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『2001年宇宙の旅』の真実は本当に知られていなかったのか?

近年「かつての日本人は「2001年宇宙の旅」の背後に判り易いストーリーがあるのも知らず難解だと有り難がっていた」と言われることが多いですが、それが本当に「一般的」だったのか?についての覚書です。
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ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」は1968年公開とは思えない見事な映像で今も観る者を圧倒しますが当時はこの作品に明快な物語があるのを知らず『難解』だと有り難がっていたと言われています。果たして本当でしょうか? pic.twitter.com/pG8BV4MJNw

2016-03-17 13:28:37
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ウディすすむ @woody_susumu

町山智浩の実証主義的な映画解説が表層批評に対するアンチテーゼなのはいいとして、その出発点が「2001年宇宙の旅」だと言われると、同時代に生きて来た者としては大いに違和感がある。町山智浩氏の語る「2001年宇宙の旅」の批評に関する当時の空気は、まるでパラレルワールドのように感じる。

2016-03-16 15:58:43
ウディすすむ @woody_susumu

私は「2001年宇宙の旅」を初公開時には観られず、1978年のリバイバルで観たのだけれど、最初から難解でもなければ謎でもなかった。もうアーサー・C・クラークの小説版を読んでいたから。もちろん小説と映画は多少異なるのだが、映画の背後に明快な意味があることは当時から常識だったと思う。

2016-03-16 16:23:28
ウディすすむ @woody_susumu

「2001年宇宙の旅」の初公開時に、キネマ旬報小松左京・星新一・福島正実(SFマガジン初代編集長)による座談会を掲載し、この中で福島正実が、当時まだ翻訳されていなかったアーサー・C・クラークの小説版を引用し、一見難解な映画の背後に明快な意味があることを、すでに説明しているのだ。

2016-03-16 16:31:20
ウディすすむ @woody_susumu

キネマ旬報での「2001年宇宙の旅」の座談会は「判りやすい」と評判が良かったという。ちなみに、当時のキネマ旬報は、今とは比較にならないくらい(?)映画批評における権威だった。映画批評家やライターが「2001年宇宙の旅」について書くなら、キネマ旬報の特集号くらいは目を通しと思う。

2016-03-16 16:42:42
ウディすすむ @woody_susumu

アーサー・C・クラークの小説版「2001年宇宙の旅」は当時のハヤカワSFのベストセラーの一つだったと思う。あの頃、特にSF好きではない友人や知人の本棚で、よく「2001年」を見かけたものだ。「2001年の真実」は別に英語の文献にあたらなくても、日本語の文庫本で手軽に判明したのだ。

2016-03-16 16:57:46
ウディすすむ @woody_susumu

何が言いたいかというと日本の映画批評は、外国映画の制作された背景を調べることなく印象だけで感想を語っているというのは一般論としては成立しても、「2001年宇宙の旅」をその代表のように語るのはおかしいのではないか?という事だ。むしろ「2001年」は背景の良く知られた映画だった

2016-03-16 17:09:56
ウディすすむ @woody_susumu

当時、映画批評家の石上三登志や作家の橋本治と言った人たちが、アーサー・C・クラークの小説版や制作者の明快な意図は当然知った上で、あえてそれを無視してスクリーンに映し出されものだけから『2001年宇宙の旅』を読み解くという評論に挑み、私たちはその読解知的興奮を味わった

2016-03-16 17:22:09
ウディすすむ @woody_susumu

「2001年宇宙の旅」は確かに難解と言われ、様々な「読解」や「読解の拒絶」が行われて来たけれど、それらは実は明快なSF的ストーリーがあると判った上での知的ゲームのようなものだった。そうした批評行為の是非はまた別に論じられるべきだが、「無知ゆえだった」というのは違うと思う。

2016-03-16 17:44:36
ウディすすむ @woody_susumu

私がこの問題について自分なりに「時代の空気」を記そうと思ったのは、町山智浩の本だけ読んだ若い人が「当時は『2001年』に明快な意味があると知りもせず『難解だ』とか言っていた」と切り捨てるのに、強い違和感を覚えるからだ。いや、こっちはクラークの小説版から入ってるんだよ、と言いたい。

2016-03-16 17:58:52
ウディすすむ @woody_susumu

この話を書いていて、スター・ウォーズ」の初公開時の大騒ぎを、評論家の川本三郎が「幼児退行現象だ」と批判した時に、翻訳家の伊藤典夫(大騒ぎの当事者の一人)が「オレたちがニューウェーブSF論争でさんざん議論したことを、蒸し返されているだけなんだよね」とボヤいていたのを思い出した。

2016-03-16 18:10:05
ウディすすむ @woody_susumu

考えてみたら、これは表層批評をどう捉えるか?にも、直接、通じる話題でしたね。

2016-03-16 18:23:35
ウディすすむ @woody_susumu

スタンリー・キューブリックの映画については「シャイニング」でも「2001年宇宙の旅」と同じ現象が起きていますね。スティーヴン・キングの原作小説を脇に置いて、映画「シャイニング」だけを純粋に読み解こうとする動きがある。キューブリックの映画には、そうした行為を喚起する「何か」がある。

2016-03-16 18:43:57