稲川淳二の『つぶやき怪談』(2016.03.29)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うわーーー!」 加藤はもう有らん限りの思いっきりでかい声で叫んだんです。

2016-03-29 22:38:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

さすがに廊下のほうから、 あっちこっちの部屋のドアが開くのが聞こえてきました。

2016-03-29 22:39:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

隣の部屋や、旅館の人達までがバタバタバタバタとやって来た。

2016-03-29 22:40:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「どうしたんです!」 加藤は、もう喋れません。

2016-03-29 22:40:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

立っているだけが精一杯で、 老人に袖をつかまれたまま、わなわなと震えています。

2016-03-29 22:40:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あの、あ、あの・・・」 震えていて、もう声にならない。

2016-03-29 22:41:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

周りの人達は彼が何をいっているのかわからない。

2016-03-29 22:41:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、誰かが部屋の電気を点けました、パチンとーー。

2016-03-29 22:41:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、布団の真ん中で、 痩せこけたじいさんが、うーうー唸ってる。

2016-03-29 22:42:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「医者だ!医者がないか!救急車呼べ」

2016-03-29 22:42:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それからは上を下への大騒ぎ。 「おーい!医者だ」

2016-03-29 22:42:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

すごい騒ぎになって、 そこへ宴会場で飲んでいたカメラマンの大田も、 さすがに騒ぎを聞きつけてやって来たんです。

2016-03-29 22:43:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「どうしたんです!」 振り向くと、大田がいる。

2016-03-29 22:43:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「加藤さん!大丈夫ですか!」 と叫ばれた瞬間に、加藤はようやく気がついた。

2016-03-29 22:43:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああーー、俺は部屋を間違えた」

2016-03-29 22:44:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

自分も老人もしこたま飲んで、両方が酔っ払っていた。

2016-03-29 22:44:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

しかし、じいさんはあまりの飲み過ぎで体調を崩し、即病院行き。

2016-03-29 22:44:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでも、じいさんの家族の人たちに、

2016-03-29 22:45:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「助かった。助かった。あなたのお陰です。ありがとうございます」 って、加藤は喜ばれたそうです。

2016-03-29 22:45:22
稲川淳二 @Junji_Inagawa

笑っちゃいますよね。 ホント。

2016-03-29 22:45:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それにしても、みんな、 なぜ加藤があそこにいたのか、 不思議に思わないんだから、変な話ですよ、まったく。

2016-03-29 22:46:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「つぶやき怪談」いかがでしたか?

2016-03-29 22:46:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

怖・楽しい時間を、楽しんで頂けましたでしょうか? 喜んで頂ければ、何よりです。

2016-03-29 22:46:46