ヤンデル先生が語る、「進路の話」

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病理医ヤンデル @Dr_yandel

で、連続でツイートするきっかけをもう一度見直して思うことなのですが、「病理医に向いている人は誰か」ということを考えると、わりと正直に申し上げて「病理医になるきっかけとタイミングが目の前に転がっていた人」だと思います。病理のドアが開いていると感じたなら、病理医になれる

2016-03-24 08:22:27
病理医ヤンデル @Dr_yandel

ぼくは現在ツイッタランドが一番性に合っていますが、それはたぶん「ツイッターをはじめたから」であって、元々ぼくという人間がツイッター向きだったのだ、とかそういう分析をしてもあまり意味はないのだろうと思っており、ツイッターのドアが開いていたのが悪いんだ、と実感しています

2016-03-24 08:19:36
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「自分はどんな道に進めばいいだろうか、何が向いているだろうか、後悔しないだろうか」という人に、小声で「生命の歴史が作り上げた脳の適応力はんぱないから、自分が今向いてる方向とは別にどのドアが開きそうなのかを見ておくくらいでもなんとかなるぞ」と伝えたい日がある

2016-03-24 08:17:19
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「自分はこうだ」と分析して、「自分はこの世界で輝ける、この世界に一番フィットしている」という相性判断を続けていくとどこかでつらみが出てくるときがある。「ぼくは開いたドアに入ってみた」ということ、それ以上でも以下でもなかったのだということをいつか認めて前を向かないと行けない日がくる

2016-03-24 08:13:13
病理医ヤンデル @Dr_yandel

競技人口の少ない世界で何かになりたいと思う感情を得た人にはきっと「得がたい出会い」とか「偶然ひらかれたドア」があって、自分が何に向いているか・何で認められたいかよりも「おもしろそうなマイナー世界に飛び込んでみたくなった」という、よりプリミティブなきっかけがあるのではないだろうか

2016-03-24 08:10:47
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「自分はとても優秀なはずで、とても特別なはずだから、人と違うことがしたい」と息巻く人を眺めて、本当に優秀で特別な人間なら誰もがやっていることで頂点をとることができるはずなのに、なぜ競技人口の少ない世界で頂点を狙いたいのかをよく考えてみてほしい……と思うことがある

2016-03-24 08:08:30
病理医ヤンデル @Dr_yandel

以上の連続ツイートから、「でも、楽しい事があるよ。」とまとめられるほど心が鈍感ではないので、ぼくのツイートや講演などを見聞きして「病理っておもしろそうだな」と感じた人からDMがくるとすごく長い返事を書く。病理も画像も基礎研究も、もっととんでもなく広く、そこには夢と挫折が山ほどある

2016-03-24 07:39:28
病理医ヤンデル @Dr_yandel

先日有名になったショーンK氏は経済学領域で何の実績もないのに詐称をして、テレビ解説や講演などで「口先の頭角を現した」。あれを見ていて、「ああ、俺は詐称はしてないけど、俺だな……」と思った これはかなりきつい自己分析だった

2016-03-24 07:38:25
病理医ヤンデル @Dr_yandel

この仕事はやっててとても楽しい、それは本当だけど、ぼくはまだ病理診断医として研鑽を積み始めたばかりだし、病理診断医や基礎研究者がどういうものか、それがどう楽しいかは伝えられるけど「臨床画像・病理対比を専門にして成り上がろう、そこには夢がある」とは言えない

2016-03-24 07:37:39
病理医ヤンデル @Dr_yandel

フォワードにもキーパーにもなれなかったプレイヤーが、監督やコーチになるほどの実績もないけど言葉だけは達者だからテレビ解説者になりました、というのに近い(あくまで例えです。解説者をバカにしたい文脈じゃないのはわかってください)

2016-03-24 07:36:21
病理医ヤンデル @Dr_yandel

そんな中で、自分の喜びを感じられて、ナラティブな場所で患者ではなく医療者たちがありがたがるような「臨床画像・病理対比」を、わざわざ「専門にする」とセルフブランディングして自分のプライドを保ってきたという敬意がある

2016-03-24 07:34:56
病理医ヤンデル @Dr_yandel

ぼくは自分がめちゃくちゃ優秀だと信じていたから当初生命科学を専攻したかったし、生命科学の基礎研究をやりながら医師免許を活用して病理診断も片手間で習得しようとした。でもそれで何度も挫折を味わい、とてもじゃないけど生命科学の世界でbrandnew dataを出せないと思った

2016-03-24 07:34:07
病理医ヤンデル @Dr_yandel

様々な観測データから「推論」をしていくのは非常に楽しくて、人の耳目を集める。でも、「言ったモノ勝ちじゃん」と揶揄されるのも覚悟しなければいけない

2016-03-24 07:33:08
病理医ヤンデル @Dr_yandel

マイナーな科学手法の一つにabduction(仮説形成法)というのがあるのだが、これは「従来の帰納的・演繹的手法では証明が困難な、考古学や歴史学、分類学を論文化するために用いられる手法」である。生命科学の領域であえてabductionをメインとする意義はあまり多くない

2016-03-24 07:32:36
病理医ヤンデル @Dr_yandel

しかし、臨床画像・病理対比とはまさにその「ストーリー」に最初から向かって行くような仕事で、すでに臨床画像屋とか病理屋が構築した理論を「借りてきて」、「編集して魅せる形にする」というものだ。そこに科学があるかどうか。科学ではなく文学なのだとしたら、そこに第一人者というのは存在しない

2016-03-24 07:31:23
病理医ヤンデル @Dr_yandel

我々は科学者がつむいだストーリーを読むのが好きだ。データを真摯に構築し、見いだされた「十全に確からしいこと」から少しだけ想像力をはたらかせて、「きっとこうなんだろうね。」という物語までたどり着いた文章には色気があり、文学とかエッセイのにおいを帯びる

2016-03-24 07:29:54
病理医ヤンデル @Dr_yandel

生命科学研究において、「第一人者と名乗れる」のは確固たるエビデンスをもって科学を構築する人間、そして積み上がった医学理論をもとにナラティブに患者に向かい合う人間のいずれかだと思う。医学と医療をつなぐ推論構築というのは、あくまで「どちらかのプロ」が手慰みに行うものだというイメージ

2016-03-24 07:28:34
病理医ヤンデル @Dr_yandel

最近しばしば学生などから「ヤンデルのやっている臨床画像・病理対比に興味が有る どうやったらその世界で第一人者になれるか?」といった質問をうけるのだがはっきり言っておきたいのは、「臨床画像・病理対比の専門家が第一人者と名乗れることはない」ということ

2016-03-24 07:27:09