【『檄文』の論理①】『檄文』は狂人の文章ではない/~三島由紀夫が「体をぶつけて死ぬ」といった対象は「憲法」ではなく、日本教の「天秤の世界」だった~

イザヤ・ベンダサン『日本教について~あるユダヤ人への手紙~』/『檄文』の論理/『檄文』は狂人の文章ではない/39頁以降より抜粋引用。
社会学 楯の会 イザヤ・ベンダサン 日本教 違憲 檄文 三島由紀夫 自衛隊 天秤の論理 切腹 柳子新論
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山本七平bot @yamamoto7hei
①【『檄文』は狂人の文章ではない】三島由紀夫氏が切腹した時、彼と親しかった日本政府の高官は、氏のことを「気が狂ったとしか思えない」と評し、また東京大学名誉教授大内兵衛氏は「キチガイはどこにもおるもんだよ」と雑誌のアンケートに答えました。<『日本教について』
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②では氏は本当に気が狂ったのでしょうか、それとも一時的な発作もしくは異常な衝動から、あのような自殺を選んだのでしょうか。 氏の最後のメッセージ『檄文』で見る限り、氏は絶対に気が狂っておりません。
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③私はこの『檄文』を何回も読みましたが、主張は明確で論理は透徹しており、かつ文学的技巧や難解な表現は意識的に避けた跡が見られ、どう見ても正気の人の文章であって、絶対に狂人の文章とは思えません。
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④以下に『檄文』の抜粋を掲載いたしますから、このように論旨を進めて行ける人が「気が狂った」と思えるかどうか直接に御判断ください。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑤『檄文』はまず「前文」があり、ついで、 【①われわれは戦後の日本が、経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎの偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。】
山本七平bot @yamamoto7hei
⑥従って 【②(われわれは)日本人自らの日本の歴史と伝統を漬してゆくのを、歯噛みしながら見てゐなければならなかつた。 そして、われわれは、 ③今や自衛隊にのみ、真の日本、真の日本人、真の武士の魂が残されてゐるのを夢みた。】
山本七平bot @yamamoto7hei
⑦それであるにもかかわらず、 【④法理論的には、自衛隊は違憲であることは明白であり、……(それが)御都合主義の法的解釈によつてごまかされ、(そのごまかしが)日本人の魂の腐敗、道義の頽廃の根本原因をなして来てゐるのをみた。】
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⑧以上がいわば第一段ですが、氏の主張の当否は別としても、少なくともその論理は通っております。ついで第二段に入り、 【①我々は(こういう腐敗・頽廃の中での)戦後の余りに永い日本の眠りに憤った。(そして)自衛隊が目ざめる時こそ、日本が(この眠りから)めざめる時だと信じた。】
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⑨従って、 【②憲法改正によつて、自衛隊が(違憲でなくなって)真の国軍となる日のために、国民として微力の限りを尽すこと以上に大いなる責務はない、と信じた。】
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⑩それゆえに、 【③四年前、私はひとり志を抱いて自衛隊に入り、その翌年には楯の会を結成した。 (楯の会の目的は)憲法改正がもはや議会制度下ではむづかしければ、治安出動こそその唯一の好機であり、われわれは治安出動の前衛となつて命を捨て……建軍の本義を回復するであらう。】
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⑪そのようにして 【④国のねぢ曲つた大本を正すといふ使命の為、我々は少数乍ら訓練をうけ、挺身しようとしてゐたのである。】 ここで第二段に入ります。 氏はまず佐藤総理訪米前のデモが警察力のみで鎮圧された状況を見て、 【①「これで憲法は変らない」…治安出動は不用になつた。】
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⑫【政府は政体維持のためには、何ら憲法と抵触しない警察力だけで乗り切る自信を得、国の根本問題に対して頼つかぶりをつづける自信を得た。】 と判断しました。 そしてこの点に関する限り、どの政党も全く同じように「天秤の論理」であって、(続
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⑬続>【②憲法改正は政治的プログラムから除外され、相共に議会主義政党を主張する自民党と共産党が非議会主義的方法の可能性を晴れ晴れと払拭した。 そこでこの日に憲法で否定された非合法の武装集団が ③「護憲の軍隊」として認知されたのである。これ以上のパラドックスがあらうか】
山本七平bot @yamamoto7hei
⑬【……自らを否定するものを守るとは、何たる論理的矛盾であらう。 ④かくなる上は、自らの力を自覚して、国の論理の歪みを正すほかに道はない……。】 というように『檄文』は理路整然と進められ、いよいよ最終的結論に入ります。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑭私が…「氏の誤りは、このような状態は戦後の日本のみの事であって、昔はそうではなかったと考えた事でした」 と述べましたのは、冒頭の主張とこの結論です。 即ち 【国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場凌ぎの偽善に陥り、自ら魂の空白状態に落ち込んでゆく】
山本七平bot @yamamoto7hei
⑮【日本を日本の真姿に戻して、そこで死ぬのだ】 【我々の愛する歴史と伝統の国、日本だ。これを骨抜きにしてしまつた憲法に体をぶつけて死ぬ奴はゐないのか…我々は至純の魂を持つ諸君が、一個の男子、真の武士として蘇へる事を熱望する余り、この挙に出たのである】 とのべたその事です。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑯問題はここです。 氏は『柳子新論』と非常に似た論理の進め方で、 現代の日本はその根本に歪曲と偽善があるから、これを正して「日本の真姿」に戻すことが第一だ、 とのべているわけですが、 実は、そういう「真姿」は「天秤の世界」には実在しないのです。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑰氏のいう「真姿」は、恐らく日本よりもむしろ西欧の「真姿」に近いものでしょう。 従って氏が「体をぶつけて死ぬ」と言った相手は実は「憲法」そのものでなく、この憲法への日本人の態度に表象される「日本教」そのもの、すなわち「天秤の世界」であった筈です。

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