【実体語と空体語のバランス④】柳子新論について/~二権分立(朝廷・幕府並存)状態を正しくないと非難した山県大弐~

イザヤ・ベンダサン『日本教について~あるユダヤ人への手紙~』/実体語と空体語のバランス/『柳子新論』について/34頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【『柳子新論』について】この著作はおそらく西暦1758年頃書かれたと思います。正確な年代はわかりません。 というのは山県大弐はこれを「発掘文書」として公刊したからです…。<『日本教について―あるユダヤ人への手紙―』

2016-04-18 21:39:01
山本七平bot @yamamoto7hei

②なぜこういう方法をとったのか、ある人は時の政府の弾圧を恐れたからだと申しますが、これは間違いと思います。 …最終的には処刑されたのですから、理由は、おそらくこの書を権威あるものとするためであったと思います。

2016-04-18 22:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

③彼は…その第一編の冒頭を 「物には形がなくても名があるものはある。 (だが)形があって名がないものは未だかつてあったことがない。 (従って)名だけであって良いものがあろうか」 と述べていますが、(続

2016-04-18 22:39:11
山本七平bot @yamamoto7hei

④続>そこでいきなり政治論となり、この言葉がすぐさま、 当時の日本が、実権のない名目的君主と、名目的には君主でなくても、実際には君主であるもの、の二者があり、これは正しい状態ではない、 という主張に移ります。

2016-04-18 23:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤ついでそれがどのような形で、全てを曲げているかをのべ、更にそれが一般人の思想や生活をどのように堕落させているかにまで言及し、最後に様々の知識、学問を云々するよりも「正しい秩序の通りに行なわれる事が正しいのだ」という事を知れば十分である。

2016-04-18 23:38:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥そうすれば日本中の様々の難しい事は、全て終るであろう、と結んでおります。 …ここでは後で三島由紀夫氏の『檄文』と対比しつつ、両者に共通したその発想の基盤を探る時に必要に応じてその内容にふれる事にして、すぐに、これに対する松宮主鈴の反論(というより批評)に移ろうと思います。

2016-04-19 08:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦主鈴はまず、この書は山県大弐の著作であろうとのべ、今は世の中が平和で、全ての人が(天皇も含めて)それを喜んでいるのだから、それをおめでたいと言わないものがあるだろうか――といって暗に大弐の論述は無意味だという態度をとっています。 しかし正面から反論をしている訳ではありません。

2016-04-19 08:38:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧この…批評は、今でも日本人がよくやる批評ですが、大弐はこれが非常に不愉快であったと見えて、手紙を送ってもう一度自己の主張をのべ 「あなたまで、婉曲にものを言うのか。私は、正しい原則にもとづいて、すべてを論じたいと思っているのだ」 とのべています。

2016-04-19 09:09:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨これに対して松宮主鈴は更に手紙を送って、全ては自然のなりゆきで現在に至ったので、天皇も安泰であり、立派な官殿も造られたではないか。 徳川家康を称えた桜町天皇については 「東照神君が、下を鎮め上を仰ぐの功勲、永く矢(ちか)ひて諼(わす)るべからざるの勅諭あり」

2016-04-19 09:38:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩――ああ何と時勢をよく知る立派な天皇であろう、 すべての人がこれで良いとしているのだから、それで良いではないか、 とのべています。 主鈴は反論していません。

2016-04-19 10:08:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪彼の態度は、まさにこの手紙のはじめにのった態度、 「自衛隊は必要だ。だがしかし、自衛隊は憲法違反であるといえる状態も必要」 というのと同じで、 「将軍の政治は必要だ。だがしかし、将軍の政治の存在は『憲法』違反だといえる状態も必要だ」 であったのです。

2016-04-19 10:39:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫従って彼は、後世の思想史家によって、山県大弐と同じ国粋主義者のグループに入れられており、また、彼(主鈴)の意見は、当時のほとんどすべての学者に共通した意見であるとされています。

2016-04-19 11:08:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬三島由紀夫氏のあやまりは、今のような状態は戦後の日本のみのことであって、昔は(といってもわずか26年前の戦前は)そうでなかったと考えたことでした。 私が、三島氏はおそらく『柳子新論』は読まなかったであろう…とのべた理由はこれです。

2016-04-19 11:38:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭氏のような天才的な人がこれを読んで、ここに現われている世界と戦後日本の世界との、不気味なほどの類似点に気づかないはずはない、と私は思うからです。 だが私は、余りに大きな問題を論じはじめたようです。

2016-04-19 12:08:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮そこで、三島『檄文』は次にゆずりましょう。 次便までの間ちょっとお考えおきください。 この天秤の世界に、神が住みうるかどうかを! pic.twitter.com/HEygPMNCzZ

2016-04-19 12:41:29
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