【ミイラレ!第三十一話:霊媒物質のこと】(実況付き)
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「今、そいつらはどこにいる」「……し、知らないわ。いつもは『演者』さまの預かりで、今あの方は雲隠れしちゃってるもの」「本当に?」「本当だってば!」悲鳴のような返事。トリルはしばし赤帽子を睨んだあと、大仰な溜息をついた。「そこは詳しく聞く必要がありそうだな」63 #4215tk
2016-04-08 20:16:09硬直する赤帽子をあとに、トリルは振り返る。「四季、君はいったん神社に戻ってるといい。送っていくよ。ボクは他の用事ができた……と、その前に」トリルは四季の肩から伸び、赤帽子の腕を掴んでいた第三の手に触れた。「せっかく出せたんだ。ちょっと使い方を教えておこうか」64 #4215tk
2016-04-08 20:20:05触られている感覚が伝わる。霊媒物質でできていても、自分の体の一部ということか。「使い方ってのは?」「霊媒物質に定型はない。だからさっきみたいに、人の形に縛られず好きな形にすることができる。……少し力入れるよ。変形する感覚を掴んでね」言葉と同時、腕に圧力。65 #4215tk
2016-04-08 20:24:06触られた箇所を中心に、腕がへこみ、細まっていく。手先も融合し、捻れ、まるで縄のごとき有様となった。得体の知れない感覚に四季は戸惑う。決して痛くはないのだが……そう考えているうちに、霊媒物質の腕は一本の縄へと姿を変えていた。驚くことに、この状態でも感覚がある。66 #4215tk
2016-04-08 20:28:08「こういう感じだね。このままでも使えるんだけど、例えば千切られたりすると痛い。なので」「なので?」「切り離してみよう。ほら、トカゲの尻尾みたいに」トリルは両手で霊媒物質を掴む。付け根のあたりが熱くなるのを感じて、四季は反射的にそこを意識する。67 #4215tk
2016-04-08 20:32:09瞬間、軽い音を立てて霊媒物質が四季から『抜けた』。「これでよし。ロープの調達には困らなくなった、と」微笑んだトリルは、霊媒物質製のロープで手際よく赤帽子を縛りつけていく。なぜかは知らないが、亀甲縛りだった。「戻ってきたら、改めていろいろ聞かせてもらうからな」68 #4215tk
2016-04-08 20:36:09一暼とともに脅しつけられ、赤帽子がびくりと震えた。当のトリルは彼女から興味を失ったらしい。すたすたと四季の元へ。「じゃあいったん神社に戻すよ。霊媒物質の出し方、しっかり復習しといてね」「う、うん。あの」「うん?」「あの、あの子は殺さないでよ」「わかってるよ」69 #4215tk
2016-04-08 20:40:09…………乾いた音が境内に響く。残された力を振り絞って放った一撃は、あえなく美咲に防がれた。追撃を放とうとした怜は足を縺れさせ、美咲に寄りかかるようにして倒れ込む。「おっと。おい、大丈夫か?」大丈夫。まだやれる。そう答えようとしても、まるで口を動かせない。71 #4215tk
2016-04-08 20:48:12息をするので精一杯だ。霊気を使い果たしたのはいつ振りだろう。それにしても、ここまで手を尽くしても美咲に傷一つつけられないとは……「うん、いい感じなんじゃない?予想よりは頑張ってた」賽銭箱前の階段に腰掛けながら、御笠が言う。一応は褒められている、らしい。72 #4215tk
2016-04-08 20:52:23「おう。それはそうだな!思ってたよりは強かったぞ、怜」「ありがと……」なんとか返す言葉にも疲弊が滲む。かなり下に見られていたことに気分を悪くすることもできない。事実だからだ。「そろそろいい時間だよ。これで終わりにしておこう」御笠の横に座った充虎が声を上げる。73 #4215tk
2016-04-08 20:56:21「あとは美咲姉さんと一緒に寝てれば霊気も強化されるでしょ」「そうだな。んじゃ、そろそろ寝るかァ」あっさりと美咲は怜を肩に担ぎ、そのまま本殿へ。今さらになって眠気に襲われ、怜はゆっくりと目を閉じた。まだ強くならなくてはいけない。彼の側にいるためには。74 #4215tk
2016-04-08 21:00:08というわけで、中途半端ですがミイラレはいったん更新停止です。大胆なカットアップ手法などを導入するなど実験し、いろいろリメイクしようと思います。 まとめは残しておきますのでお楽しみください。◇以上です◇ #4215tk
2016-04-08 21:06:23