【ミイラレ!第三十一話:霊媒物質のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。修行回? たぶん修行回。 こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/958679
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「『あの人たち』。『あまり』会わせてもらえなかった……」「……あっ、あっ、あっ!言う、言うわ!シェイプシフターには少なくともあと二人、すごく強い協力者がいる!」ほとんど恐慌状態の赤帽子が喚く。よほど先の拷問が応えたのだろう。四季は思わず相手に同情した。50 #4215tk

2016-04-07 21:04:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そいつらの名前は」「『演者』さまと『サバト』さま!どっちも正体はわからないけれど、下手な神様より恐ろしい存在だった!」「やつらの力は」「ち、力?えっと……『サバト』さまが魔法を使うってくらいしかわからない。リジィをこの国に呼んだのもあの人だもの」51 #4215tk

2016-04-07 21:08:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トリルが小さく唸る。「召喚術か。そのふざけた名前からして、悪魔が手を貸してる可能性も考えられる、と」「悪魔が怪異に手を貸すことってあるの?」四季の疑問に、トリルは振り返る。彼を見るときだけ、悪魔の怒気はおさまるようだった。「ま、貸すやつもいるだろうね」52 #4215tk

2016-04-07 21:12:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

悪魔が肩を竦める。「こっちに来るためには手段を選ばないやつだっているだろうから。ま、どっちでもいいや。リジィ」「は、はいっ」身を強張らせる赤帽子。悪魔にまた怒気が戻ってくる。「そいつらはそれでいい。シェイプシフターについて知ってることを言え」53 #4215tk

2016-04-07 21:16:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ、あの人?えーと……」赤帽子のリジィは泣きそうに顔を歪めた。「よくわからないの、あの人。それともあの人『たち』?いろいろなものに変身できて……」「たち、ってのはどういう意味だ」「増える、のよ。どういう理屈かわからないけど。それで散々驚かされたわ」54 #4215tk

2016-04-07 21:20:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

増える。その言葉を聞いて、四季は先ほどの襲撃を思い出す。それはトリルも同じようだった。「……神域への襲撃にやたら増える透明な怪異が混ざってたらしいけど、それがそいつか?」「あの人ならそれくらいはできると思う」赤帽子はあっさりと言った。55 #4215tk

2016-04-07 21:24:22
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

が、彼女はすぐに首を傾げる。「でも、襲撃なんて初めて聞いたわ。そんなことしてる暇あったのかしら」「へえ?他に何か企んでたのか?そいつ」赤帽子はややバツが悪そうに顔をしかめる。悪魔をちらりと見やった彼女は、おずおずと言う。「あの……それを話したら助けてくれる?」56 #4215tk

2016-04-07 21:28:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トリルは無言で四季を見やった。「どうする?」「どうするって」「こいつはアンシーリーコート……人に害なす妖精だ。悪魔のボクが言うのもなんだけど、助けて開放したら人間に危害を加えるかもしれない」四季は黙り込み、赤帽子を見やる。期待の眼差しとかち合った。57 #4215tk

2016-04-07 21:32:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……助けてあげても、いいんじゃないかな」「へえ?」悪魔が興味深そうに四季を見やる。「本当にいいの?こいつを助けたら、今度は人間が死ぬ羽目になるかもよ」「それは……山ン本組に入れるとかして抑えてやればいいと思うし」「またそういう自分から面倒を背負いこむ真似を」58 #4215tk

2016-04-07 21:36:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トリルは苦笑した。「ま、四季らしいっちゃらしいけど。わかった。燃やすのはいつでもできるしね」そう言って赤帽子へ振り向いたときには、すでに冷酷な悪魔の顔へと変わっている。「そういうわけだ。彼の温情に感謝するといい……で?やつの企みを知ってるのか」59 #4215tk

2016-04-07 21:40:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「もちろん!」赤帽子が顔を輝かせる。「だってリジィもその手伝いをしてたもの。あの人、昔滅んだ人殺しの怪異を蘇らせて、今度は数を増やして暴れさせるつもりなのよ」明るい口調で語られたとんでもない内容に、四季は思わず呆気に取られる。トリルの眉間にしわが寄った。60 #4215tk

2016-04-07 21:44:33
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「こういう感じだね。このままでも使えるんだけど、例えば千切られたりすると痛い。なので」「なので?」「切り離してみよう。ほら、トカゲの尻尾みたいに」トリルは両手で霊媒物質を掴む。付け根のあたりが熱くなるのを感じて、四季は反射的にそこを意識する。67 #4215tk

2016-04-08 20:32:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

瞬間、軽い音を立てて霊媒物質が四季から『抜けた』。「これでよし。ロープの調達には困らなくなった、と」微笑んだトリルは、霊媒物質製のロープで手際よく赤帽子を縛りつけていく。なぜかは知らないが、亀甲縛りだった。「戻ってきたら、改めていろいろ聞かせてもらうからな」68 #4215tk

2016-04-08 20:36:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

一暼とともに脅しつけられ、赤帽子がびくりと震えた。当のトリルは彼女から興味を失ったらしい。すたすたと四季の元へ。「じゃあいったん神社に戻すよ。霊媒物質の出し方、しっかり復習しといてね」「う、うん。あの」「うん?」「あの、あの子は殺さないでよ」「わかってるよ」69 #4215tk

2016-04-08 20:40:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そのまま彼らは姿を消した。身動きの取れない赤帽子をその場に残して。70 #4215tk

2016-04-08 20:44:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

…………乾いた音が境内に響く。残された力を振り絞って放った一撃は、あえなく美咲に防がれた。追撃を放とうとした怜は足を縺れさせ、美咲に寄りかかるようにして倒れ込む。「おっと。おい、大丈夫か?」大丈夫。まだやれる。そう答えようとしても、まるで口を動かせない。71 #4215tk

2016-04-08 20:48:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

息をするので精一杯だ。霊気を使い果たしたのはいつ振りだろう。それにしても、ここまで手を尽くしても美咲に傷一つつけられないとは……「うん、いい感じなんじゃない?予想よりは頑張ってた」賽銭箱前の階段に腰掛けながら、御笠が言う。一応は褒められている、らしい。72 #4215tk

2016-04-08 20:52:23
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「おう。それはそうだな!思ってたよりは強かったぞ、怜」「ありがと……」なんとか返す言葉にも疲弊が滲む。かなり下に見られていたことに気分を悪くすることもできない。事実だからだ。「そろそろいい時間だよ。これで終わりにしておこう」御笠の横に座った充虎が声を上げる。73 #4215tk

2016-04-08 20:56:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あとは美咲姉さんと一緒に寝てれば霊気も強化されるでしょ」「そうだな。んじゃ、そろそろ寝るかァ」あっさりと美咲は怜を肩に担ぎ、そのまま本殿へ。今さらになって眠気に襲われ、怜はゆっくりと目を閉じた。まだ強くならなくてはいけない。彼の側にいるためには。74 #4215tk

2016-04-08 21:00:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第三十一話:霊媒物質のこと】終わり #4215tk

2016-04-08 21:02:20
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

というわけで、中途半端ですがミイラレはいったん更新停止です。大胆なカットアップ手法などを導入するなど実験し、いろいろリメイクしようと思います。 まとめは残しておきますのでお楽しみください。◇以上です◇ #4215tk

2016-04-08 21:06:23