- tasobussharima1
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22世紀。月面大加速機によって、大統一理論の破綻が観測される。世界人口が減少開始。 23世紀。ブッシャリオン発見。温暖化の影響が深刻化。地球寒冷化予測。惑星改造実験の開始。火星入植。 24世紀。次世代エネルギーを巡る幾つもの提案。徳ジェネレータ完成。徳エネルギー社会の到来。
2016-03-16 21:04:0625世紀。マニタービンの発明。徳エネルギーによる人類最良の時代。あるものの建造を境に、宇宙開発は衰退。 そして、26世紀。徳エネルギーの時代は突如として終わりを告げた。 これが、彼の知る歴史だ。どれ程遡っても、23世紀より以前の世界に徳エネルギーが存在する筈はない。
2016-03-16 21:08:02「……だが、痕跡はあった」 そう呟き、肆捌空海は畑に鍬を振り下ろす。彼は今、一宿一飯の恩を返すべく農作業の手伝いをしているのだ。彼の学んだ歴史が不正確なものである可能性も無論ある。それでも大きく違うというということはあるまい。 あのトラックには、徳エネルギーの微かな痕跡があった。
2016-03-16 21:12:04覚醒者の彼でなくば、発見出来ないであろうごく僅かな痕跡。それは、この『箱庭』を維持する何者かの小さな瑕疵。 「そもそも、私がここへ迷い込んだことも、か」 迷い込んだのか、連れて来られたのか。それはわからない。ただ、何が起こっているのかには、おおよその検討がついた。
2016-03-16 21:16:03誰が黒幕であるのかもだ。そも、『この時代』にそれができる存在は一つしか無い。 「……だが何故」 振り下ろした鍬が硬い音を立てる。畑の中の石にぶつかったようだ。空海は腰を下ろし、石を退ける。 『何故』。何故、このような場所を作ったのか。それだけがわからない。あまりにも非合理的だ。
2016-03-16 21:20:02例え、万能に近い機械と言えど。数百年前の村を作り上げるだけならば兎も角、そこに人を住まわせ続け、あまつさえ彼等の記憶すらも支配するなど。 可能性は幾つもある。機械の思考ならば、そもそも人には理解できないこともあろう。 「考えても仕方の無いことか」 壱参空海も、嘗てそう言っていた。
2016-03-16 21:24:01それでも、この場所で人は生きているのだから。例えここがフラスコの中だとしても。暮らす人々は、確かに己の人生を生きている。彼が今まさに巻き込まんとしている少年もまたそうだ。 「それを壊す権利など……誰にも無い筈だ」 肆捌空海は再び、力強く鍬を振り下ろした。 --------
2016-03-16 21:28:01うわーやっぱり作られた村である可能性が濃厚に #徳パンク ところで「火星入植」という歴史がさらっと出てきたけど、そこに移住した人たちはどうなったんだろう
2016-03-16 21:30:14学校へは、いつも通りの時間に到着した。 十人ほどしか居ないクラスメイトといつも通りに挨拶を交わし、自分の席へ向かう。 いつも通りの教室。いつも通りの授業。いつも通りでないのは、自分の頭の中だけだ。 数百年先の未来。けれど……どこか、覚えのある感覚。まるで、物語の主人公のような。
2016-03-16 21:32:09「そっか、そのもんだな」 まるで、物語の主人公そのものだ。何か特別な存在と出会い、何か特別な秘密を共有し、何か特別な敵と戦う。誰もが一度は焦れる夢だ。 だけど、どうしてだろう。俺の心が、微塵もワクワクしないのは。一時の高揚が収まってしまえば、後に残ったのは不安だけだった。
2016-03-16 21:36:01まだ続く筈だった日常が、ここで終わるような不安。確かだったものが不確かになってしまうような、捉えどころの無い不気味な感触。 「何が、そのもんなの?」 その日に限って、俺は頭が一杯だった。誰かに声をかけられていることにすら気が付かない程に。 「……ん?」 だから、気が付くと。
2016-03-16 21:40:08