ニンジャカタナLocation#225 Chapter15『空に道 海に光.03』
こんばんは! 今からTLで公開する『ニンジャカタナ』は、カクヨム上で公開している作品の最新話部分になります。全話URLはこちら! kakuyomu.jp/works/11773540… pic.twitter.com/67sXj4o7nT
2016-04-20 22:46:59全長1000メートルを越える巨体に緑光の裂傷が奔る。大きく縦に切り裂かれ、苦痛を感じているかのようにのけぞるフォートレス。斬撃の傷跡から膨大な緑光があふれ出し、その巨体が大きく湾曲。中央の裂傷に向かい、僅かずつ飲み込まれていく。 「やったの!?」 「いや、こっからだ!」
2016-04-20 22:50:25次元跳躍。 この世界において、超越者だけが有する別次元への転移能力。 カタナは今、オールセル全土から集結した力を借り、フォートレスへの強制転移を敢行。眩いばかりの緑光のゲートは、カタナの斬撃を中心としてフォートレスの長大な全身を別次元へと放逐しようとしていた。 だが――。
2016-04-20 22:51:35「――きやがった!」 突如として、裂傷から逆流するかのように出現した紫色の閃光がフォートレスを包む。先ほどまで飲み込まれる一方だったフォートレスの動きが止まり、紫光と緑光の放射が激突。幾筋もの光の奔流が多頭の蛇の如く天空でのたうつ。
2016-04-20 22:54:08フォートレスを境界面に繰り広げられる、双方の主に属するエネルギー同士の攻防。大空を二つに引き裂くその光景は、真に人知を越えた、超越者同士の戦い――。 「くそっ、どっから動かしてんだ!」 「何か、私に手伝えることは!?」
2016-04-20 22:58:06速度を落とし、大きくフォートレスの周囲を旋回するクリムゾンアップル。カタナは機上で額に手を当ててうずくまり、大粒の汗と共に呼吸を乱す。 「なんでもいいんだ、動かしてるやつのことがわかれば――」 「――演者<<プレイヤー>>、です」 「え?」
2016-04-20 22:59:10細々と、消えるような声。 しかし、激しい大気の振動と激突の中にあって、その声はリーゼにもはっきりと届いた。 先ほどのカタナとのやりとり以降、後部座席にうずくまっていたブルマン・モロー。 その彼が、不意に口を開いたのだ。
2016-04-20 23:00:37「クランにフォートレスの投入を依頼したのは私です――。フォートレスを動かす権利を持っている人物のことを、クランはそう呼んでいました――」 「やっぱり、あんたのせいでっ!」 「待ってくれ! ありがとな、おっさん。それだけわかれば十分だ!」
2016-04-20 23:02:25怒りに声を震わせるリーゼを制し、カタナはモローに力強く頷いた。彼の瞳が再び緑光に染まり、全身が緑光の粒子を纏う。彼が見上げる先は、緑光と紫光が拮抗するフォートレス。 「カタナ!あなたまさか、モローを許すの!?」 「俺に許すも許さねーもないさ。それを決めるのは、ここの皆だろ?」
2016-04-20 23:04:54カタナの態度に憤慨したリーゼが声を上げる。だが、カタナはそんなリーゼに笑みを向け、再び立ち上がると大きく周囲を見回した。
2016-04-20 23:05:58「――私こそ、勘違いしてもらっては困りますな!あなたにこの情報をお渡ししたのも、フォートレスなど使わずに儲ける方法をたった今思いついたからです!無論、あなたがアレを止められなければ、予定通りオールセル中の人々から汚染の除去を破格で請け負います!全ては利益のため!フッホホホ!」
2016-04-20 23:07:16「モロー……っ!」 「心配すんな!汚させやしねーよ。あんたが言ってた魚、絶対に食うからな!」 そう言って向けられるカタナの視線を、モローは今度こそ受け止める。そして、本当に、本当に少しだけ――口の端を上げてひきつった笑みを浮かべた――。
2016-04-20 23:09:44「――やっぱり、あなたって本当に勝手ね」 「なにがだよ?」 降り注ぐ光の放射。その光に照らされてリーゼが呟く。 「モローのこともそう。それに今だって、また一人で行こうとしてるじゃない!」 どこか寂しそうな色を帯びたリーゼの声。
2016-04-20 23:13:01が、リーゼは一度嘆息すると、穏やかな笑みを浮かべた。 「――ボロボロで戻ってきちゃダメよ。優勝チームは後で写真撮るんだから」 そしてカタナの瞳をまっすぐに見据え、言った。 「早く戻ってきて。もしまた落ちてきても、何度でも私が拾ってあげる!」 「ああ、行ってくる!」
2016-04-20 23:15:28緑光と紫光。交錯する粒子が迸る空中。二人の視線が確かに交わり、離れる。 カタナは跳んだ。倒すべき相手が待つ、ここではない別の次元へと――。
2016-04-20 23:16:03「聞きたいことは沢山あるけど、どれくらいもつかな?」 停滞は一瞬。演者は再び激しく両腕を振り回し、その長い黒髪を振り乱して踊る。空を掻き、大気を掴む。演者の周辺領域が様々な色に輝き、その輝きは波となって遙か彼方へと伝播する。その波の先、緑光の主、カタナを出迎えるために――。
2016-04-20 23:19:06「重いな……」 正体不明の白い雲を突き抜け、何もない、音すらしない世界を飛行するカタナ。その側で、先ほどの雲に触れた緑光が火花を上げる。
2016-04-20 23:22:04カタナは視界を巡らせる。 その先の光景は、青く沈む領域と、赤く輝く領域とにはっきりと分かれている。前者はほぼ絶対零度。後者は数十万度に達する。常人がこの世界に足を踏み入れれば、即座に分解されてしまうだろう。 ((待ってたよ。一度、こうしてニンジャを見てみたいと思ってた))
2016-04-20 23:23:40虚空を飛ぶカタナの周囲から響く声。その声は少女のようでもあり、少年のようでもあった。 カタナは飛翔速度を上げる。この世界に響く音は、どこからか聞こえるその声だけだ。 ((その光、綺麗だね? でもおかしいな――。見えるのに、掴めないなんて)) 「――っ!?」
2016-04-20 23:25:49虚空が歪む。 各色の領域がありえない速度で再配置され、プラズマの放電がほとばしり、超重力の渦が生まれ、四次元上には存在しない粒子がジェットとなって世界に飛び出す。時の流れが、加速する。
2016-04-20 23:27:44吹き出した粒子はカタナの認識時間を越えて姿を変え、その全てが大小様々なフォートレスへと成長、数秒前まで淀んだ大気と色しか存在していなかった果てなき世界が、数万を超えるフォートレスという、絶望の黒に覆い隠される。
2016-04-20 23:28:59((ここは僕の世界。あのメダリオンも、ここでは僕を倒すことはできなかった――)) 背後から人間と変わらぬ大きさのフォートレスが追いすがる。数は軽く千を超えるだろうか。前方にはカタナの進行方向全てを塞ぐフォートレスの頭部。全長数百キロにも及ぶ、途轍もない大きさのフォートレス――。
2016-04-20 23:31:08