- shiroboshi2
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ゲバダ・ヤスオは、勇敢な少年だった。マケグミの家系に生まれた彼は、同じマケグミの少年たちと徒党を組み、毎日毎日暴れまわっていた。 ……いつからだろうか、彼がリーダーシップを発揮しなくなったのは。いつからだろうか、周りに呑まれ流されていくことになったのは。1 #S57Ninja
2015-10-18 22:15:46同じ道を同じペースで歩んでいた周りの者たちが、いつの間にか先を進んでいく感覚。ヤスオは彼らの行く道を追っていった。その先にあったのは、ヤンクのセンパイ達であった。ヤスオはヤンクのセンパイ達の行く道を追っていった。そこにあったのは、ヤクザ・クランだった。2 #S57Ninja
2015-10-18 22:19:23そのヤクザ・クランの名はなんだったか。確か、デスドラゴン・ヤクザ・クラン……というような名であったような気がする。あまり覚えてはいない。兎角、彼は暴力に明け暮れた。クラン内では、彼のような若輩者は雑務としてコキ使われることになっていた。3 #S57Ninja
2015-10-18 22:28:55そんな毎日を過ごす中。何処かの工場で、ドラッグの取引をしに赴いた時だった。ヤスオは鬱屈としながらも、グレーターヤクザらの護衛として付き添っていた。だが、取引場所に着いた彼らを待っていたのは、客ではなかった。代わりに現れたのは、マッポの制圧部隊であった。4 #S57Ninja
2015-10-18 22:34:21ヤスオはマッポの制圧部隊を前にした時。逃げよう、と思っていた。とても敵いそうにない相手だったからだ。しかし。「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!ここは俺らに任せてください!」「アッコラー!」……同年代の者達のヤクザスラング。逃走していくグレーターヤクザ達。5 #S57Ninja
2015-10-18 22:37:46「テ……テメッコラー!」ヤスオは、ヤクザスラングを発していた。愛用のチャカ・ガンを握りしめ。彼が初めて人を殺したのは、このチャカ・ガンだった。歳は十五、だったか。 彼は戦った。ただ戦った。気づけば、彼も、彼と同年代のレッサーヤクザらも。血の海に倒れていた。6 #S57Ninja
2015-10-18 22:47:25生きている者など居なかった。マッポ達が何か連絡をしているのが視界に入る。ヤスオの意識は、主観時間は、鈍化していく。彼は何をするでもなく、目を閉じる。鉄砲玉として生かされ続け、その最期はグレーターヤクザを逃すためのシンガリ。全てを手放す前、彼は自嘲的に笑った。7 #S57Ninja
2015-10-18 22:49:36……どれほどの時間が経ったことだろう。ヤスオは目を開けた。身を起こす。ここがアノヨなのか、と思いながら。だが、そこはアノヨではなかった。周りに横たわるは、レッサーヤクザ達の死体。そこは現実の世界だった。マッポは居ない。ヤスオの頭の中は、真っ白だった。8 #S57Ninja
2015-10-18 22:53:45「……」ヤスオは無言のまま立ち上がると、デスドラゴン・クランの事務所へと向かっていく。彼の考え得る最善の行動に従って。そして、事務所へと辿り着き、カーボンフスマを開いた彼を待っていたのは。オヤブンがマッポ長官にオハギを渡し、カネを貰っている光景だった。9 #S57Ninja
2015-10-18 22:58:20