映画検閲官のプライド/映画研究者のプライド

木下千花氏の講演に参加された鷲谷花氏の投稿が興味深かったので、備忘にまとめました。
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鷲谷花 @HWAshitani

木下千花さんの待望の溝口健二監督論のご単著が17日に刊行されるわけですが、昨日の神戸映画資料館のご講演も、大変興味深いものでした。大日本帝國の官による映画検閲に携わった検閲官は、患部を切り痕を残さず縫合して病を癒す「外科医」を自負し、映画リテラシーにプライドを持って仕事していたと

2016-05-05 11:46:10

木下千花,2016,『溝口健二論——映画の美学と政治学』法政大学出版局.
【近刊】A5判 / 608ページ / 上製 / 定価:6,200円 + 税
《トーキー化と長回しと縦の構図によって時空間を変容し、植民地主義や女性の人権蹂躙など矛盾をはらむ重層性を女性の身体を通して露呈させ、占領下の女性の解放を言祝ぎ、贈与交換に基づく権力関係に立脚した欲望を演出し、映画概念を拡張し続けた溝口健二に対峙して、ショットを分析記述し、検閲記録や撮影台本などの一次資料調査から、映画史、映画理論、メディア論、身体論、ジェンダー論など学際的な横断において映画学が本来有する力を発揮し、溝口健二の映画へとさらに眼差しを向かわせる画期的研究。》

溝口健二監督『折鶴お千』 | プログラム|神戸映画資料館
5月4日(水・祝)
講演:木下千花「溝口健二と映画史──『折鶴お千』を中心に」
《『折鶴お千』はサイレントかトーキーか? という問いから始まり、神戸映画資料館所蔵のプリントをはじめ、スクリプター資料、検閲台本などのアーカイヴ資料から、溝口映画の形式とテクノロジー、映画産業、政治との密接な関わりを明らかにします。》

神戸映画資料館 @kobeplanet

昨日、木下千花さんの講演資料より、「溝口健二論:映画の美学と政治学」(法政大学出版局、5月17日刊行予定)の目次の一部。h-up.com/bd/isbn978-4-5… pic.twitter.com/nPt27sIc8e

2016-05-05 10:30:11
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鷲谷花 @HWAshitani

「検閲があってよい」わけでは当然ないとして、1945年以前の映画検閲は、「映画に無知な検閲官が何にでも文句をつけて恣意的に切る」イメージとは相当実態が異なり、検閲官の側にも確固たるコードとリテラシーとプライドがあったらしい、ということ

2016-05-05 11:52:16
鷲谷花 @HWAshitani

そして、映画検閲官のプライドとは、相当屈折したものだったらしい、というのも興味尽きないところです。考えてみれば、官僚でもノンキャリア・非エリート、役所内では重んじられず、世間には迷惑がられ、誰よりも映画を見てよく知っていることだけがプライドの拠り所。あら研究者とあまり違わないかも

2016-05-05 11:59:45
鷲谷花 @HWAshitani

そっかあ、あたしたち映画研究者って、映画検閲官と全く無縁じゃないのかあ、というか、映画に詳しくて細部の意味や効果がわかるだけではなく、「外科医」として映画の患部を治療して文化の向上に直接貢献できるとされる検閲官は、世が世なら大学の映画研究コースの希望職種トップだったかも、と考える

2016-05-05 12:11:45