YOTA STORY

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ぴよこ @anokazenikike

仕事から帰ると君は、何よりも先にたった一人の同居人へと挨拶に走る。彼女こそ君の人に言えない楽しみ…「サボテン」の育成だ。それだけでは別にどうということもない。特殊なのは、君がサボテンを妹として妄想上のキャラメイクを施し、一人芝居でいつも話しかけていること。君は10代の少女、それも

2016-04-09 21:07:43
ぴよこ @anokazenikike

血縁関係にある相手へと強い憧れ、そして妄執を抱いていた。それが何故サボテンになるかといえば、小心な君が消去法でどんどん選択肢を減らしていった末に何故かとち狂って辿り着いてしまったからとしか言えない。それでも君は、確かにサボテンを妹として愛し、それを心の支えにしていた。

2016-04-09 21:07:59
ぴよこ @anokazenikike

ある朝君が目を覚ますと、一人暮らしで戸締まりもきちんとしていた筈の君のベッドへ、見知らぬ少女が裸で寝ているところを発見する。困惑する君へ、君の理想を具現化したように可憐な容姿の少女はサボテンに付けている名を名乗り、君をお姉ちゃんと呼ぶのだった。

2016-04-09 21:08:22
ぴよこ @anokazenikike

・PC3【お姉ちゃんシンドローム】  君はフリーターとして日銭を稼ぎながら迫り来る時間や将来性、金銭的不安等から押し潰されそうになっている普通の崖っぷち青年だ。その日も君は唯一の趣味であるネットサーフィンに興じていたのだが、どうも最近気になってしまう話題がある。

2016-04-09 21:08:40
ぴよこ @anokazenikike

「お姉ちゃん症候群」俗にそう呼ばれる都市伝説。ある時なんの前触れもなく、自分の強さも弱さも嗜好も全てを知り尽くし全てを許容してくれる完璧な「姉」が目の前に現れ、その姿は自分にしか見えないのだが、誰も彼もその姉に対して心理的に過剰な依存をしてしまい、社会生活を営めなくなってしまう

2016-04-09 21:08:55
ぴよこ @anokazenikike

のだという。馬鹿話を鼻で笑い飛ばしながらも、しかしその話題は定期的に匿名掲示板やSNSで蒸し返され、なんだかんだとその話題が忘れ去られることはない。そんな存在が居るならぜひともお目にかかってみたいものだと思っていた君は、ある時。数年前死に別れた筈の実姉が視えるようになってしまう。

2016-04-09 21:09:13
ぴよこ @anokazenikike

謳われるような完璧さはどこにもなく、現れた姉は記憶のままにある姉だった。つまりどちらかといえば幽霊と言った方が正しい。戸惑いつつも少しずつ姉の存在を受け入れ始めた君だったが、問題は自分の姉ではなく。他の「症候群」罹患者の姉まで視えるようになってしまったことで…?

2016-04-09 21:09:30

ぴよこ @anokazenikike

仏法説話のひとつ。天国と地獄、プレートが違うだけの同じ部屋が2つあり、それらはどちらも食堂だ。食堂であるからして、中では卓に供されたご馳走が並び、人々が着席してそれを食べる。ただし、そこには唯一絶対のルールが存在し、「とてもとても長い箸や匙を使って食べなければならない」というもの

2016-04-11 12:32:30
ぴよこ @anokazenikike

天国の人々は、長い箸を、長いテーブルの向こうへ居る相手に向かって用い、お互いに食べさせ合って美味しく和やかに食事をしている。しかし地獄の人々は誰もが自分こそ先に食べたいと協力しあうことをしようとせず、いつまで経っても食べられず、空腹が更なる不和を齎す。そういったお話。

2016-04-11 12:32:45
ぴよこ @anokazenikike

この話が何を示唆しているのかといえば、綺麗事の倫理道徳を謳ったお題目というだけではなく、単なる事実として。俗人凡人が独りで成し遂げられる物事には浅い限界があり、人と協力した方が効率的であり労力として楽だということ。そう私は思います。

2016-04-11 12:33:11

間。

ぴよこ @anokazenikike

貧困の家庭に生まれた少女。当然学はなく、ただ朴訥で、必死に生きる両親から守られて愛だけは失わなかった女の子。そんな彼女には隠れた一芸があり、歌うことが大好きだった。少ないレパートリー、拙い童謡。それでも不思議と歌声は人の胸を打ち、心に響いた。

2016-04-15 09:57:10
ぴよこ @anokazenikike

それが彼女にとって、世界と、生きることへの讃歌だったから。 いつの時代も突き抜けて秀でたものは、次第に人の風聞を伝い波紋を呼ぶ。富を得、家族へ楽をさせてあげられるようになった彼女は、金と名声に興味を示すことなく、好奇の注目を集めてしまうことへ煩わしさだけを感じていた。

2016-04-15 09:57:25
ぴよこ @anokazenikike

そんなある時、高まり続けた彼女の評判はついに魔法の国にまでも届き、歌声を是非披露して欲しいと招聘を受ける。そこは音楽が理法を司り、人外たちが暮らす場所。興味を惹かれた少女は魔法の国へ訪れることを決めた。結果、歌姫の名を其処でもほしいままに、大変な評価を受ける。のだが、

2016-04-15 09:57:42
ぴよこ @anokazenikike

少女は魔法の国において高名な妖精の楽団からスカウトを受け、気ままに歌うことの方が大事だった彼女はそれを丁重に断る。しかしそれに気を悪くした団員の一人が、彼女へ呪いをかけてしまう。少女の声は盗まれ歌どころか話すこともできなくなり、それは幼い彼女にとって絶大なショックとなった。

2016-04-15 09:58:09
ぴよこ @anokazenikike

意気消沈する少女の為に、他の楽団員が声の代わりにと彼女へ魔法の楽器を各種貸し与える。演奏に関しては素人である少女はそんなもの扱えないとつっぱねるのだが、それでもいいのだと妖精たちは優しく諭す。 貴女の心は世界と響い(繋がっ)ている。其処に手段などさしたる問題ではないのです。

2016-04-15 09:58:41
ぴよこ @anokazenikike

8つに音階を分割し隠されてしまった少女の声を探す旅に出かけよう。旅の道連れは魔法の楽器。かき鳴らし吹き鳴らせば先行きも愉快。戦闘では演奏によって、様々な妖精を召喚し危機に立ち向かおう。仲間だってきっと出来るはず。愛はまだ、貴女の胸の裡に。失くしてなどいないのだから。

2016-04-15 09:59:02