- tobirakagi
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どうしたんら、転校生。俺に何か用?…え、怪談?怪談を聞いて回ってるのか。何でまた…ふうん、確かに心霊番組にアイドルを呼ぶなんて話は聞いたりするけど…俺怪談とか体験談なんて…あ。ん、ああいやそう言えば、別に特別怖いって訳じゃないけど、ひとつだけあったな。興味あるなら、聞いていくか?
2016-05-03 15:59:04割とあいつらとユニットを組んで最初の方に、今でもそうだけど光ちんが物忘れが激しすぎるから、手にメモを書かせることにしたんだ。そう、メモ。マジックで。手なら結構目にするし、首からマジックぶら下げておけば、本人以外でも忘れて欲しくない事をさらっと手や腕に書いといてやれて便利だった。
2016-05-03 16:01:29あはは、アイドルとして見た目的にはよくなかったんだけどな?うん、今はやってない。あの頃は俺もたまに光ちんを捕まえてメモを確認してたんだ。たまに書いてても忘れちゃう時もあったから。本人、創ちんや友ちんのメモに紛れて、たまに絵とかも描いてあって和みながら見ていって気が付いたんだ。
2016-05-03 16:02:05長袖の下から、マジックで書いた線が見えたんだ。腕の方まで何が書いてあるのかなって、その時は何も考えずにめくったんだ、そうしたらそこには 『 つ ぎ はぼ く の なま え かく ね』 子供が書き殴ったみたいな、そんな字が、腕いっぱいに書いてあったんだ。
2016-05-03 16:02:36それだけ。たったそれだけなんだけど、俺はその習慣を止めさせた。だって光ちん、だれが書いたか分からないって言うし。気付かない訳ないのに、あれだけ大きく腕に書かれて。それに、何かに、自分の名前を書くって…何だか、嫌な想像しちゃうから。
2016-05-03 16:02:57どうしたのじゃ、転校生の嬢ちゃん。ふむ…我輩の怪談が聞きたいのかや。確かに我輩はそれなりに生きてはおるからのう、いくつかないでもないが…。そうじゃ、一等怖くはない話をしてやろう。くくく、嬢ちゃんが夜眠れなくなってもかわいそうじゃからのう?…それはとある昼間、少しばかり前の事じゃ。
2016-05-03 17:40:50いつも通り惰眠を貪っていた所で、ふと目が覚めた。ぼんやりとしながら何ともなしに外の気配を探るとなるほど、くすくす、くすくすと笑い声が聞こえて、それで目が占めたと知ったのじゃ。ようやく聞き取れる様な、小さな声じゃった。それは、葵兄弟の声に聞こえた…が、同時に何か違和感も感じた。
2016-05-03 17:42:13何がとは言い表せんが、葵兄弟の声を、録音して流しているような。確かに誰かが発しておるはずなのに、人間味を感じさせないような。我輩が起きた事に気が付いたのかは知らぬ、葵くん、の様な誰かはくすくすと笑いながら、ぺたぺた、ゆっくりと素足で床を踏む音をさせて、こちらに近づいてきた。
2016-05-03 17:42:59板を隔て、近くに気配を感じる。笑い声も絶えず聞こえる。くすくす、くすくす。そのまま何分経ったか、我輩は少し外の様子を伺おうかと手を伸ばそうとした。しかし、それには及ばんかった。それは見ておったのじゃ。薄くスキマを開けて、我輩をずっと見ておった。その目は全く、笑ってはおらんかった。
2016-05-03 17:43:31すぐに気が付いたよ、人間の目ではないと。生きたモノの目ではないと。しかし我輩は素知らぬ振りをして笑いかけた、「どうしたのかえ?」、と。そうしなくてはただではすまないだろうと、何故かその時思ったからのう。その目はまるで我輩を真似るように、目だけ笑って、棺桶を閉めて出て行ったよ。
2016-05-03 17:43:50一体アレは何じゃったのか。しかし世の中には触れぬ方がいい、知らぬ方がよい、というものが確かにあるからのう。知ってしまったら、どうなるか。それはきっと、それこそ知らない方がよいのじゃろうなぁ。…ところで、嬢ちゃん。今、お主の後ろで笑い声が聞こえんかったかの。
2016-05-03 17:44:20