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shiroboshi2
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ジュセー
@shiroboshi2
陰鬱な雲が空に広がり、重金属酸性雨が降りしきる街、ネオサイタマ。雲を泳ぐようにして飛ぶマグロ・ツェッペリンが欺瞞に満ちた広告音声を垂れ流す。その下を歩く市民たちはみな、猥雑な広告音声に関心などもたない。1 #S57Ninja
2016-05-07 21:48:33
ジュセー
@shiroboshi2
こと、理不尽な暴力を受けるアワレな者たちには聞こえるはずもない。「ザッケンナコラー！」「アイエエエ！」「スッゾコラー！」「アイエエエ！」……数人のヤクザに棒で叩かれているのはタケチとミイダの二人だ。彼らに一体何の非があったというのだろうか？2 #S57Ninja
2016-05-07 21:51:06
ジュセー
@shiroboshi2
その理由は至ってシンプルだ。彼らはこのムラサメ・ストリートを通過しようとした。それだけだ。「アッコラー！イヤーッ！」「グワーッ！」タケチの顔面に強烈な殴打が入る！「テメッコラー！イヤーッ！」「グワーッ！」ミイダの顔面に強烈な蹴りが入る！3 #S57Ninja
2016-05-07 21:54:51
ジュセー
@shiroboshi2
二人が蹲ったところに、更に暴力を加えんとするヤクザ達。その時、「まぁまぁ、その辺にしておけよ」と言いながら、新手のヤクザが現れた。彼はニコニコと笑いながら、タケチとミイダに声をかける。「いや、すまんね。暴力はいけない、暴力は……」「「アイエエエ……」」4 #S57Ninja
2016-05-07 21:58:10
ジュセー
@shiroboshi2
「というわけで、極めて温厚かつ平和的な解決方法を提示しよう」そう言って彼は二人に耳打ちした。タケチとミイダは顔を見合わせ、震えだした。「アイエエエ！無理です、そんな大金！」「どうか……」懇願する二人を侮蔑的な眼でヤクザが睨む。そしてまた、暴力が始まった。5 #S57Ninja
2016-05-07 22:03:43
ジュセー
@shiroboshi2
ズンビーめいた面持ちと足取りで二人は帰路につく。結局彼らは折れた。ごく一般的なネオサイタマ市民の彼らにはとても払えない金額の通行料を、貯蓄のほぼ全てを使って支払ったのだ。「……ファック……」タケチは先ほどから譫言のようにその言葉を繰り返している。7 #S57Ninja
2016-05-07 22:09:46
ジュセー
@shiroboshi2
ムラサメ・ストリートにヤクザ……『デッドリー・トカゲ・クラン』が蔓延りだしたのはつい最近のことだ。非合法商業施設、薬物販売でカネを作っている。タケチとミイダはそのことを知らぬわけではなかったが、まさか自分たちがヤクザの被害に遭うとは思っていなかった。8 #S57Ninja
2016-05-07 22:15:02
ジュセー
@shiroboshi2
「……」譫言を繰り返すタケチ、その隣を歩くミイダは無言だ。「……」「……ファック……」「……」「……ファック……」二人は行く当てもないままに歩く。帰宅するような気分ではない。酒でも飲みたいと思ったが、カネはもう無い。「……」「……ファック……」9 #S57Ninja
2016-05-07 22:20:24
ジュセー
@shiroboshi2
気づけば二人はほの明るい路地に出ていた。アワレなものをみる眼と、軽蔑、嘲笑の眼が彼らを見る。タケチは怒りに心を震わせたが、拳を振るう気力はもう無かった。「おい、あんたら」そんなタケチとミイダに声をかける薄汚れたサラリマン。二人は死んだ眼で彼を見た。10 #S57Ninja
2016-05-07 22:24:50
ジュセー
@shiroboshi2
「あんたらもアレだろ、ムラサメ・ストリートの……」薄汚れたサラリマンはニヤニヤと笑いながら言う。タケチとミイダは再び歩を進めようとした。「待て待て！冷やかしに来たんじゃない！誘いだよ誘い！」サラリマンが慌てて彼らの前に立つ。二人は顔を見合わせた。11 #S57Ninja
2016-05-07 22:29:21