【ミイラレ!第三十一話:霊媒物質のこと】(実況付き)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。修行回? たぶん修行回。
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ギ……あ、ガッ……や、やめ」懇願の声に応えたのは、酷薄な瞳と焼けつく音。焦げた臭いと赤帽子の悲鳴が部屋に広がる。「質問が聞こえなかった?シェイプシフターを知ってるか、って聞いたんだ」「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃっ!知ってる!知ってます!」46 #4215tk

2016-04-07 20:48:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その答えにトリルは笑みを浮かべ、赤帽子の頭から手を離す。怪異の顔面とトレードマークであろうその帽子に、無残な焼印が刻まれていた。「成る程。それで?お前はあいつの一味か」「り、リジィは……リジィは呼ばれただけ。力を貰った恩もあるし、協力はしたわ」47 #4215tk

2016-04-07 20:52:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

力を貰う。「あの怪異、そんなことができるんだ」思わず四季は声を上げていた。悪魔がちらりとこちらを見やる。「それくらいは多少格の高いやつなら誰でもできる芸当だよ。余ってる霊気を譲ってやればいいだけだからね。さて」その瞳が不穏に輝き、赤帽子へ。48 #4215tk

2016-04-07 20:56:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あいつに協力してる馬鹿どもはお前以外にどれだけいる?正直に答えろ。嘘をついたらどうなるか、わかるよな」「ひっ……!し、知らないわ!本当よ!リジィは、他の怪異とは、あまり会わせてもらえてなかったの!」「ふぅん」トリルはしゃがみ、赤帽子と視線の高さを合わせる。49 #4215tk

2016-04-07 21:00:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「『あの人たち』。『あまり』会わせてもらえなかった……」「……あっ、あっ、あっ!言う、言うわ!シェイプシフターには少なくともあと二人、すごく強い協力者がいる!」ほとんど恐慌状態の赤帽子が喚く。よほど先の拷問が応えたのだろう。四季は思わず相手に同情した。50 #4215tk

2016-04-07 21:04:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そいつらの名前は」「『演者』さまと『サバト』さま!どっちも正体はわからないけれど、下手な神様より恐ろしい存在だった!」「やつらの力は」「ち、力?えっと……『サバト』さまが魔法を使うってくらいしかわからない。リジィをこの国に呼んだのもあの人だもの」51 #4215tk

2016-04-07 21:08:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トリルが小さく唸る。「召喚術か。そのふざけた名前からして、悪魔が手を貸してる可能性も考えられる、と」「悪魔が怪異に手を貸すことってあるの?」四季の疑問に、トリルは振り返る。彼を見るときだけ、悪魔の怒気はおさまるようだった。「ま、貸すやつもいるだろうね」52 #4215tk

2016-04-07 21:12:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

悪魔が肩を竦める。「こっちに来るためには手段を選ばないやつだっているだろうから。ま、どっちでもいいや。リジィ」「は、はいっ」身を強張らせる赤帽子。悪魔にまた怒気が戻ってくる。「そいつらはそれでいい。シェイプシフターについて知ってることを言え」53 #4215tk

2016-04-07 21:16:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ、あの人?えーと……」赤帽子のリジィは泣きそうに顔を歪めた。「よくわからないの、あの人。それともあの人『たち』?いろいろなものに変身できて……」「たち、ってのはどういう意味だ」「増える、のよ。どういう理屈かわからないけど。それで散々驚かされたわ」54 #4215tk

2016-04-07 21:20:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

増える。その言葉を聞いて、四季は先ほどの襲撃を思い出す。それはトリルも同じようだった。「……神域への襲撃にやたら増える透明な怪異が混ざってたらしいけど、それがそいつか?」「あの人ならそれくらいはできると思う」赤帽子はあっさりと言った。55 #4215tk

2016-04-07 21:24:22
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

が、彼女はすぐに首を傾げる。「でも、襲撃なんて初めて聞いたわ。そんなことしてる暇あったのかしら」「へえ?他に何か企んでたのか?そいつ」赤帽子はややバツが悪そうに顔をしかめる。悪魔をちらりと見やった彼女は、おずおずと言う。「あの……それを話したら助けてくれる?」56 #4215tk

2016-04-07 21:28:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トリルは無言で四季を見やった。「どうする?」「どうするって」「こいつはアンシーリーコート……人に害なす妖精だ。悪魔のボクが言うのもなんだけど、助けて開放したら人間に危害を加えるかもしれない」四季は黙り込み、赤帽子を見やる。期待の眼差しとかち合った。57 #4215tk

2016-04-07 21:32:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……助けてあげても、いいんじゃないかな」「へえ?」悪魔が興味深そうに四季を見やる。「本当にいいの?こいつを助けたら、今度は人間が死ぬ羽目になるかもよ」「それは……山ン本組に入れるとかして抑えてやればいいと思うし」「またそういう自分から面倒を背負いこむ真似を」58 #4215tk

2016-04-07 21:36:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トリルは苦笑した。「ま、四季らしいっちゃらしいけど。わかった。燃やすのはいつでもできるしね」そう言って赤帽子へ振り向いたときには、すでに冷酷な悪魔の顔へと変わっている。「そういうわけだ。彼の温情に感謝するといい……で?やつの企みを知ってるのか」59 #4215tk

2016-04-07 21:40:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「もちろん!」赤帽子が顔を輝かせる。「だってリジィもその手伝いをしてたもの。あの人、昔滅んだ人殺しの怪異を蘇らせて、今度は数を増やして暴れさせるつもりなのよ」明るい口調で語られたとんでもない内容に、四季は思わず呆気に取られる。トリルの眉間にしわが寄った。60 #4215tk

2016-04-07 21:44:33

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「昔滅んだ人殺しの怪異……それって!」「ああ、間違いなく薫たちを『殺した』やつだろうね。急に薫の傷が開いたのもそのせいってわけだ」四季の声に、トリルは振り向きもせず答える。彼女の目は赤帽子に注がれていた。「で?今そのくだらない怪異はどうしてる。蘇ったのか」61 #4215tk

2016-04-08 20:08:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「とっくのとうに!今夜だって、あいつの分身と一仕事してきたところなの。綺麗だったわ、血の海は」うっとりするように言った赤帽子に、四季は冷たいものを感じる。このあたりの価値観こそ人に不幸を与える妖精のもの、ということなのだろうか。トリルが小さく鼻を鳴らす。62 #4215tk

2016-04-08 20:12:06
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