カナダの大学生に浦島太郎を読ませると

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It happens sometimes @ElementaryGard

1)カナダの大学で日本語を教えている日本人による面白い逸話を紹介します。「亀が子どもらにいじめられているのを、浦島太郎は助けてあげました」 これが生徒には難しいそうです。英文法でも仏文法でもありえない文だから。

2016-05-02 11:27:34
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2)「子どもらにいじめられている亀を、浦島太郎は助けてあげました」でないとおかしくありませんか?と聞き返されるそうです。関係代名詞の考え方でいくとそうなるのだけど。

2016-05-02 11:29:03
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3)この文における「の」は、英文法でいう that 名詞節。「『亀が子どもらにいじめられている』のを、浦島太郎は目にしました」という文中で『』でくくられている部分が名詞節であると英文法の考え方では説明します。そして「の」は that と同じ機能を担う。

2016-05-02 11:32:39
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4)ところがこの場合の「の」はそれ以上の機能を担う。ここで一度文を区切る機能です。「亀が子どもらにいじめられている」で一度文を完結させて、この完結文で主語的な位置にある「亀」を今度は目的語的に置き換えて、次の文に繰り込むのです。

2016-05-02 11:35:57
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5)伊藤和夫による翻訳論を思い出してください。どんな言語を使うにせよ、ひとの頭のなかは必ずコンテナ・ユニット式にその言語を理解しているはずだから、そこに着目して翻訳を行えという論。 pic.twitter.com/SoG9GJgxPV

2016-05-02 11:39:13
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6)「亀が~」文における「の」は、この長文をコンテナ・ユニットに分けさせるための目印、合図と考えられます。

2016-05-02 11:41:28
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7)英語やフランス語における関係代名詞の考え方を、語順のまったく異なる日本語に当てはめようとすれば、どうしたって破たんします。

2016-05-02 11:42:14
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8)この日本語教師さんもそこのところをよくわかってらして、やはり今私が述べたような説明を生徒さんにしているそうです。

2016-05-02 11:43:31
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9)このコンテナ・ユニット的な文把握と、関係代名詞や名詞節の that に典型される文構造的把握は、必ずしも一致していない。新幹線の車両はどれも基本的に同じ長さだけど修学旅行で違う学校の生徒たちが同一車両の前後ろにわかれて同乗している場合、その車両中央が境になるように。

2016-05-02 11:56:20
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10)ちょっとねじれた比喩だったかな。文法構造的に文を分割する場合と、ひとの脳みそが一度に把握できるフレーズの長さには限度があるのでそれを分割ユニットと考える場合では、両者にずれが生まれるという話です。

2016-05-02 11:58:10
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11)大統領の就任演説は一文一文がとても長い。それでもラジオで聴いていてちゃんと理解できてしまう。なぜなら文法構造的にはものすごく複雑かつ息が長い文であっても、コンテナ・ユニット的には同一の長さのコンテナが次々と順序よく繰り出されるように草稿が練られているからです。

2016-05-02 12:00:05