暴風雷霆

ダレイオスの幕間、第二幕がこういう感じだったんだよという妄言。 オリぐだ注意と書いておけばいいんだろうか。
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里村邦彦 @SaTMRa

【僕は確かにこれを見た】【歴史的な考証は気にするな】【越えて行け、越えて行け、七つの特異点を越えて行け】

2016-04-30 22:48:31
里村邦彦 @SaTMRa

地の果て、空の果て、かわき果てた砂塵に。 ときの、こえが、あがる――。

2016-04-30 22:50:25
里村邦彦 @SaTMRa

それは勇壮なる、それは豪壮なる、無比の戦列。 かつて世の果てを目指し、全てを手にせんと願い。 見果てぬ夢をともに抱いた、偉大なる英雄の軍団。 雷霆なりし征服王、尊き幻想、宝具《王の軍勢》。

2016-04-30 22:55:59
里村邦彦 @SaTMRa

地が果てるまで、地が果てるとも駆け抜けるもの。 その行く手を阻むことは、何者であれかなわない。 この世にあるものである限り。誰であれ。けれど。 ああ。彼らは立ち上がる。英雄と、戈を交えんと。

2016-04-30 22:58:59
里村邦彦 @SaTMRa

彼らは英雄ではない。彼らに身を焦がす情熱はない。 彼らは英雄ではない。彼らに熱くたぎる血潮はない。 彼らは英雄ではない。彼らに強く雄叫ぶのどはない。 虚ろな眼窩。削げ落ちた黒い骨。死者。死者の軍団。

2016-04-30 23:02:53
里村邦彦 @SaTMRa

声なき死者の軍団に。ただ一人、声を放つ者がある。 死者の軍団を引き連れて、巨体、黒の王が咆哮する。 黒の王、双腕に掲げるは、此世のものでない緑の炎。 ああ。彼こそは、暴風なりし大王、ダレイオス三世。

2016-04-30 23:07:55
里村邦彦 @SaTMRa

黒き死者、髑髏の兵団こそは、《不死の一万騎兵》。 大陸に鳴り響く勇名、破壊の暴風王が偉大なる幻想。 一万からなる不死者の軍団。英雄の軍勢と対峙する。 暴風王は言葉を失った。故に名乗り合うこともなく。 征服王の呵々大笑とともに、両軍は猛烈に激突した。

2016-04-30 23:12:37
里村邦彦 @SaTMRa

蹄が砂塵を蹴散らす。進軍の音は、雷鳴のように。 勇壮なるは、無比なるは、征服王の《王の軍勢》。 剣が閃く。槍が風巻く。放たれた弓。踏み砕く蹄。 黒き死者の兵団は、力の差に打ち砕かれるばかり。 暴風王の双斧のみが、雷の瀑布を塞き止めている。

2016-04-30 23:17:22
里村邦彦 @SaTMRa

戦は一方的に、蹂躙と終わるものかと見えた。 ああ。けれど。暴風王もまた、偉大なる英雄。 ああ。見よ。大地から再び立ち上がる者たち。 それは黒い死者の兵団。《不死の一万騎兵》。

2016-04-30 23:19:15
里村邦彦 @SaTMRa

決して死ぬことなく、終わることなく、王に従い戦う軍団。 その数は一万。砕かれれば幾度でも立ち上がる。ばかりか。 砕かれた黒い髑髏が、組みあがり、絡み合い、姿を変える。 立ち上がる。黒い山。蠢く死者の塊。それは即ち死の巨象。 魁偉なる怪異は音なき咆哮をあげ、敵軍へ猛進を開始した。

2016-04-30 23:23:26
里村邦彦 @SaTMRa

これこそがダレイオス三世が宝具、《不死の一万騎兵》。 《王の軍勢》が、当千の千騎からなる百万であるならば。 《不死の一万騎兵》は、不滅ゆえ無量に比す一万である。 死の巨象を取り巻いて、さらに無数の死者が立ち上がる。 率い暴風王が突撃する。征服王が激突する。大笑。咆哮。

2016-04-30 23:29:10
里村邦彦 @SaTMRa

むろん、代価はある。猛烈な脱力感に霞む目で見ていた。 ダレイオスはサーヴァントだ。魔術師と契約し顕界する。 巨大装置で補われ、莫大量あるはずの、マスターの魔力。 英霊六騎使役を可能とするそれが、今、枯れかけていた。 強烈な寒気。目眩。間近のマシュの声すら遠く聞こえる。

2016-04-30 23:32:50
里村邦彦 @SaTMRa

ごめんね。これが終わったら、いろいろ聞いてあげるから。 この戦いばかりは、この一戦だけは、果たさねばならない。 あの優しい狂戦士が。六つの時をともに駆け抜けた相棒が。 出会った時からただ一つ、狂った心のなかにあって、なお。 消されることなく、思い描き続けてきた夢なのだからーー。

2016-04-30 23:34:56
里村邦彦 @SaTMRa

幾体もの死の巨象が、一時に、光の刃と打ち砕かれる。 英霊軍の宝具だ。再生のため、魔力が流れだしていく。 ああ。いかにもこれは大げさすぎる。これじゃ神話だ。 黒の王が望んでいたのは、当たり前の戦争だったけど。 戦いの中心は、二人の大王の激突へと流れ込んでゆく。

2016-04-30 23:38:42
里村邦彦 @SaTMRa

掌に爪を立てて、唇を噛み破って、ただ耐えていた。 倒れてはいけない。この戦いを、妨げてはいけない。 夢の一つも現実にできないで、何の世界を救えるか。 激突が全てを削りとってゆく。無比と不滅の双方を。 巨象が消え、英雄軍が消え、雷霆と暴風だけが残る。

2016-04-30 23:41:05
里村邦彦 @SaTMRa

最後に交わされた言葉もよく飲み込めないまま。 悲鳴のようなマシュの声は辛うじて聞き取って。 意識は暗闇に沈んでいく。 また、地の果ての夢を、見るのだろうか。

2016-04-30 23:42:15
里村邦彦 @SaTMRa

TLにえんえんと失礼。せめてこんくらいのテキストはあったものと思ってるんですよ! あの幕間!

2016-04-30 23:42:40