- IchiyageSakaki
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うちの薬研くんは自分でかごの中に入って戸を閉めるからなあ。満足するまでさせてやろうって。モノがモノ欲しがるなんて兄貴はヒトみたいだ。苦しそうだつらそうだ。仕舞い込まれるのには慣れてる。からじゃあ今度はここを居所にしようって。
2016-05-09 01:30:19閉じ込めて、毎晩その膝で頭撫でてもらいながら寝るくせに寝つきの悪い一期一振に寝物語してくれる薬研くん。モノが語るでモノガタリってな、ってベタなこと言って自分で笑いながらぽつりぽつり今まで自分が見たこと聞いたこと話す。まああんたに比べればそんなに聞かせてやれることはないんだが。
2016-05-09 01:39:55『薬研藤四郎』名前がつく前、ついた後、誰の何を見てどう思ったのか膝に乗せた兄の頭その髪を梳きながらぽつぽつと。 人間てのは面白いなあって。 一応来歴順に語られるけれどエピソードは思いつく順適当で、お前それ寝物語にする気があるのかいってくらい語り下手な薬研くん。まあまあ、いいじゃ
2016-05-09 01:46:52ねえか最終的にはいつもあんたぐっすりだ。 薬研くんの声がいつも、ちいさく笑いながらゆっくり思い出すように語るものだから頭を撫ぜられてるのと耳に好い音(ついでにあまり要領をえない内容)に気付けばうとうと、すー…ってしてる一期一振。自分が寝るころに聞きかじりみたいな下手くそな子守唄が
2016-05-09 01:50:03聞こえるのを知っている。下手だなあ、下手だなあと思いながら寝れば朝まで夢も見ない。いつか家族を(一番最初に薬研藤四郎を)失うかもしれない夢を。 話してやるというくせにちっとも面白くない昔語りに文句を言う日があっても、まあモノの見たもんなんてそんなもんさ、あんたもだろう?みたいな
2016-05-09 01:53:38こと言われて逆に話し聞かせてやる羽目になる。 聞いたり、話したり。 知らずそれがセラピーになってる一期一振。結局『一番あやふやですぐ失われるに違いない弟』はその実像を把握しきれていないから、過去なくしてしまったイメージが強すぎてソフト監禁(本人が自主的に入ってるから)に至っている
2016-05-09 01:56:49ので理解が深まればすべてではないにしろ漠然とした、いつかいなくなるのではなイメージは少し薄れる。 なんだかんだそうやって満たされながらぐだぐだ幾つもの夜を過ごしてついにとうとう薬研くんの話のストックが『あの日』一期一振が弟を失ったと人づてに聞いた日だけになるともういい、十分だから
2016-05-09 02:00:04って薬研くんをみんなと同じ大部屋に返そうとするんだけど薬研くんが出て行かない。聞け、って、ききたくない一期一振つかまえて離さずにいい、もういい、っていやいやする兄に話して聞かせる。相変わらず思いついたままの主観。あっちへ行きこっちへ行きの混乱と悲鳴、裏切りと炎の夜。
2016-05-09 02:03:32『かくて喪われたのであった』を聞きたくなくて耳をふさぐのにその手も取られて耳元で、それでな、ってクライマックス始まって、昔語りだって弟を失いたくない一期一振ぎゅうっと目をつぶって耐える姿勢なのに、いや、実はな、俺っちもそこまでで後はよく覚えちゃいねえんだ。苦笑されて拍子抜け。
2016-05-09 02:06:43あんたも鯰尾も骨喰の兄ぃもあやふやなとこがあるだろう、おれっちのそこもそんな感じらしくてな、みたな。あっけにとられるやらほっとするやらの兄。まあだから、ここに居られるのかもしれないな、って冗談みたいに言う薬研藤四郎に真っ青になって、もういい!お前はもう何一つ思い出してくれるな、
2016-05-09 02:09:30ってなる一期一振に馬鹿だなああんた、自分で語らせたくせに(※薬研くんが勝手に話してただけです)って笑って、もう出ようすぐ出よう早く出ようって、さっきとはまるで違う力の入った腕にぐいぐい引っ張られてずるずる監禁部屋(笑)から出される薬研くん。 昔のことなんかいいからもうこれからの
2016-05-09 02:12:13ことでこの子を埋めようって必死な一期一振の、陽の明るいうちの努力が始まりかくして夜のモノガタリは大団円。それ以上語るものも聞くものもいなくなりましたとさという話を志良さまの錠前つけた薬研くんから思いついたんだ(長)
2016-05-09 02:15:05