稲川淳二の『つぶやき怪談』(2016.03.29)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

よくあることですが、もう喉がカラカラになるんだ。 でもって頭はグワングワンいってるし、 気持ち悪くて、吐き気さえしますからね。

2016-03-29 22:30:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうだ・・・確か、冷蔵庫に冷たい水があったっけ、 と加藤は思い出した。

2016-03-29 22:30:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

電気をつけるのも面倒なんで、よっこらしょと立ち上がって、 玄関側の戸を開けようとしたんです。

2016-03-29 22:31:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時ですよ。 うぇーーーーー。 と、何かが、唸った。

2016-03-29 22:31:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

うぇーーうぇーーと、今度は長く聞こえた。 なんだろうーー。

2016-03-29 22:31:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

どこだ?近い。 すごく近い。 すぐ近いとこで聞こえるぞ。

2016-03-29 22:32:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

本当に距離がない、自分の布団のすぐ上で聞こえる! うぇーーうぇーー。

2016-03-29 22:32:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、加藤のどてらの脇の下から、 突然、ニョキッと、手が伸びてきた。

2016-03-29 22:32:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

誰だこれ・・・大田か・・・。 加藤は酔っていたから、わからなかった。

2016-03-29 22:33:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

いや、しかしこれはあいつの手じゃない。 酔っててもそれはわかる。 あいつの手はこんなに細くはない。

2016-03-29 22:33:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

うぇーーうぇーー、その間も、唸り声が聞こえてきます。 唸り声はやまない。

2016-03-29 22:33:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、今度は加藤のどてらをその細い腕がわしづかみにしてきた。 ギュッと、つかんだ。

2016-03-29 22:34:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

もう完全に酔いが醒めた。 大田じゃないぞ。

2016-03-29 22:34:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

これは大田じゃないなら、一体誰なんだーーー。 でも引っ張る。 まだ引っ張られる。

2016-03-29 22:34:45
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ギュッ、と引っ張られてる。

2016-03-29 22:35:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

細い腕がだんだん力を入れてきて自分のどてらをつかんで、 ぐんぐん引っ張ってる。

2016-03-29 22:35:20
稲川淳二 @Junji_Inagawa

やーー、でも、大田かも・・・、 大田であってほしい・・・大田であってほしい・・・。

2016-03-29 22:35:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時、わずかに開いたカーテンの向こうから、 月明かりが射しているのに気がつきました。

2016-03-29 22:36:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで、次第に目が暗闇になれてきて、 加藤が、うっ!と思いきって目を下に向けた。

2016-03-29 22:36:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると・・・暗い布団の上に、

2016-03-29 22:37:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

痩せこけた老人が一人、 こちらを見て倒れてました・・・。

2016-03-29 22:37:20
稲川淳二 @Junji_Inagawa

口をパクパクさせながら、唸っていた。 苦しそうに、すごい眼光で加藤を睨みつけ、何かいってる。

2016-03-29 22:37:45
稲川淳二 @Junji_Inagawa

どてらをつかんでいたのはこの老人だった。

2016-03-29 22:38:02
稲川淳二 @Junji_Inagawa

死に物狂いでつかんでいて、離そうとしない。

2016-03-29 22:38:20