アンヴェイル・ザ・トレイル #3

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アンヴェイル・ザ・トレイル】#3 後編

2016-04-24 23:21:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

学生寮屋上のアンテナ装置に取り付いていたイッキ・ウチコワシのニンジャ、エヴリマンは、グルリと首を巡らせ、宙を渡るように跳びくる存在を警戒した。その者は空中に飛び石でもあるかのように、足元で桜色の閃光を散らしながら跳んでくる。

2016-04-24 23:27:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

既にアンテナはエヴリマンのジツの影響を受けてより高く金属の枝を伸ばし、屋根瓦に深く根を下ろしていた。「イヤーッ!」エヴリマンは先制して空中のニンジャめがけスリケンを投擲した。「イヤーッ!」女のニンジャは宙返りして飛来スリケンを躱し、瓦屋根に着地した。二者は睨み合った。

2016-04-24 23:29:40
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「ドーモ。イッキ・ウチコワシの徹底戦士にして革命工作員、エヴリマンです」「ドーモ。ヤモト・コキです」どちらが示すでもなく、互いにアイサツした。ヤモト・コキが渡ってきた空を、桜色に光るオリガミの残骸が落下していった。エンハンスしたオリガミを宙に浮かべ、それを踏み台にして来たのだ。

2016-04-24 23:33:14
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「貴様アマクダリ・セクトの尖兵か?」エヴリマンは鞘からニンジャソードを抜きながら問うた。なまくらの刃に鍾乳石めいて金属が育ち、禍々しい刀身を作り出す。「違う」ヤモトは否定した。「ここで何をしてる?」下で寮を囲む者達を見る。エヴリマンは眉根を寄せる。「反動勢力でなくば敗北主義者か」

2016-04-24 23:39:54
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「……アマクダリと戦っている?なら、どうして学生寮を」「あくまで質問に質問で返すか、小娘。これは高度に理論化された闘争であり、疑義提出それ自体が反革命的資質の証明だ」エヴリマンはカタナを構え、すり足で間合いをはかる。ヤモトも動き出した。そして、なお問うた。「どうしてだ!」

2016-04-24 23:48:19
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「アイエエエ!」その時、寮の一階窓を破って学生が飛び出し、敷地から脱出をはかった。ウチコワシ戦闘員の包囲網がそれを阻み、囲んで棒で叩いた。「強制!」「進歩!」「徹底!」「アイエエエ!」ヤモトの表情が険しくなった。エヴリマンは言った。「理論的な計画だ。闘争に犠牲はつきものである!」

2016-04-24 23:51:27
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「何をしようとしてる!」「電波だ」エヴリマンは答えた。背後のアンテナを守るように足を運ぶ。アンテナはいまだ天を指して成長を続けている。「この地点は純粋闘争施設だ。是が非でもウチコワシの手中にせねばならん。電撃的速度で接収し、アマクダリの反動勢力が到着する前に行動を開始する」

2016-04-24 23:57:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうして中の人達を閉じ込める」「敗北主義の学徒はせめて闘争の礎となるべし。まあ要は、恐慌に駆られた連中が抵抗したり通報したりすればそれだけ我々の計画に支障が出る。それだけの事だ」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヤモトは打ち込んだ。エヴリマンは打ち返し、毒づく。「アマクダリの犬め!」

2016-04-25 00:02:34
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「何がアマクダリだ!イヤーッ!」「イヤーッ!」ヤモトは自剣カロウシで激しく打ち込んだ。だがエヴリマンのワザマエは油断ならぬものであった。「自発的にアマクダリを利する行動をとる以上、それは反革命である。我々の闘争を阻害するものはアマクダリに等しい!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

2016-04-25 00:09:32
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ヤモトは刀身に桜色を帯びたカロウシで熾烈な連続攻撃を繰り出す。エヴリマンは眉根を寄せる。自剣にその桜色が侵食してゆく。彼はジツを用い、刀身を覆う金属を剥がして侵食を振り払い、新たな金属を育てた。「イヤーッ!」ヤモトは斬撃を側転で躱し、間合いを取る。腕に赤い一筋。

2016-04-25 00:12:39
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ヤモトの知る由もないことであるが、エヴリマンは元々は革命資金で雇い入れられたヨージンボであり、今回のウチコワシの作戦に必要な工作員であると同時に、手練の戦士でもあった。「充分にアンテナ補強が為されたぞ!」ヤモトを牽制しながら、エヴリマンはトランシーバーに叫んだ。「徹底行動せよ!」

2016-04-25 00:16:30
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KRAAASH!「グワーッ!」その時、彼らのイクサの下で窓ガラスが破砕し、投げ出されたのは……ウミノである。やや遅れてもう一人が飛び出し、窓枠を蹴って、ウミノを抱え、共に転落した。フィルギアである。その一秒後。ピイイヨオオオオ……奇怪な音が鳴り響き、空気を揺らした!

2016-04-25 00:22:45
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「ンアーッ!?」ヤモトは反射的に頭を手で押さえ、膝をついた。ナムサン!致命的な隙!しかし「グワーッ!」エヴリマンも同様だ!彼らの居るアンテナ付近の空気は陽炎めいて歪み、二者はもはや戦闘継続不能、瓦屋根の上で苦悶する!その時だ!KABOOOM!大通りを挟んだビル街で爆発が起こった!

2016-04-25 00:26:18
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高層ビルの一つが瞬時に火柱と化したかのようだった。学生寮備え付けのスピーカーが奇怪なノイズを放つ。ピュイイイ……再び空気が歪む!ヤモトは一度手放したカタナを再び掴み、立ち上がろうとした。だが、よろめき、そのまま下へ転がり落ちた。KABOOOM!上空のマグロツェッペリンが爆発した。

2016-04-25 00:29:46
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ピュイピュイピュイピュイ、ピュイイイ!KABOOOM!更に数区画離れた地点の「亀阿三四郎時代」と書かれたネオン看板を掲げたビルが火柱を噴き上げた。まるで巨大な蝋燭だ。「グヌーッ!」瓦屋根の上で這いつくばり、エヴリマンは目から出血しながら歓喜した。「革命成ったぞモジュラー=サン!」

2016-04-25 00:34:07
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学生寮のラジオブース内ではそのモジュラーがツマミ類を動かしながら呵々大笑していた。「ハッハハハハハ!これこそまさに革命鉄槌である!」彼の腕部モジュレーション・デバイスはヴィンテージ機材に複数のワイヤーケーブルによって有線接続され、その足元では繰り返し殴られたミューラが虫の息だ!

2016-04-25 00:38:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モシモシ!」モジュラーはマイクに向かって叫んだ。「我々は徹底革命組織イッキ・ウチコワシである!諸君らがこの放送を理解する必要は特に無い。今後、この周波数域を用い、徹底的な武力闘争を行っていく。活目せよ!」屋上のアンテナが回転し、巨大ブッダ像の方角を向いた。KRA-TOOOOM!

2016-04-25 00:46:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!モジュレーション・ジツの極度増幅によってもたらされた無差別のマイクロウェーヴめいた遠隔攻撃がネオサイタマ市民社会に牙を剥いた!学生寮を囲むウチコワシ戦闘員は周辺ストリートにバリケードを展開し、ハイデッカー部隊とせめぎあう。アンテナが回転し、次の標的を探す!

2016-04-25 00:52:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ト=サン!ヤモト=サン!」アサリがヤモトを激しく揺さぶった。ヤモトは目を見開く。いない。夢ですらない、一瞬のヴィジョンだった。現実に見つめるのはアサリではなく、ウミノとフィルギア。「……アー、何よりだ」フィルギアは呟いた。「二人を引っ張ってこの状況を切り抜けるってのは……」

2016-04-25 01:03:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「敵が」ヤモトは跳ね起きた。「まだ……!」「ここは学生寮の庭。キミが落ちてきたのは5秒前。俺等が落ちたのは20秒前。つまり、事態はまだ何も……」「そこで何をしている!」敷地内を巡回する包囲戦闘員が藪の影の彼らを見咎めた。フィルギアは舌打ちし、変身した。「GRRR!」「アバーッ!」

2016-04-25 01:07:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

負傷したコヨーテはウチコワシ戦闘員の死体を踏みつけて振り返った。そして言った。「ウチコワシが何か、おッぱじめたみたいでさ。ともあれ、ウミノ=サンはこうして確保できたから……」『これが市民の声だ!アマクダリ政府よ、我らの行動を知るがいい。革命鉄槌によって我々はセプクを要求する!』

2016-04-25 01:11:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……笑える」フィルギアは呟き、人の姿に戻った。「メチャクチャやってやがるけど、こんな連中、10分と保てばイイとこ……巻き込まれるまえに俺らはサラバしないと」「キミ」ウミノがヨロヨロとフィルギアに近づき、震える手でいきなり腕を掴んだ。「ひャア!」フィルギアは反射的に悲鳴を上げた。

2016-04-25 01:18:42