チョコレートアソート

バレンタインのシリーズ妄想。内容量:7粒
11
前へ 1 ・・ 4 5 次へ
レオナ @leo_msk_tdys

【13】 「……なんにもないです。渋谷さん、はい」 タバコをくわえたまま、差し出したチョコと私を交互に見た。 「……ありがと。ま、ええけど」 ポン、と私の頭に手を乗せて、私を見つめて何やら少し考えると、 「ちょお、ゴメン」 突然、ふわりと優しく抱きしめられた。

2016-02-15 00:53:39
レオナ @leo_msk_tdys

【14】 「ししし渋谷さん?」 ぷっと吹き出して「なんやそれ」と言いながら、腕を解く。 「わかったやろ?」 そう言ってニヤリと笑う。 ホントに、なんて人なんだろう。

2016-02-15 00:54:36
レオナ @leo_msk_tdys

【15】 私を抱きしめる渋谷さんの肩越しに見たものは、喫煙所のドアに手をかける錦戸くん。 ドアを開けることなく戻って行った彼の姿を見て、私は自分の気持ちに気づいてしまった。 そして、錦戸くんの言葉が本当なのだということも。

2016-02-15 00:55:24
レオナ @leo_msk_tdys

【16】 渋谷さんとの抱擁(?)を見られて、その日は一日、錦戸くんから避けられていた。 あたりまえだ。私だって好きな人のラブシーンを目撃したら、どうしていいかわからない。 でも、このままじゃ帰れない。 伝えなくちゃ。

2016-02-15 00:55:52
レオナ @leo_msk_tdys

【17】 終業時間が過ぎ、みんなが足早に帰宅した頃、スマホの錦戸くんの名前を呼び出し、電話をかけた。 「……はい」 ためらいがちな声が、受話器から聞こえる。 「今、どこ?」 「あ、えっと…」 ふっとガラスに影が横切り、フロアの入口に目をやると、電話の相手が立っていた。

2016-02-15 00:56:41
レオナ @leo_msk_tdys

【18】 探していたはずなのに、その人を目の前にして、何をどう言えばいいのか、言葉を探す。 でも、気持ちは溢れているのに言葉が出てこない。ただ錦戸くんを見つめるしかできなかった。

2016-02-15 00:57:25
レオナ @leo_msk_tdys

【19】 ゆっくりと歩み寄る錦戸くんが、私の首に両腕を回し、優しく私を包み込んだ。 「……好き」 やっと一言、彼の腕の中でそう言ったのに、返事がない。 「何か言ってよ」 「……なんて言うたらいいか、わかれへん」 「好き」 「……うん」

2016-02-15 00:59:10
レオナ @leo_msk_tdys

【20】 「錦戸くん」 「アカン……」 「え?」 「亮って呼べや」 私を抱きしめながら真っ赤になっているであろう彼の言葉に、愛しさがこみ上げ、笑みがこぼれた。 「なに笑ろとんねん」 そんな彼がカワイくて、彼の胸に顔を埋めて、そのくすぐったい幸せを噛みしめる。

2016-02-15 01:00:25
レオナ @leo_msk_tdys

【21】 「……もう、許さん」 そう言うと、私の顎に手をかけ、“亮”と呼ぶ私の声を遮り、噛みつくようにキスをした。 【チョコレートアソート・6粒目〜mint flavor・終】 pic.twitter.com/iMOY6kzIgI

2016-02-15 01:01:46
拡大
レオナ @leo_msk_tdys

【チョコレートアソート・7粒目〜bitter】 「もういい!……別れる!」 「……勝手にせえ」 2カ月前、すばると些細なことでケンカをした。そのまま勢いで“別れる”なんて口走ってしまったが、そんなのは今に始まったことではなかった。 #エイトで妄想

2016-02-16 00:56:05
レオナ @leo_msk_tdys

【2】 でも今回は、そのままお互いに口もきかず、冷戦が続いていた。 その直後、人事異動で私は部署を替わり、今まで同じ部署だったすばるとは、更に距離ができてしまった。 なんてタイミングだ。 それっきり何も話せないまま、時間だけが過ぎた。

2016-02-16 00:57:07
レオナ @leo_msk_tdys

【3】 このまま本当に別れてしまうのだろうか。もしかしたら、もうすばるにも愛想をつかされたかもしれない。 それでも、私がまだすばるを好きなことだけは、確かだった。

2016-02-16 00:57:33
レオナ @leo_msk_tdys

【4】 そして迎えた、バレンタインデー。 今日を逃したら、もう元には戻れない気がする。バッグの中には、すばるへのチョコ。意を決して、会社のエントランスを抜ける。 「おはよう」 「あ、おはようございます!」 デスクに荷物を置き、隣の席の桐山くんに声をかける。

2016-02-16 00:58:14
レオナ @leo_msk_tdys

【5】 後輩の桐山くんとは以前、私の企画で一緒に仕事をした。人懐っこくて、真面目で、好青年という言葉が似合う。 「これ、よかったら」 「俺に?ホンマですか⁈ありがとうございます!めっちゃ嬉しい!」

2016-02-16 00:58:54
レオナ @leo_msk_tdys

【6】 チョコを差し出すと、すごく喜んで受け取ってくれる可愛い後輩。でもすぐに真面目な顔になって、言った。 「あの、真由子さん、話したいことがあるんですけど…後で時間もらえますか?」 「いいよ。じゃあ、昼休みにね」

2016-02-16 00:59:47
レオナ @leo_msk_tdys

【7】 返事をして席を離れ、書類を取りに行く途中で、喫煙室の前で錦戸くんを見かけた。 「錦戸くん、…あれ、何かあった?」 なんだか悲しそうな顔をした彼が気になった。 「…なんでもないです」 一言そう言って、錦戸くんはその場を立ち去る。 私は喫煙室の中を覗いた。

2016-02-16 01:00:31
レオナ @leo_msk_tdys

【8】 そこには、香織ちゃんを抱きしめるすばるがいた。

2016-02-16 01:01:02
レオナ @leo_msk_tdys

【9】 何、今の…。頭が混乱する。 そのままトイレに駆け込み、洗面台に手を突く。心臓がドキドキと、うるさく音を立てる。息が苦しい。 落ち着こうと、なんとか息を吸うと、頬を涙が伝った。 「……っ、」 そのまましゃがみ込んで、声を殺して泣いた。

2016-02-16 01:01:49
レオナ @leo_msk_tdys

【10】 重い足取りでデスクに戻ると、バッグの中のチョコを思い出し、こっそりとゴミ箱に捨てた。

2016-02-16 01:02:15
レオナ @leo_msk_tdys

【11】 昼休み、予定の入っていない会議室へ向かう。ドアを開けると、約束通り桐山くんが待っていた。 「待たせてごめんね。話って?」 朝と同じ真面目な顔をして、桐山くんが口を開いた。 「…俺、真由子さんが好きです。付き合ってもらえませんか?」 うそ。告、白…?

2016-02-16 01:03:02
レオナ @leo_msk_tdys

【12】 「え、あの……」 動揺して言葉を探していると、ドアの外で物音がした。 振り向いて見た先には、すばるの姿があった。

2016-02-16 01:03:57
レオナ @leo_msk_tdys

【13】 すばるに、見られた。 言葉を発せずにいると、すばるは表情を変えないまま、そこから立ち去った。

2016-02-16 01:04:25
レオナ @leo_msk_tdys

【14】 「真由子さん、」 「……ごめん。好きな人がいるの」 桐山くんの告白を断り、沈んだ気持ちのまま午後を過ごした。 桐山くんには申し訳ないけど、私の頭の中は香織ちゃんを抱きしめるすばるの姿と、会議室で見たすばるの顔でいっぱいだった。

2016-02-16 01:05:10
レオナ @leo_msk_tdys

【15】 終業時間が過ぎ、フロアに誰もいなくなるまで、私は席を立てずにいた。 「……そろそろ帰らなきゃ」 やっと重い腰を上げて立ち上がると、フロアの入り口にすばるが立っていた。 「すばる……」 ゆっくりと近づいてきたすばるが、口を開いた。

2016-02-16 01:05:52
レオナ @leo_msk_tdys

【16】 「行かせへんで」 「……え?」 「……さっき桐山とおるの見て、渡したくないって思った。……まだお前のこと、好きやねん」

2016-02-16 01:06:22
前へ 1 ・・ 4 5 次へ