔で、足腰に力が入らない。 48

2016-03-13 23:14:41
劉度 @arther456

諦めた姫は、コタツの向かいに潜り込み、隼鷹を無視して零戦のプラモを手にとった。「あ」これは隼鷹にも覚えがある。北方棲姫が大事に抱えている、零戦のプラモだ。ただし、翼が折れている。姫は接着剤を手に取り、丁寧に翼を貼り付けていく。慣れた手つきだった。 49

2016-03-13 23:17:18
劉度 @arther456

「ほぽぉ……」部屋の隅から声。隼鷹が見ると、山積みされたプラモの影から、こちらを覗く白い影がいる。北方棲姫だ。「あらー、そんなところにいたのかい?」「ぴえっ」「大丈夫大丈夫、怒らないよー」北方棲姫は怯えた様子だったが、しばらくすると影から出てきて、姫の隣にちょこんと座った。 50

2016-03-13 23:19:51
劉度 @arther456

「直る?」「直る。半日乾かして、はみ出た接着剤を削って、後は上から塗り直せば元通りだ」「ぽ……?」やや早口の解説に、北方棲姫は首を傾げる。「要するに直るんでしょ?」「うん」「ほっ……」隼鷹の説明を聞くと、北方棲姫は安心したような溜息を吐いた。それで、隼鷹は気づいた。 51

2016-03-13 23:22:24
劉度 @arther456

「ああ、ひょっとしてほっぽちゃんが出てった理由って、その零戦を壊しちゃったから?」「ぷう……ごめんなさい」このプラモは龍驤があげたものだ。何かの拍子に壊してしまい、怒られると思ったから鎮守府を出て行ったらしい。「いいのいいの。隼鷹にはアタシから言っとくよ」 52

2016-03-13 23:24:57
劉度 @arther456

「そっか。……んじゃあほっぽ。コイツ直したら、お前も帰れよ」「アンタも直してくれて、ありがとうな。えーと」「……集積地棲姫だ」「ありがとなー、シュウちゃん。あー、そうだ。せっかくだから、アンタもウチに来ない?提督にはアタシから言っておくよー」「やだ」即答であった。 53

2016-03-13 23:27:31
劉度 @arther456

「せっかく集めた積みプラモ、全部崩すまでこの船は動かないよ」集積地棲姫はしれっと言い放つ。その為に牛丼を買い込んでいるのだろうか。だとしたら、大和級の引きこもり精神だ。「でもさあ、だったら何でマグロの島に住み着いてるの?」接着剤をつける手が止まった。「は?マグロ?」 54

2016-03-13 23:30:05
劉度 @arther456

「そうそう。アタシらマグロに攻撃されててさー、迷惑なんだよー。やめてくれないかなー」「え、待って何の話?」どうも話が食い違っている。「だからさ、外の戦闘の話!」「外?」集積地棲姫が手を止め、カーテンを開けた。それから外の海で行われている戦闘を、まじまじと見た。 55

2016-03-13 23:32:44
劉度 @arther456

「なんだこれー!?」酷い悲鳴だった。「なにこれ、何かこの船、魔改造されてる!?」「き、気付いてなかったのかい!?だっはっはっは!」隼鷹は、汚い酔っぱらいのように爆笑する。自分の乗っている船が改造されても気付かないほど引きこもっていたのが、おかしくてしょうがなかった。 56

2016-03-13 23:35:24
劉度 @arther456

「ありえねーし!誰がこんなことを……出てくぞ、こんな島出てく!」姫は小屋を飛び出すと、裏手のガラクタの山に腰を下ろした。「ねーちゃんどいてくんね?」「うっせー!下がってろクソガキ!」大人気なく遊び場を占拠した集積地棲姫の背中から、ケーブルが伸び、ガラクタに繋がった。 57

2016-03-13 23:37:58
劉度 @arther456

不意に、島が揺れ始めた。「ほぽっ!?」「なんや!」「地震か!?」「バカヤロー!エンジンかけたんだよ!」プレハブ小屋を中心に、地面がオートロ島から切り離されていく。ガラクタの山かと思われていたのは、彼女とこの島、いや、船を繋ぐための艤装だった。 58

2016-03-13 23:40:31
劉度 @arther456

「ゴボーッ!?何をやっている深海棲艦!?」海の方から声がした。マグロとイルカの一団が進路上に立ち塞がっている。叫んだのは、リーダーらしき老キハダマグロのようだ。「貴様、逃げる気か!?」「逃げるも何もあるか!何勝手に人の船を魔改造してんだ!」 59

2016-03-13 23:43:06
劉度 @arther456

「流れ着いた廃材を聖戦のために使ったのだ!貴様のような臆病者のものではない!」サイバネ改造されたマグロたちが砲を構える!ドゴォン!「グワーッ!?」マグロの一匹が突然、爆発した。「ゴボッ!?」「空襲だ!」マグロたちが見上げると、空に江草隊の彗星が展開していた。 60

2016-03-13 23:45:41
劉度 @arther456

「ウチの目の前でほっぽに手ェ出すとは、エエ度胸しとるやないけ!」龍驤が巻物から式神を次々と発射する。上空には深海棲艦の陸上機がいるが、式神を無視して集積地棲姫の元へ戻っていく。今まで自動操縦で暴れていた無数の陸上機を、彼女が操って収容しているのだ。 61

2016-03-13 23:48:17
劉度 @arther456

「おのれっ、イルカ隊!」「キューン!」イルカたちが熱水銃を発砲!だが、水流は突如地面から盛り上がった土壁にせき止められた。「何ィッ!?」「土剋水。土は水を濁し、せき止めるってね」隼鷹が掲げた札から、魔力の障壁が張られている。「深海棲艦相手には効かない術なんだけど……」 62

2016-03-13 23:50:47
劉度 @arther456

隼鷹は更に式神を繰り出す。現れるのは戦闘機ではなく、陰陽術によって使役される、獣、鬼、霊、神。日本に古来から住み着いた超常存在たち。「マグロとかイルカ相手なら、こいつらがぴったりだね。久々に暴れてきな!」隼鷹の掛け声とともに、式神の軍勢がマグロたちに襲いかかった! 63

2016-03-13 23:53:51
劉度 @arther456

【真・マグロ ~地球最後の日~】#2おわり#3へ続く

2016-03-13 23:54:09