ニンジャカタナLocation＃225 Chapter15『空に道 海に光.02』

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

今からＴＬで公開する『ニンジャカタナ』は、カクヨム上で公開している作品の最新話部分になります。本編はURLはこちら！ kakuyomu.jp/works/11773540… それでは、しばしTLをお借りします！ pic.twitter.com/15EwyEftPo

拡大

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

前回までのあらすじ：巨大商業圏オールセルを襲ったテロ集団「クラン」。クランの最終兵器フォートレスは、全長１ｋｍを越える巨体と、例え破壊されても周囲に重大な環境汚染を引き起こす殺戮兵器である。カタナとリーゼはこの兵器を止めるべく、モローを連れて単騎空へ上がった。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

すでに力が尽きていたカタナを救ったのは、オールセルを憎悪しつつも、誰よりもオールセルのことを理解していたモローの記憶だった。残された力で記憶の伝播を引き起こし、オールセル全土のミドリムシを覚醒させたカタナは、迫るフォートレスに対し最後の決戦を挑む。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

ニンジャカタナLocation＃225 Chapter15 空に道 海に光.02 ―――――――――――◆

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

――フォートレス。 全長１２００メートル。重量２０００万トン。動力不明。全身に多数の火砲、誘導弾頭を搭載し、頭部には超高圧重粒子砲を備える。 機体内部には動力変換後の排気物質が滞留しており、これが外部へ飛散した場合、重大かつ非可逆的な環境汚染を引き起こす。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

かつてフォートレスと交戦したユニオン第四基幹艦隊の記録には、正面から対抗できるのは上位超越者のみ、と記されている――。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

緑光に照らされ、巨大な黒い影をオールセルに落とすフォートレス。不快な軋轢の音を響かせながら、巨体がゆっくりと旋回し、その単眼がクリムゾンアップルを認識。操縦桿を握るリーゼのゴーグルに、紫色の発光が反射する。 「どうするの？　あれを壊したらオールセルが汚染されちゃうんでしょ！？」

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「心配すんな。俺があいつを別の次元に吹っ飛ばす！」 カタナは答え、先程から集まり続けていた緑光の粒子をその手に握るブレードに収束。研ぎ澄まされた光刃へと変じる。 「ただ、あいつがでかすぎて全力じゃないと吹っ飛ばせねえ！」 「――ミドリムシの無駄使いはできないってことね？」

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「それと、もう一つ厄介なのが――」 加速するクリムゾンアップル。迎え撃つフォートレス。全身を覆う装甲板が一斉に解放。その下に現れる数千の火砲。それら全ての銃口が、機械的な動作で深紅の機体を捉えた。　 「――あいつを操作してるやつが、どっかにいるってことだ！」

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

閃光。爆発。降り注ぐ弾丸と榴弾の雨。こちらの機動を狭める誘導弾頭。 黒に染まった空の下、次々と豪炎の花が咲く。その間隙で深紅の機体が一筋の白線とともに弧を描く。 「そんな、狙いでっ！」 上下への鋭角な機動、僅かでも触れれば大破確実の弾幕を紙一重で躱すリーゼ。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「おぉらああああああ！」 そこへ迫る更なる追撃。上下左右、全方位から迫る誘導弾頭。カタナは裂帛の叫びと共に光刃を延伸させ、天上にすら達しようかという緑光の刃で長大な正円を描く。 一瞬の停滞――のち、弾頭全てが一斉に炸裂。円状に爆発した炎を貫通し、深紅の飛空挺が更に加速する。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「それがどうして面倒なの！？」 「そいつがいたら、吹っ飛ばしてもすぐに戻ってくる！」 「次元跳躍をカウンターするってこと！？　それじゃあ、クランにも超越者が――」 その時、クリムゾンアップルの左後方を黒い影が横切る。リーゼは咄嗟にスロットルを引き倒し急減速、眼前を機銃が掠める。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

確認するまでもない、すでに複数の機影がクリムゾンアップル周辺へと群がり始めている。 「こんな時に――！」　 先ほどリーゼ達が散々に追い散らしたクラン戦闘艇群。フォートレスの攻撃でオールセル側の飛空挺が壊滅した今、彼らを止める者もまたいない。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

リーゼは前方を塞ぐ一機をガンバンジーで振り回し、後方から迫る戦闘艇へと叩き付けて殲滅、一瞬の交錯で四機もの戦闘艇を撃墜する。 だがその程度の損失は焼石に水、先程までとは違い、統制された波状攻撃を見せるクラン戦闘艇の包囲に、リーゼ達はフォートレスへ近づくことができない。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「こいつら、さっきとぜんぜん動きが違うじゃない！？」 「よし、俺が――！」　 「それには及ばん！　ここは我々に任せてもらおう！」 正面から迫る敵機が直上からの攻撃で爆散。その黒煙を突き抜けて出現する黄金の飛空挺と、その飛空挺にぴったりと付き従う三機のユニオン戦闘艇。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「ラジャンさん、無事だったの！？」 「我々を舐めてもらっては困る。レースには勝てなくとも、私の本職は戦闘なのでな！」 「国民を守るのも私達の任務です。とはいえ、今はあなた方に頼る他ありませんが――」 ブリューナクの後部座席から、長大なロングバレルを覗かせてアニタが微笑む。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

彼女だけではない、ブリューナクに続く三機の戦闘艇からもそれぞれのパイロットが顔を出し、二人に向かって笑みを向けていた。 「アンネリーゼ、そしてカタナ！　雑魚共は我々が引き受ける。ユニオン最速の称号――伊達ではないことを証明してみせろ！」

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

ラジャンはコクピットから僅かに身を乗り出すと、指先を揃えてリーゼへと敬礼を決め、不敵に笑ってブリューナクの機首を翻す。狙いは数十を超えるクラン戦闘艇。 クリムゾンアップルの盾となるように散開したラジャンの編隊は、それぞれ複数の敵機と交戦、熾烈なドッグファイトへと移行する。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

「わかった、あんたも気をつけろよ！」 「ありがとう！」 交錯する戦闘艇を背後に、深紅の機体は一直線に上昇加速。緑光の粒子が一筋の閃光となって空に昇る。その機動をトレースして放たれる無数の対空砲火。緑光の線上が次々と爆炎と黒煙に塗りつぶされ、加速する深紅の機体に追いすがる。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

すでに機体の速度は限界。エンジンが悲鳴を上げ、機関部が猛烈な熱を持っていることがコクピットからもわかるほど――。全てのメーターが真っ赤に振り切り、操縦桿がぶれ、主翼が大きく振動する。だがリーゼは加速を緩めない。一瞬でも出力を抑えれば、砲撃に飲み込まれ死ぬからだ。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

そしてなにより、彼女はクリムゾンアップルを信じていた。 三年――、共に数え切れない程の死線を越えてきた、この愛機の力を。 「大丈夫――、あなたと私なら、どこまでだって飛べる！　カタナ、一気にいくわよ！」 「ああ！　やってくれ！」

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

フォートレスが出現した黒雲直下、雷雲突入の寸前で大きく弧を描いたクリムゾンアップル。尚も追いすがる砲撃を躱し、深紅の機体は眼下のフォートレスめがけて最大加速。位置エネルギーすら利用したその加速は機体の限界速度を越え、一筋の光の矢と成った。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

迫るクリムゾンアップルめがけ、フォートレスから放たれる無数の弾丸、しかし――。 「どう？　ここからじゃ、まともに狙えないでしょ！」 人型を成すフォートレスの構造上、その武装は全面と背面において最大の火力を発揮する。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

直上からの急降下に対応できる火砲は僅かであり、斜線も大幅に制限されてしまう。そんな砲撃を回避するなど、彼女にとっては造作も無いこと。 「接触まで１５秒！」 散発的な弾幕をかいくぐり、急降下を続けるクリムゾンアップル。だがその時、フォートレスの単眼が深紅の機体を捉える。

りゅーるー＠ここのえ九太郎 @Fw009

瞳孔の収縮にも似た紫色の明滅。リーゼの脳裏に先ほどの閃光が蘇る。オールセル全土を切り裂いた高圧粒子砲。 （回避――してみせる！　でもその後は――） リーゼは即座に無数の回避パターンを模索する。直撃は回避可能――だが、その後に襲い来る大気を震わせる衝撃波と気流の乱れは――。