主人公の“欲しいもの”(want/need)と観客の感情との関係

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榎本憲男★『サイケデリック・マウンテン』絶賛発売中!!! @chimumu

んじゃ、久しぶりにストーリーについて、こってりつぶやこうかな。

2016-03-15 22:21:21
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では、観客の感情と主人公の“欲しいもの”について私見を述べます。今日つぶやくことは、あまりシナリオ技術書には書いていないことです。では一応基礎からおさらいしましょう。

2016-03-15 22:22:42
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三幕構成の第1幕は状況設定。実は状況設定のほとんどはキャラクター設定です。キャラクター設定で一番大事なことは“欲しいもの”(want/need)の設定であります。(このへんSFやファンタジーなどは例外になるが……)

2016-03-15 22:23:35
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で、欲しいもの”(want/need)を設定すると、その“欲しいもの”と観客との関係をもう一回見直さなければならない、とこのあいだつぶやいた。では、あなたのストーリーの主人公の“欲しいもの”をチェックしていこう。以下のことを目安にするといいと思う。

2016-03-15 22:24:24
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①主人公が“欲しいもの”は、観客も欲しいものか? ②主人公が“欲しいもの”は、観客も「それは欲しかろう」と納得ができるか?

2016-03-15 22:26:18
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さらに、主人公が“欲しいもの”が違法である、あるいは反社会的である場合は――、 ③観客が、どこかで“欲しいもの”(ヤバイもの)と共振できるか? ④観客は、忌み嫌いつつも、ヤバイものを欲しがる主人公に興味を持てるか? を検証しよう。

2016-03-15 22:27:30
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さらに、その主人公が欲しいもの”を求めることに、観客が自分との重なりを感じられるか? がキモになる。ヤバイものを主人公の“欲しいもの”に設定し、それが観客との共振を呼ぶときは、かなりの傑作になっていると俺は思う。

2016-03-15 22:28:49
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しかし問題は、その数(市場規模)である。例を示そう。まずは、別段ヤバくないものから行く。

2016-03-15 22:29:19
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①の主人公が欲しくて、観客も欲しいと思うものの代表例が金(マネー)だ。公開中の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は男たちが金を掴む話である(合法的な手段を用いている)。また銀行強盗などは反社会的行為であるが、キャラクターの生い立ち、社会的状況などをうまく絡めれば、イケる。

2016-03-15 22:30:15
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①のもうひとつの代表例は生命。これは誰もが絶対に“欲しいもの”である。生命の危険にさらされた主人公がその窮地から脱出する話は、“欲しいもの”が観客に受け入れられやすい。例:『127時間』(ダニー・ボイル)

2016-03-15 22:32:20
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次に②、主人公が欲しくて、観客も「それは欲しかろう」と納得できるもの。これは、競技での勝利などである。たとえ、サッカーに興味がない観客でも、サッカー選手が勝利に向かって努力する話は、うまく出来ていれば、その勝利は観客にとっても“欲しいもの”になる。

2016-03-15 22:32:50
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「エベレストを無酸素で登頂したい、実はオレ60歳だけど」というのも観客が「それは欲しかろう」と納得できるものだ。これは“欲しいもの”の難度が高く、その難しさがなんとなく観客にわかるということで、説得力を持つのである。難度と、難度が伝わりやすいことがポイントである。

2016-03-15 22:34:18
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大体、ジャンル映画の主人公の“欲しいもの”は①か②である。(商業映画というわけではないので注意)

2016-03-15 22:35:07
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逆の例も示そう。主人公にはニッチな趣味があって、「絶滅危機に瀕している蛇の卵でオムレツを作って食べたい」と言ってアマゾンに旅立つ、というのはかなりビミョーである。主人公の“欲しいもの”の難度も、わからないし、欲しいと思う気持ちも観客に伝わりにくい。同好の士の数も少なそうだ。

2016-03-15 22:36:06
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以上が、ヤバくない“欲しいもの”である。一方、“欲しいもの”であるけれどヤバいもの(いいね!とは素直に言えないもの、悪いもの、反社会的なもの)がある。

2016-03-15 22:37:27
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③のケースは、タイトルを忘れてしまったが、確か2000年代初めのイギリス映画で、片田舎のモーテルの女主人が宿泊客に売春をしているという設定の映画があった。金に困っているわけではない。旦那にもとりわけ問題がない。そんなことしてたら、暴力の危険にさらされることもある。

2016-03-15 22:38:43
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どうしてそういうことをするのかははっきり語られない。「もうやめろ」と言われるのだが、「やめられないわ」と彼女は言い返す。この映画には、女性観客の中でも「わかる」という人と「わからない」という人がいた。「わかる」はいたく感動し、「わからない」派は忌み嫌った。

2016-03-15 22:40:04
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しかし、「わかる」派の感動は通常の娯楽映画のそれとは別種の深さを持っているようだった。観客が自分の心の闇の中に、共振する何かを発見できれば、それは娯楽映画とはちがった感動を生む。けれど、そのような観客はそう多くはないと覚悟するべきだろう。

2016-03-15 22:40:56
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④はさらに反社会的なボルテージが上がる例で見ていこう。例えば、『エレファント』(ガス・ヴァン・サント)。これはアメリカの高校での実際にあった銃乱射事件に題材を取っている。主人公たちの“欲しいもの”は学友と学校関係者を撃ち殺すことである。

2016-03-15 22:41:42
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これなどは、かすかな共感さえも見いだすことが難しいし、映画もなぜそんなことをしたのかということを説明することを断固拒否している。しかし、事件は現実に起きたということがある説得力を持たせる。

2016-03-15 22:42:17
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つまり、さわやかなフィナーレではなく、不協和音で終わる現代音楽のように、不可解だけど気になる(だって現に起こっていることだ。あるいは、起こりそうなことだから)、そのような心に打ち込まれた楔のようなものとなる。但し、完全アート作品向け。

2016-03-15 22:42:47
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以上、僕がつぶやいたのは、第1幕のキャラクター設定において、主人公の“欲しいもの”(want/need)を観客の感情との関係で見つめ直すことが大事だということなのでした。おしまい。

2016-03-15 22:44:35