【電波光忠botまとめ】本丸サテライトスタジオ#3
ざわざわ、ざわざわと小さな気配がする。もちこでも、あんこでもない。もっと小さなものの気配だ。
2016-03-25 12:41:23小さくて、俺の知る何かによく似ている気配だ。だが、そのものではない。ひとつでもない。
2016-03-25 13:03:50とん、とん、とんとん、だんだん早くなるよ、僕のではない、微かで確かな信号が、とんとん、とんとんとん、あちこちから届いている。僕はこの音を知ってる。僕の大倶利伽羅に見つけてもらう時、僕の胸も同じように鳴るんだ。
2016-03-25 20:15:41とんとん信号を鳴らしていたあの子たちは元気かな。人の思いが付喪神を生むからね、大事にしてもらえると、いいね。善いものは善いものを呼び集める。悪いものは悪いものを引き連れる。たくさんの誰かに迎えてもらった僕と同じ名を冠するちいさな付喪神の種達が、善いものであることを願うよ。
2016-03-30 20:47:35さて、それでは、ここにいる燭台切光忠は善いものなのか、それとも、悪いものなのか? それを決めるのは僕ではないんだ。見た人の見たものに、感じたものに僕はなるからね……。だから小さな僕たちも、迎えてくれた誰かの思うようになるだろう。……大事に、してもらえると、いいね。
2016-03-30 20:52:43数日間ざわついていた気配はすっかり消えてしまった。きっとそれぞれのあるべきところに行ったのだろう。俺のそばにある燭台切光忠の気配は、たったひとつだ。
2016-03-30 21:09:02少し重たいから、彼には、内緒だよ
明日から四月なんだね。ぶわぶわに膨れ上がったエネルギーが三月を壊す音がする。春の空気は柔らかく見えて野蛮なんだ。 ここの桜はずっと満開だけど、二日が見頃のところもあるみたいだね。たくさんの小さな僕たちがそわそわしてるのを感じるんだけど……はぐれないように気をつけてね。
2016-03-31 16:36:51春は時々、目を眩ませてだいじなものを見えなくしてしまうんだ。いらないものを切り捨ててあたらしいところに飛び込むにはいい季節だけれど、君にもし、ほんとうにほんとうに大切なものがあるのなら、特に春には、けしてその唯一と離れてはいけない。
2016-03-31 16:47:02僕は……僕はね、大丈夫。目が眩んでも鼻が利かなくなっても鼓膜が破れても、うーん、そうだな、腕が取れても、足が消えても、僕は僕の大切から離れないって決めてる。 嘘にするには一日早かったね。普段言わないことを言わせるのも春の魔力だな……少し重たいから、彼には、内緒だよ。
2016-03-31 17:03:27四月一日だね
今日は嘘をついてもいい日らしい。誰とは言わないがお祭り騒ぎが好きな連中が朝から騒がしくて、すっかり早起きするはめになった。俺は性分的に嘘なぞつけそうもないが、楽しんでいる仲間を見るのは悪い気分ではない。
2016-04-01 08:22:36ふわっふわの薄ピンクの海だよ
お昼過ぎに一度だけ、刃のぶつかる音がしたんだ。僕と根本を等しくする別の僕が彼に会えたんだって、それで分かったよ。……困ったな、自分のことじゃないはずなのに、僕、それから花びらが止まらなくて。……布団に入れない……
2016-04-03 00:57:18明日目が覚めてあんたの桜に埋もれていたらそれはそれで悪くない、って大倶利伽羅が布団に引っ張り込んでくれたので、余計に桜が止まらなくなってしまった。
2016-04-03 01:24:00って、これ僕のじゃない花びらも混じってるね! 君自分の誤魔化そうとして僕を引っ張り込んだね? ……うん、嬉しいね。僕も、たくさんの僕たちがいつかの時代の君に会えて嬉しい。
2016-04-03 01:50:33明日の僕が、君と僕の桜に囲まれて一番に君に会うよ。一番に君を見つける。そうして君も、一番に僕を見つけてくれ。 ……おやすみ、僕の大倶利伽羅。今日は、ほんとうに、いい日だった。
2016-04-03 01:52:37確かに昨夜光忠の桜に埋もれて目覚めるならそれはそれで悪くない、と言ったが、まさか部屋中を埋め尽くすほど舞い続けるとは思っていなかった。……まあ、半分ほどは俺の桜か。
2016-04-03 09:14:18