幻鏡堂decade

こたはと @kotahato

【かえるくんと王子さま】ある日、田宮商店にお得意様がきました。お得意様は五歳ほどのかわいい娘をつれてきていました。娘さんは、桃色に大きな牡丹の着物、黄色い帯を豪華に締めて、小さなあんよに赤い鼻緒、おかっぱ黒髪に花のかんざしをゆうらゆら。くるりとした目のとてもかわいらしい娘でした。

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【2】せっかくのお出掛けなのに、お父様は田宮の店主とご商談。ひとりで遊んでおりなさいと、娘は中庭へやられてしまいます。一人ぽっちでてんてんと、お気に入りの金の毬をついておりますと、手元がくるってお池にぽちゃり。どうしましょう、娘さんは困ってしまいました。

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【3】かえるくん、娘さんがいまにも泣き出しそうなのを見て、仕事をちょいと脇におき、尻をからげて、冷たいお池にざぶざぶと入っていきました。きれいなお池ですが、中には水草も苔も生えています。滑らないように、毬をあんまり濡らさないように、そろりそろりと動いて、なんとか岸に上がりました。

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【4】近くの石の上にでも毬を置いて離れようとしましたら、かえるくん、娘さんに見つかってしまいました。 「いやあああああああああ！！！」 娘さんはお父様のところまで走って逃げて、泣いてうったえました。 「あんなのが触ったのなんていやよ！お父様、新しいのを買ってちょうだい！」

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【5】田宮の店主は、不愉快な思いをさせて申し訳ないと謝りました。お得意様は娘のわがままと非礼をたしなめながら、どうにも泣き止まないのに根負けて、ひとつ新しい毬を買っていきました。娘さんはもうにこにことしています。かえるくんは、お客の前に顔出すなと言ったろう、と怒られました。

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【6】「まあ、ひとつ品が売れたんだからいいじゃないか」と店主がいい、それでお説教はおしまいになりました。濡れた毬は売り物にならないから、捨てることになりました。 かえるくんは、眠る前に考えます。顔をもっとしっかりと隠していたら、この手がかえるの手でなかったらよかったのかな、と。

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【7】金色の毬は、乾けばまだたいそうきれいなままでした。お月さまの光に金色の糸や細かい刺繍が、ぴかぴかとしています。これを作った人の手はどんなだろう。どんだけ時間がかかったのだろう。かえるくんはそんなことを思いながら、いつまでも、いつまでも、きれいな毬を見つめていました。【終】

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【かえるくんとおおきなつぼ】今日は旦那さまも女将さんもそろっておでかけです。帰ってくるまでに、お店をいつもよりきれいにしなくてはいけません。 かえるくんが廊下を歩いていると、がちゃん！ 大きな音がしました。覗いてみると、まあたいへん。旦那さまご自慢の大きなつぼが割れています。

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【二】下女は座りこんだまま、どうしようと泣いてばかりおりますので、かえるくんはてきぱきと破片を集めてくるみ、あたりをきっぱりと拭いて、誰も怪我をしないようにしました。全部終わってもまだ泣いていた下女は、ふるえながら言いました。「わたしが割ったって、だれにも言わないでね。」

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【三】かえるくんは、うんとうなずきました。 さて、帰ってきて、つぼが無いことに気づいた旦那様と女将さんはかんかんです。「割ったのは誰だ！ いま白状すれば、給金からさっ引くだけでよしてやるぞ。」あのつぼは、お給料の何ヵ月分あるでしょうか。何年分かもしれません。

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【四】従業員みんなで一列に座らされていたのですが、下女だけはもう真っ青な顔で、口もきけないありさまでした。「お前、なにか知っているな。」旦那様に言われた下女は、ぱっと、かえるくんを指差しました。 それを見て、みんなが、かえるくんを指差しました。 かえるくんは黙っていました。【終】

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【かえるくんと笑い話】「違うというなら言ってみろ！」かえるくんの頭には、言いたいことがつまっています。本当はたぶん店の息子がやったこと、みんなが口裏合わせていること、言ってもどうせ聞き入れてくれないだろうこと、色々と浮かびます。でも口に出そうとすると、こんがらがってしまうのです。

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【2.】「ほらどうした、黙ってないでなんとか言え！」 「う、」 「うぐぅ。」 ＼ どっ ／ げらげら！ 「何を言うかと思ったら、『うぐー』だってさ！」「蛙の方が余程喋るわ」 げらげらげら！ 「う……」 げらげらげらげら！ げらげらげらげら！ げらげらげらげらげらげら！ 【終】

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かえるくんのおはなし、おしまい。

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@kotahato ちな、かえるくんとは五歳から十歳くらいの治を想定しています。

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貴方は宮田と渚で『頑なに拒む両手』をお題にして140文字SSを書いてください。 shindanmaker.com/375517 #はと話 悩んでた

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のらくらと逃げる相手を壁際に追いこみ、肩を掴む。渚はこの期に及んでもまだ観念しないのか、握った拳を胸に押し当てていた。それでもこちらの方が力は強い。ぐいと引けば手首の近くが青くなっているのが見えた。他、指に細かい切り傷。「最近けがが多いな」 渚は曖昧に笑っている。

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貴方は宮田と渚で『善意の裏返し』をお題にして140文字SSを書いてください。 shindanmaker.com/375517 ぼやってたら日付が変わって一時間も経ってるでやんすなあ。 #はと話

こたはと @kotahato

諸島を回ってこようと思う。残りの黒鵜人形、ぜんぶ見たくなったんだ。おれには高級人形を見る経験がたりない。この島に持ってるやつがいる、この島にもいる。ぜひ来いと言ってくれている、ありがたいな。この展示が見たい。あの祭りに行きたい。 ぱらぱらと語る雑多な目的に、ただ一つを、隠す。

こたはと @kotahato

#はと話 【小話・性質】 事務的な話を終え、長椅子から腰を上げた時である。 格子窓の向こうは明るく、葉を落とした庭の樹木が近くに見える。その梢のひとつが今大きく揺れたので、視線を奪ったのである。 枝に居たのは椚の実を抱… twishort.com/tcyhc

こたはと @kotahato

貴方は宮田と重華で『例外的に』をお題にして140文字SSを書いてください。 shindanmaker.com/375517 そもそも宮田が出入りしてんのが例外でして そしてその理由が書いてる当人が思いつかんのでして！！！進まず！！

こたはと @kotahato

今晩も重華と宮田が言い合いしている。「契約違反だ」「服を着せるのは整備の内だ。だいたい、顔で判るだろう。それで何が専属だ」今日は宮田が双子人形の服を入れ替えたために定期整備の先を間違えたと専属技師が申し立てたのが火種だ。 しかし、人形屋敷がこれ程騒がしかった期間があっただろうか。