アマヤドリ 広田淳一による「俳優の演技が自己完結になってしまうことについて」

演技が自己完結しないために必要なことを、劇作家・演出家・俳優の広田淳一が語った。
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広田淳一 @binirock

もちろん、本番では成功したい。失敗したくない。そのためにできることは、準備だ。それも、入念な準備。繰り返し稽古をし、集中力を高め、心を整えて本番に臨む。本番の最中に、焦って何かを取り繕おうとしても無駄。潔く、手放す。

2016-04-25 09:16:08
広田淳一 @binirock

自分がいかに自分を守っているか、できる私、を維持しようとしているか。その涙ぐましい「努力する私」を、愛を持って受け入れて、そして、捨てろ。私は、私。何もない。何もできない。それでも、私は私。その、手ぶらの、裸の、無防備な、とても怖い場所から演技を始めること。大丈夫、死にゃしない。

2016-04-25 09:18:19
広田淳一 @binirock

このシーンはこのぐらいテンション上げなくちゃ、このぐらい緊張感高めなきゃ、という焦りから、自分を開放してあげる。自由にしてあげる。その時、何もない、空っぽの演技になってしまうかもしれないことを覚悟する。代わりに、集中して、ちゃんと見る。ちゃんと受け取る。ちゃんと聞く。

2016-04-25 09:20:15
広田淳一 @binirock

もし、目の前に血だらけの男が突然現れて「交番はどっちですか?」なんて聞かれたら、人はぎょっとするだろう。血の気が引いてしまうかもしれない。恐怖で顔が引きつるかもしれない。人は、人を見るだけで、反応する。「怖そうな顔をしよう」なんて思わなくても、受け取れば、そうなる。

2016-04-25 09:23:01
広田淳一 @binirock

自分から動くことを、勇気を出して一旦やめて、耳を澄まして、体を澄まして、ただ、そこにいる。共演者から、観客から、空間から、世界から、少しでも、わずかでも動かしてもらった感覚をつかむこと。そして自分も、手を伸ばす。

2016-04-25 09:25:32
広田淳一 @binirock

演じることは、行動することは、いつも、何かに対しての働きかけだ。言葉を発することは、ただの振動じゃない。対象に向けての、働きかけだ。台詞が届かないと言われる人は、一歩足を前に出してみる。それだけで少し変わるはずだ。重心を相手にかける。重さを、預ける。

2016-04-25 09:27:55
広田淳一 @binirock

とんでもない重さを相手に預けるために、信頼がいる。裏切られても、期待はずれでも、がんばって、信じる。いや、賭ける、とでも言った方がいいだろうか。負けても、また、賭ける。自分が信頼に足る人間かどうか、自信が無い人もいるだろう。僕もない笑 僕は、相手に、信頼してもらえるほどの人間か。

2016-04-25 09:30:12
広田淳一 @binirock

自分の弱さも、ズルさも、卑劣さも、安っぽさも、怠惰も、無知も、見栄も誤魔化しも、ウソも、自分からはよく見えている。見えていたほうがいい。だってそれは、舞台上ではすべてバレるから。ああ、恐ろしい。せめて、正直に。大したものではないけれど、自分はこれです、と。偽らないで済むように。

2016-04-25 09:33:24