星雲鎮守府SS第四弾【ふたつの仮面】

裏と表。それはとっても単純で、理不尽で。 ※第三弾【雲ハ移リ行ク】の続編。未視聴の方はそちらから先にどうぞ。
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星雲のフリーダム漣@ご愛顧に感謝 @YNebulaSub

* 「…情報の漏洩?」 「ああ。他所はこの噂で持ち切りだ。詳しい事情を把握するため、上の調査官があちこち巡回してるらしい。そのうちここにも来るだろうな」 ある日の星雲鎮守府執務室、朝雲と提督の会話は何やら不穏であった。

2016-03-28 00:07:23
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* 「各鎮守府から…ってことは深海棲艦が何か仕掛けてるのよね?」 「そう考えるのが自然だ。どういう手口かは知らんが」 「回りくどいことするのね」 「いや、情報戦は基本だ。むしろ今までなかったのがおかしいといえるかもな」

2016-03-28 00:07:53
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* 雲龍異動後も、星雲鎮守府は戦力面で何ら困ることなく順調に戦果を挙げていた。 しかしながら、懸念材料がひとつだけあった。それは…

2016-03-28 00:08:27
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* 「雲龍さんのところは大丈夫かしら」 「連絡が来ないことにはなんとも、な…」 異動以来、雲龍からの連絡はない。 便りがないのは良い報せとはいったものの、常在戦場の艦娘から一切の音沙汰無しというのは些か不安である。

2016-03-28 00:08:53
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* 「まったく、言わなくてもそれぐらいはやってくれるものだと思っていたんだが…」 提督が呆れ気味に言ったその時… 「おーい、入るぜー?」

2016-03-28 00:09:45
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* 「摩耶か。どうした?」 「電文だ。なんでも、例の情報流出事件のことでウチにも上からの見回りがくるらしいぜ」 摩耶から渡された書類には、【巡回担当:駆逐艦 春雨 五月雨 ほか 整備士数名】とある。 どうやら、通信機器の点検や各艦娘への聞き取り調査がメインになるらしい。

2016-03-28 00:10:20
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* 「整備士さんだけじゃなくて上の所属の艦娘も来るのね…。上の艦娘はそういう技術とかも仕込まれてるのかしら」 「さあな。まあわざわざこういう任務を課されるってことはそういうことなんだろう」 こういったことは前例がないので、朝雲は勿論のこと提督も把握してはいない。

2016-03-28 00:10:49
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* 「数日間滞在するらしいから艦娘用の空き部屋を二つ確保しておこう。悪いが摩耶と朝雲に整理を任せてもいいか?駆逐寮離れの二階だ。それが終わったら今日はもう上がっていい」 「わかった。よし、行くぜ朝雲!」 「了解!」

2016-03-28 00:11:14

同じ頃…

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* ※ ―誰が呼んだか、その通称は【紫苑鎮守府】。 海に面した山地を切り開いて作られた鎮守府であり、かつては紫苑の花が鮮やかに咲いていたといわれているが定かではない。 そして、この鎮守府こそが雲龍の異動先である。

2016-03-28 00:11:58
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* 「皆さん、ご協力いただきありがとうございました!」 「それでは、こちらでの巡回任務は以上になります。はい」 駆逐艦【五月雨】【春雨】。大本営より、情報流出事件に関する各鎮守府の巡回を任された艦娘たちである。

2016-03-28 00:12:38
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* 「こちらこそご苦労様。雲龍、お見送りをするからついてきなさい」 「…了解」 一見して好青年風に映るこの提督の名は【柿野】。その実、筋金入りのクズである。 そんな彼のもとで雲龍は秘書艦任務及び艦隊の強化に務めている。

2016-03-28 00:13:01
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* その日の海は闇に覆われて静かだった。 すぐ近くに浮かぶ灯台の光が、五月雨・春雨らと彼女たちを送る雲龍・柿野提督の影を成していた。 …否、港にはもう一つの影があった。 「時雨姉さん!」 それを見るや春雨が声を上げて駆け寄る。五月雨も後に続く。

2016-03-28 00:13:36
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* 「久しぶりだね、春雨。元気そうだね」 「はい♪時雨姉さんもお元気そうで何よりです」 「大変な任務だけど、引き続き頑張って」 「もちろんです!」 何気ない会話は”姉妹”そのもの。彼女たちが兵器であることを忘れさせる。

2016-03-28 00:14:05
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* 「…っと、すみません。それではそろそろ…」 ふと我に返ったかのように春雨が雲龍たちの方へ向き直る。 「…」 雲龍は黙ったまま春雨たちの方を見遣る。 「…あの、何か…?」 「いえ、何でもないわ。お疲れ様でした」 やや気のない言葉を返す雲龍。

2016-03-28 00:14:42
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* 「はい、それでは失礼致します」 「今度、またゆっくり話をしよう」 「はい!では…」 時雨の呼びかけに笑顔で答えて鎮守府を後にする春雨。五月雨も一礼してその後を追った。 「さて、我々も戻ろう…」 「あ、ちょっと待って」 「?」

2016-03-28 00:15:19
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* 「少し雲龍と話したいことがあるんだ。いいかな?」 「?まぁいい。ちょうどいいから今日の執務はこれで終わりにするとしよう。後は好きにしろ」 そう言って柿野は自室へ帰っていった。

2016-03-28 00:15:37
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* 「…それにしてもあなたって本当に神出鬼没ね。普段はどうしているのやら」 「ふふ、僕にもプライベートがあるからね。それより」 時雨が目線を上げて雲龍の眼をじっと見る。 「…君に、会ってほしい人がいるんだ」 「会ってほしい人?」

2016-03-28 00:16:20
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* 要領を得ない、といった表情の雲龍。 それもそのはず、ここに来てから半年、時雨と話した回数など片手で数えるほどで、容易に意思疎通が出来る間柄というわけではなかった。 現代的な鎮守府事情の前では、”歴史”もその程度なのかもしれない。

2016-03-28 00:16:43
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* 「その人と話をしていて思ったんだ。もしかしたら、君なら彼の力になれるんじゃないかって」 「…彼…?」 「今日はもう遅いから、詳しい話は明日の夕方にでも。それでいいかな?」 「…えぇ、いいけれど…」

2016-03-28 00:17:10
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* 闇空の下、一人残った雲龍はそっと煙草に火をつけた。 吸い始めたのは、紫苑鎮守府に来てからのこと。 そして、彼女が煙草を吸うときは、

2016-03-28 00:17:33
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* …決まって、言い知れぬ不安に駆られたときであった。

2016-03-28 00:17:50

Y. Nebula SS episode4
【ふたつの仮面】

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* ※ 翌日の星雲鎮守府。陽は既に高く昇っていた。 この日も朝雲は提督の傍らで書類整理に努めていた。 「そろそろだな」 「え?」 「例の巡回だ。下まで行くぞ」 「わ、わかったわ」 言われるがままに同行する。

2016-04-04 21:32:02
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* 港に着くと、山雲の姿が見えた。 「あらー、おふたりともお揃いでどうしました~?」 「例の巡回の連中がそろそろ来る頃合いでな」 「で、私はその付き添い。山雲こそここで何してるの?今日非番じゃなかった?」 「今日は天気がいいので散歩がてら風にあたっていました~」

2016-04-04 21:32:27